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初めて友人のイラストを買った。

あわいさんをご存知だろうか。

SNSで人気のイラストレーターだ。

大学時代の一つ上の先輩で、ご近所ということで仲良くなり、たまに手作り料理を振舞ってくれた。料理上手であり、描く絵もまた、料理上手がかきそうな色合いの可愛いテイストが多く、なんというか女性的だ。物腰も穏やかで、それでいて物の見方も切り口がソリッドで意見も独特・・・と詳細を書き続けていくと、似顔絵捜査官に顔を描かれて2メートルを越える大男だということがばれてしまうので、これ以上は控えるが、とにかくお世話になった数少ない人物だ。

自分が主宰していたコントライブなどの催しにも足を運んでくださり、ものづくりの同士でもある、、と勝手に思っている。

そんなあわいさんが個展をするというので、行ってきた。

「わからないからたのしい」というタイトルで、原宿でやっている。

さすがあわいさん。SNSでも大人気なので、たくさんの来場者がいた。

彼の作品でいっぱいになった部屋はなんというか、いろんな羨ましさで満ちていた。そこは彼の血が流れる体内のようでもあり、誰に向けたものでもなくただただ自分が描きたいから描くという純度の高い欲求が存在する場だった。まるでヘンリー・ダーガーの小部屋を見つけてしまったようなドキドキ感があり、いけないものを見てしまったようで焦った。

彼は話すと、そのままいつものあわいさんだった。一見変わらない。でもその変わらないを維持するためにきっと変わってきたのだろう。作品もより適切で誠実になっていた。一つ一つの線の情報量が以前の彼の作品よりも多くなっていた。

きっともう多分自分の知っているあわいさんではない。その立派さに、高潔さに、クリエイティビティに冷や汗をかいた。自分はただただ変わっていない。いや、きっとただただ変わりたくなかったのかもしれない。彼は自分を貫きながらも「誰かに好かれるために」生きている。とすれば、自分は「嫌われないように」生きているのだ。

この違いは大きい。

彼は「またコントがみたいなぁ」と言ってくれた。

「やりたいんだけどねぇ」と、濁すことしかできなかった。でも、お世辞でもそんなことを言ってくれる人は久しぶりで、嬉しい気持ちも芽生えた。というか芽生えたこと自体が嬉しかった。

人生で多分初めて、友人の絵を買った。いや、試しに買ってみたという方が近い。それは自分が今やれる変化の一歩であり、小さな決意の印のように感じた。そしてまだ自分に、作りたいという欲求が残っていることを再確認させてくれたお礼でもある。ほとんど売れてしまっていたが、とても気に入った作品が残っていたから良かった。自分には本当に立派な友人がたくさんいる。

「わからないからたのしい」と、言える人たちがたくさん。


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