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「一人で死ね」はなぜ間違いなのか?

    この投稿記事が発端になったのだが、川崎の殺傷事件をめぐって、この「死ぬなら一人で死ぬべき」、「一人で死ね」が大きな議論になっている。

   こういうツイートをした私の所にまで、「一人で死ね」を支持する人から私を偽善者呼ばわりするような文句まで寄せられたのだが、改めてこの問題について考えてみたい。

   「一人で死ね」を批判する人への批判は結局、この理屈に集約されるのではないだろうか。

 見ず知らずの誰かの自殺に付き合わされて、何の罪もない愛する人間を奪われた人間がどれだけ悲しいかは想像を絶するし、その理不尽さにどれだけ怒っても当然。そういう人達の口から「自殺するのならば、私の愛する人を道連れなどにせず、一人で死んでくれ」という言葉が出るのは当たり前だし、何の不思議もない。  そのことを私は非難しないし、おそらく藤田氏も非難しているのではない筈だ。

   ただ、考えてほしいのは、その悲しみや怒りは本当に私たち自身のものなのだろうか?

 私たちにとっては今回の犯行を起こして自殺した彼も見ず知らずだし、何の罪もないのに理不尽にも殺されたり、被害に遭った人々も見ず知らずの人間ではないだろうか?

  突き放した言い方になるが、私たちは自分の愛する人間を奪われた被害者ではなく、あくまでも第三者に過ぎないのだ。見ず知らずの誰かが道連れ自殺をし、それに巻き込まれて見ず知らずの誰かが殺されてしまった。その結果自体は悲しむべきだし、犯行は憎むべきだが、見ず知らずの誰かが殺されたに過ぎない私たちに「一人で死ね」という権利があるのだろうか?

 言うまでもないが、「一人で死ね」という言葉は、道連れ自殺をした犯人への怒りの「感情」から吐き出されるものだ。自分の愛する人間を奪われた被害者がそういう「感情」を持つのは当たり前だし、誰もそれを批判出来ないし、止める権利もない。

 だが、被害者でもない第三者の私たちまでもが怒りの「感情」に任せて、そういう言葉を吐くのが正しいのだろうか?

 私たちはその結果を悲しみ、犯行を憎むならばこそ、愛する人間を殺された被害者家族とただ同じ「感情」を共有するのではなく、どうしたらこんな悲惨な犯罪や結果を二度と招かないようにするかを「理性」で考えるべきではないだろうか。

 こういう“死刑になりたかった”、“誰でもよかった”と犯人が語るような通り魔殺人、道連れ自殺は今回が初めてではない。何度も何度も同じことが繰り返されている。その一因には、それこそ愛する人間を殺された訳でもないのに「死にたいなら一人で死ぬべき」と突き放し、自己責任だけを押しつける、冷たい今のこの国、この社会があるのは間違いない。

 何しろこの国は「自力で生きていけない人たちを国や政府は助けるべきだとは思わない」と言う人が世界で最も多い、冷たい国なのだ。 勿論、自殺の原因は経済的理由だけではないが、少なくとも国や政府がもっと銭カネさえ出せば道連れ自殺も含めて自殺をもっと減らせるのは間違いないのだ。

 生活保護叩きで判るように困窮した人々に税金を使うことを嫌がり、誰かが飛び込み自殺をして電車が止まれば舌打ちし、「死にたいのなら他人に迷惑をかけずに一人で死ね」と平気で嘯く…そんな社会の人々を自暴自棄になって自殺をしようとした人間が道連れにしようと思う事を止められるだろうか?

 勿論、「道連れ自殺」のような理不尽な犯行に及んだ人間に同情する必要などないし、擁護するのも間違っている。
それにそもそもそういう理不尽な犯罪を起こす人間をゼロにすることは不可能かも知れない。だが、それを減らしていくことは出来る筈だ。

 それに自殺する時に誰かを道連れにしようとは思わない温かい社会、そもそも誰も自殺しようと思わない社会こそが、私たち自身が幸せに生きられる社会、目指すべき社会なのではないだろうか?

 そういう社会をつくる為にこそ、ただ被害者の「感情」に同調して「一人で死ね」という怒りの言葉を吐くべきではないのだ。

今のこの国はそれこそ同調圧力で他人や社会で同じ「感情」を持つことだけをあまりに強いられているし、マスコミもそういう報道しかしない。だからこそ私たちは「感情」ではなく、もっと冷静に「理性」で物事をとらえ、理屈で対策を考えるべきなのだ。

 最後に、シンプルな理屈を言えば…そもそも他殺も自殺も、どちらも生命を奪うことなのだから、「他人を殺すな!」と言うのであれば、「自分も死ぬな!」と言うべきだし、この二つは一対であるべき。「死ぬなら一人で死ね」…つまり、「他人を殺すな!自分は死ね」という組み合わせはありえないのだ。

(ついでに言えば、「他人を殺せ!自分は死ぬな!」の組合せはそれこそ身勝手な戦争や人殺しの理屈だし、「他人を殺せ!自分も死ね!」のような日本の特攻の理屈に至っては狂気でしかない訳だ)

                       ※phot by pixabay 

  

 

 

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