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短編小説 dark

少年は幽閉されていた
小さな格子と鉄の扉しかない空間で地に両手足をつけ、うずくまっている
少年は明日には処刑される
しかし、少年は処刑を恐れていなかった。少年は人間ではなくなっていたのである。
竜の血と肉を食べていた為、首を跳ねられても死ぬことはない。そして、その事はこの国はしらない。
ではなぜ少年はうずくまっているのか。
それは竜との契約のためであった。
竜は姫を拐い、姫の影武者をしていた少年に言った。
「お前たちの国を滅ぼせば姫は助けてやる。その力もやる。さぁどうする?」
竜は簡潔に少年に伝えた。
少年にとって姫は何よりも大切だった。その事を竜は知っていたのである。
姫は人を惑わす。それは何年も前に竜が仕組んだことだったが、少年はその事を知らない。
少年は国を愛していた。国のために王家に使えていた。しかし、いつの間にか姫のために王家に使えていた。
少年はその条件を飲んだ。そして、国に姫を殺害したとして戻り、幽閉され、明日処刑される。しかし、処刑されるのは国になる。竜の力を解放して、国を滅ぼす。そうしなければ姫が殺される。
ただ、決意は波のように揺らぎ、少年はうずくまっている。
国を滅ぼす力を抱えて、国と姫を天秤にかけて。
少年はうずくまっている。
声を出さずに涙を流して、少年はうずくまっている。
結論は国に戻った時に出してしまったのに、少年はうずくまっている。


世界は歴史としてすべてを記している。
歴史が動く時、多くの心が天秤にかけられるが、多くの人間はその事に気づかない。気づいた時にはもう手遅れである。結末とはすべて過去になるものである。

#短編小説 #ファンタジー

その後の物語として一応考えたものがありますが完全に蛇足であると考えて、有料とします。

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