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灰色の町の、青緑の卵

私は、灰色の雲がかかった街を歩いている。ここでは、どこからともなく灰色の雲が湧いていて、いつもはっきりと見えない。どこに自分がいるのか、自分がどこへ向かっているのか、わからなくなってしまう、恐ろしい雲がかかっているのだ。そのうちに人は、その雲がないもののように扱うようになり、自分が迷っていることすら忘れてしまうのだ。

その中で、灰色の雲の存在に気づいてしまうと、孤独で、この道の迷いやすさ、見失いやすさと向かい合うことになる。自分がおかしいと思っている現象が、周囲の人にとってはないものである時、自分の頭がおかしいのではないかと、思い込んでしまう。自分の両親すら、そのことをおかしいとも思っていないようなのだ。私は、自分が感じていることを無視しようとしたが、無理だった。だからものすごく疲れた。二重の世界で生きていくのはとても疲れることだった。

そんなある時、私は自分の宝箱の中に、小さな青緑の卵があることに気づいた。前はなかったものだ。その卵を手に取ってみると、とても暖かく落ち着く感じがした。頭がすっきりするのだ。この卵を持って私は眠りに落ちた。

私は気がつくと、青緑の卵型の家の前にいた。同じ形の家がいくつか並んだところだ。卵はそれぞれ線でつながり、線の大元は、卵の中心にある、一番大きな卵の家につながっている。大きな卵の家の扉が開いたので、その中に入った。

卵の中は、外で見ていたよりもはるかに大きく、部屋が奥にいくつもあるような大きな空間だった。その広間の真ん中に、とても大きな女性が私を待っていた。2mは超えている。私は、小さな子どもになり、その人のふくよかなお腹に顔をうずめた。彼女にやわらかく包まれていると、涙が自然に溢れた。溢れた涙を感じて、ああ、この人は、私の本当の母なんだ、と思った。それは私が、心の奥で求めていた存在だった。あの灰色の街で探していたのは、この人だったんだ、と感じた。

それから、私は、この卵を通じて、ここを何度も訪れている。行くといつも、家の暖炉のそばの長椅子に一緒に座って、彼女はいろいろなことを教えてくれた。時には一緒に編み物をしたり、物語を聞かせてくれたりする。卵を贈ってくれたのは彼女だと教えてくれた。ずいぶん前からそれは届いていたのだが、私に見えるようになるのを待っていたという。そして、ようやく、こちらにくることができるようになったのだという。

彼女と親しくなってから、私は、灰色の街には帰らなければならないが、道に迷うことはなくなった。私の胸には青緑色の卵形のペンダントがいつも光っているからだ。


***Inspired by***
Jupiter on Aries 8° "A large hat with streamers flying, facing east."
in Heliocentric the 4th house
月のステーション 4ハウス
木星 牡羊座8度 風になびくリボンのついた大きな帽子、東に向いている


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