見出し画像

【トレンド】COVID-19時代の広告 ~変化するメディア消費 いま、広告主に求められること~

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、消費者に即時かつ広範囲に及ぶライフスタイルの転換を否応なく強要しました。外出規制措置が取られる中で人々が働き方と勤務時間を大幅に変えるのに伴い、パンデミックは消費者のメディアと小売業界との関わり方を含む、生活のあらゆる側面を急速に変容させました。

パンデミック最中の日常生活に順応するために消費者が変化したメディアとの接し方や買い物習慣は、国が回復するにつれ現れるニュー・ノーマルの一部にそのまま取り込まれることが予測されます。

経済の大部分の停止に伴い、広告主もまた痛手を被っています。将来に関する不確実性に直面し、現在多くの企業では新規雇用からマーケティングまでに渡る、あらゆる活動を凍結する対応をとっています。しかし、あらゆる活動の停止と切断は結果を何ら好転させることなく、いたずらに停滞を長引かせるだけでしょう。変化に適応することが生き延びる鍵となります。消費者がパンデミック後の生活に順応していく中で先手を取ることができるのは、変化する消費者行動に対してアプローチを戦略的に進化させるマーケターだと言えます。

画像4

変わるメディア習慣

自宅で過ごす時間が増えるにつれ、人々は情報、繋がり、気晴らしなどを求め、様々なメディアに目を向けています。つまり広告主にとって、それらのメディアはより多くのオーディエンスへの露出と、彼らへの新しい接触手段そのものとなります。オーディエンスの拡大は、増加の一途をたどる彼らの目に触れるためのGRP、インプレッション等のコストが下がることを意味します。

テレビ
メディア消費の最も劇的な増加はテレビ視聴全体に見られます。例を上げると、韓国では2020年2月の2週間で視聴率が17%増加しました。アメリカ全体では、テレビ総使用量(TUT)が過去5週間でリーチ、視聴時間が共に増加しました。在宅勤務や外出規制が拡大する中、昼間のテレビ視聴が増え続けています。

ストリーミング
最も急激な増加が見られたのはストリーミング・ビデオ・オンデマンド(SVOD)です。2019年の同時期と比較し、2020年3月23日週の総視聴時間は120%増加しています。3月の1ヶ月の間でも、自宅に留まる人の増加に合わせ、ストリーミングは45%増加しました。

グローバル規模のパンデミックの中でのローカルとのつながり
外出禁止令が多くの市や州で発令される中、人々の目はローカルニュースに向かいました。早い時期に影響のあった西海岸地域では、視聴時間に次の増加が起こりました。
サンフランシスコ: +38% ロサンゼルス: +25% シアトル: +23% (25-54歳の視聴増加)

変わる買い物習慣

電子商取引の台頭

消費者によるこの新しい、テクノロジーを利用した買い物方法の採用は、恐らく近年の歴史の中で最も速やかに行われたと言えるのではないでしょうか。アメリカ市場では、Amazonフレッシュやインスタカートなど、電子商取引による生鮮食品配達サービスは需要の急増に圧倒され、配達が数週間滞りました。アマゾンは新規顧客の激増の影響で、オンライン生鮮食品配達サービスの新規申込みを停止しました。外出禁止令中の3月半ばのピーク時点において、2019年同時期に比べ、オンラインでの日用消費財の売上は実に91%の増加が見られました。

画像4

オンラインショッピングの売上増加は食料品や日用品だけに留まりません。ヘルスケア・美容、ベビー用品、ペット用品など、他の日用消費財のカテゴリーにおいても、eコマースの売上は顕著に大幅な伸びを記録しました。

アメリカでは、特定ブランドに忠実な消費者はわずか9%という結果になりました。サプライチェーンが混乱し品切れが頻発する今、新規購入者獲得のかつてない機会が到来しています。COVID-19の影響で優先度やニーズが変化する最中、消費者にブランドが想起されることの威力がこれまで以上に発揮される可能性があります。

広告主はどのように対応できるか 

広告そのものでなくインパクトを測定する

広告を控えることの影響は、長期的にも短期的にも及びます。一定期間広告を取りやめると、広告が再びオンエアされたとしても、その効果は減少します。効果は広告のオンエア実施週から2週間のうちに現れるため、オンエア継続時と再開の間に生じた空白期間に失われたブランド認知を再び取り戻すのには時間を要します。

画像5

ポートフォリオの強みの活用
メディアのパフォーマンスと効果はブランドによって異なります。高いパフォーマンスを持つブランドの活用と相対的に低いパフォーマンスに留まるブランドへの投資を抑制する機会となります。同一広告主の上位25%のブランドは広告費の費用対効果が下位25%の2.4倍となっています。

画像6

ニールセンのマーケティング・ミックス分析の結果、短期間の広告の停止という決断が、ブランドエクイティ、流通、製品価格などによるベースの売上と、マーケティング施策成果による売上増分双方からなる収益に長期に渡った重大なリスクをもたらすことが判りました。ニールセンの長期効果モデルのデータベースから、2020年の残りの期間の広告を削減すると、2021年に11%の売上減少につながる危険性があることが示唆されています。

今後歩む道

新興の消費者行動パターンに応じた戦略の構築

人々が暫定的に新しい生活様式に順応していく中で、習慣の変化を示唆する新しいパターンが出現しました。外出規制措置の結果、メディア接触が増加しています。ユーザー層全体で昼間のテレビ視聴が増え、ストリーミング視聴者数は昨年から実に倍以上増えています。

デジタルおよび非接触の交流が「安全」と同義語になる中、COVID-19はテクノロジー順応の流れを先導する役割を担いました。買い物客は、とりわけ食料品、日用品の分野において前例のない素早さでeコマースを取り入れ、リアル店舗の最後の砦の一角と言える小売業に抜本的な変化をもたらしています。

私たちは今現在、近年の歴史の中で最も影響の大きな世界規模の出来事を経験しています。そのような状況下でも、そこにパターンが存在するならば決断を下すことができます。人々が日常生活の中でリスクを軽減しようと努めるのと同様に、現時点のマーケティング戦略を状況に順応させ、ビジネスリスクの軽減に活用できるデータは広告主の手の内にあります。

ニールセン・カンパニー合同会社では、消費者調査、ショッパー調査、販売予測、マーケティングROI分析、コンシューマーニューロサイエンス分析、海外市場情報提供などを行っています。
お問い合わせ:JPNwebmaster@nielsen.com


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?