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海砂時計

海の中にも時計があるんだ。

砂を漏斗のような入れ物に入れて、下の小さな穴から砂が出てくる仕組みだ。砂はゆらゆらとうねりながら海の底へ舞い落ちる。海水があるから、さらさらというわけにはいかないが、まあまあちゃんと降りていくよ。

そしてこの海の時計を動かしているのが、この俺、時計係だ。

海底の砂をかき集めて、海砂時計の中に入れていくのが主な仕事だ。潮の具合によって、流砂のスピードが変わるので、それを見て、微妙な調節をしている。時々海水のゆらめきに居眠りをしてしまって、砂が切れそうになることもあるが、そんなヘマは滅多にしない。

もし砂が切れてしまったら、それが海底の1日の終わりってことだ。今まで何回くらいあったかな?3回くらいかな。つまり、まだ3日しか経ってないってことさ!

先日は、ウミガメのやつがやってきて、海砂時計を早めてくれと言ってきた。やつらは産卵しに陸に上がりたいんだ。陸に上がるときは、陸の時間があるから、海の時間も少し合わせないとうまく戻ってこられないんだ。だから、ちょうどいいタイミングで時計を進めてくれと頼まれるんだよ。あとは、ウミガメの子供たちが海に帰るタイミングも重要だ。これまた、月のタイミングを見て、こっちが流す砂の量を調整して、海砂時計を合わせてやるのさ。

時々帰って来られないイルカたちも、実は、海砂時計と陸時計の違いで酔っちまったんだな。海砂時計を変えるときは、普通は知らせが届くようになってるから、普通は陸には近づかないんだけど、若い連中はつい忘れちゃうんだよな。まあだから、俺様がすごい大事ってわけよ。

だから奴さんも海に入るときは気をつけたほうがいいぜ。陸から来ると、あっという間に時間が経ってしまうからな。こっちの世界は楽しいからよ〜。

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