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バイリンガル教育をするなら、まず根を育てよ

先週のセミナーで出てきた「カミンズの氷山説」を記録に残しておきたい。

従来、バイリンガルは頭の中に2つの風船がある状態だと思われていた。
1つが増大すれば、自ずともう1つは圧迫され、縮小されてしまうという考え方。

ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所のサイトより

その後、カナダ人教育心理学者ジム・カミンズが新たに「氷山説」を唱えた。

カミンズのバイリンガル氷山説

実際に私も、日常生活には困らない程度にドイツ語が話せて、ドイツ語日本語のバイリンガルの子どもを育てているが、氷山説に納得。
決して風船ではない。

言語を均等に育てていけるならいいんだけど、環境によりどうしても一方だけが強い(通常居住国)、両方弱いということになりがち。
(この辺りは私が目標にしているダナンの日本語の先生のサイトで詳しく。)


我が家の場合は、長女がドミナント(偏重)バイリンガルで、ドイツ語優勢、日本語は途上、次女は残念ながら現在ダブルリミテッド(限定的)バイリンガル。
(長女14歳、次女まもなく13歳。二人とも第三の伸び期なので、今後変わっていくかもしれないが。)
同じ両親、同じ教育、同じ環境であるはずなのに、どうして差が出るのか。
同じ環境と書いたものの・・・

ー次女は生まれたときから1,5歳年上の姉がいたので、長女は私からの言葉のシャワーを独り占めしていたけど、次女は姉と共有していた。
ー言葉が比較的遅かった長女より、次女は結構ぺらぺらと話していて、小さなころは二人で日本語で話していた。
ー3歳で長女が幼稚園に通うようになってから(次女1.5歳)は、午前中二人きりの時間もあったけど、恐らくここで私は長女ほど次女を構わなかった?
ーそして、その後私は補習校の仕事を始めたので、2歳ちょっとの次女は午前保育の小グループに参加するようになり、爆発的にドイツ語語彙が増えた。

という点は違う。
それでも、じゃあ次女のドイツ語が強いかというと、そうでもない。
長女の方がいい。
ということは、単に姉妹で言語能力に差があるということなんだろう。

次女は身体能力に優れている。
長女はそれほどでもない。
そういう違いの1つなんだろう。

つまり、生まれ持った言語習得力というようなものがそもそも違う。
なので、いくら勉強しても限界のある人、時間のかかる人は必ずいる!
いくら練習しても、みんなが速く走れるようにならないように。

それでも「母語」なりなんなり1つの言葉をしっかり身に付けることは、カミンズいうところの「CALP」(Cognitive Academic Language Proficiency/学習言語能力」(氷山の下の部分)を伸ばすことになる。
CALPは、『抽象的な思考が要求される認知行動と深く関連し、認識力や類推力を伸ばすために必要とされる言語能力の一側面』で、学習活動や授業などにより獲得される言語能力で抽象的、概念的なことを表し、高度に認知を発達させる上で必要な言語能力だ。

画像をお借りしておいてなんだけど、日本で幼児英語教育をしてるところは、利用者に母語を強めるべきだということもぜひ強調してほしいと思う。
耳のいいうちに発音を入れるのはいいことだけど、英語ができれば将来安泰的な誤った思想を持った親御さんに警鐘を鳴らしてほしいもの。

一方で、やはり言葉ができないと、その人を表現するのに限界はある。
私の知人はあんまりドイツ語が上手じゃなく、ドイツ人の幼稚園児の姪っ子ちゃんと遊んだときに、どうやら
「あまり言葉ができない」

「ちょっとおばか」「幼い」

「保護するべき対象」
と思われて、物を食べるのを手伝ってくれたり、「これは〇〇っていうのよ」と教えてくれたりしたらいい。

もちろん、この場合姪っ子ちゃん自身が幼いから、考えが浅くなってしまっているだろう。
しかし、実際に日本でも、日本語ができない外国人を見たときに、その人がどんなバックグラウンドであるかを一切考えずに、
「日本語もできないで、ばかだ/能力が劣っている」
というようなジャッジが行われていないだろうか。
これは、「英語ができれば、すごい」の裏返しにすぎない。

脳自体がハードディスクで、思考力、記憶力そのものだとしたら、言語はソフト/アプリに過ぎない。
思考力がないところに、「英語」というアプリだけを乗せても、大して役に立たない。

思考力という根をしっかり張っておくことで、英語だけじゃなく、あとからどんな実でもいくらでも育てられる大樹に育てられるんじゃないかと思う。

PS.
お、こちらの英語学校は、日本語強化を親に依頼している、とありました。
こういうところが増えるといいですね。

PS.2
長女は、海上に出ている氷山のドイツ語側を使って英語は、普通に本を読めるくらい。
本人いわく話せる順は、ドイツ語(母語)→日本語(継承語)→英語(第一外国語)→フランス語(第二外国語)だけど、聞いて分かるのは、ドイツ語→英語→日本語→フランス語だそう。
好きなK-Popグループの動画を英語字幕で見て、ちょっと韓国語覚えた~と言っていました。
この人は海中の氷山が次女よりホントに大きいんだと思います。

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