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【読書レビュー⑦】宮部みゆき「理由」

こんばんは。PisMaです。

今日は時間が取れたので「理由」のレビューをもうちょっと続けます。明日は軽めのつまめるレビューを書きますので、よろしくお願いします。

今回読んだのは
9章「家を求む」
10章「父と子」。

本小説の冒頭から存在が強調されている、事件の鍵を握る石田直澄についての詳細が明らかになってきます。

「家を求む」では、石田直澄が母のキヌ江に伝言を伝え、消息不明となったあとの話が続いていきます。事件のことはつゆ知らず、家に帰宅してくる息子・直己。
ただごとでない祖母の様子に面くらいながら、起きてしまったことの顛末を知り愕然とします。
この時代ではスマホなどないので、情報が伝わらず難しいですよね。高校二年生の妹・由香利の迎えですらも警察と共に迎えに行く始末でした。
その警察の行動は、もはや石田一家自体も疑いはじめていて一人では行動させないといった風にも見えました。

そこからは次章の「父と子」まで、石田直澄の生い立ちから家を買うに至るまでの生い立ちが綴られていきます。
石田直澄。もともとは鳥取の生まれで、家業の和菓子職人を継がず東京に上京、就職。
勤め先は株式会社ニッタイ。後にヴァンダール千住北ニューシティ・ウエストタワーの建設される場所となる敷地の会社でした。そこで運転手として働き、子供二人と自身の母を養います。

石田家もちょっと複雑な家庭であり、石田直澄の妻・幸子は長女の由香利を産んですぐに亡くなっています。直澄にかかる負担を少しでも和らげるため、祖母・キヌ江は鳥取での家業を親戚に託し、東京まで出てきたのでした。

円満だったように見えた石田家ですが、大学進学の件で直己と直澄は大いに意見が食い違いが生まれます。自身のやりたいことをやるため、尊敬する先生がいる知名度の無い大学へ行きたい直己。知名度の高い誰からも認められるような大学へ行ってほしい直澄。のちに大喧嘩へと発展します。

二人とも普段から喧嘩をしない性分だったため、矛の納め方も身の守り方も分からない二人の喧嘩は拗れ、喧嘩後は一言も話さないような関係へとなってしまいます。
長女・由香利が父と兄と仲直りしないのか、といった旨のことを尋ねると「もう直己は俺を許してはくれない」と泣き言のようなことをこぼします。父は案外卑屈な性格をしていたようで、「何もお前たちに残してやれない」ということを酷く気にしているようでした。

ならば「財産」を残してやれば良いんだな、と考えた直澄。
そこで直澄の「財産」として白羽の矢が立ったのは、かつて働いていた土地に立った高級マンション。こうして、石田一家は「ウエストタワー二〇二五号室」へと巻き込まれていくのです。

「理由」には様々な家系の人々が登場しますが、石田家は比較的心優しい人たちの集まりの印象があります。

母の亡くなった空白を少しでも埋めようとした祖母・キヌ江。子供たちに何か残してやりたい、自分には何もないと考え込む直澄。
母を失った悲しみから誰も傷つけなくないと願っている直己。その間を年相応に明るく取り持つ由香利。
打算無く全員が全員のことを考え、真っ当に悩んでいるところに人間性を感じて魅力的です。
この家族は直澄の失踪で、側から見れば半ば崩れかけている家族のように映るような気がしますが…この配慮の欠けない家族が、どうにかまた持ち直せば良いなと感じてしまいました。

もしも予想外の裏切りがあって、この中の誰かが快楽殺人犯とかで〜とかだったらひっくり返ってしまいますね。理由があれば許容いたしますが、真っ当な道を進んでほしいな…と勝手に思いました。

今日はここまで。本日は夜雑談もありますので、この辺りで切り上げさせていただきます。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
一度出てきた家族をまとめたい。

ご機嫌よう。

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