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中国の歴史漫画から紐解く漢民族の歴史

皆さんは漢族・漢民族と聞いたら中国人とイメージする人が多いとは思いますが、実は違います。

漢民族は昔、華夏族(かかぞく)と称されていました。漢民族と呼称されるようになったのは、秦の始皇帝の後の時代「漢(前漢)」から今現在までです。ちなみに本土の中国人は中国のことを華夏、中華文明を華夏文明と言うことがあるそうです。

華夏の由来はこの漫画の時代まで遡る事になります。中国明代に成立した神怪小説をを原作にした藤崎竜さんの累計約2200万部「封神演義」です。

漫画は原作には無いコメディ要素や改変点がありますが、史実の殷周易姓革命が舞台なのは変わりません。紂王を討ち取った後に中原に定住した、一族を中国の伝説上の先聖王である「神農」「黄帝」「堯」「舜」にちなんで華族と称し、夏王朝創立者の大禹の末裔が夏族と称されていたので、中原に居住していた族群を華夏族と称するようになったと言われています。

そして、華夏族が漢民族と呼ばれるようになった前漢は秦の滅亡後の楚漢争覇に勝利した劉邦によって建てられました。「項羽と劉邦の戦い」とも呼ばれています。鉄人28号や魔法使いサリーなどで有名な巨匠・横山光輝さんの項羽と劉邦。

後漢は三国志好きなら知っている黄巾の乱や、それから始まった動乱期が含まれ、220年に献帝が曹操の子供である曹丕に禅譲するまで前漢と後漢合わせて408年間も続きました。ちなみに三国時代というのは献帝が殺害されたと誤った伝聞を受けた、劉備が皇帝に即位してからの話です。蒼天航路は曹操が主人公の歴史漫画ですね。私も好きです。

でも、はじめて中国統一をした秦の始皇帝がいるのに、なんで漢民族なの?秦民族じゃないの?と思った人もいるかと思います。ちなみに大人気漫画「キングダム」に出てくる、この嬴政が秦の始皇帝になります。名前も歴史の通りですね。

秦の始皇帝が中国を統一した際に、ばらばらになっていた華夏族も統一しました。それから前漢・後漢の時代になると勢力が拡大するに伴い色々な民族を吸収し、この頃から華夏族が他の民族から漢人と呼ばれるようになったのです。例えば、7代武帝の時に全盛を迎えていますが、その時は北は外蒙古、南はベトナム、東は朝鮮、西は敦煌まで広がっています。

それでは、どのように勢力が拡大したのか分かりやすいように図で比べてみましょう。これが秦の時代です。

そして前漢を経て、後漢になるとここまで勢力が広がります。

そして、範囲は徐々に広がり今現在の中華人民共和国の広さになるのですが、どうして秦民族では無く、漢民族としたのかですが、これは私の推測です。

華夏族は殷の紂王を倒した一族をそう呼ぶようになりましたね。紂王は酒池肉林で有名な暴君と言われているので、紂王を倒した一族は苦しんだ民を救った英雄として伝説上の先聖王にちなんで華族、夏王朝創立者の大禹の末裔が夏族、そして華夏族と言われる。

そして秦の始皇帝は良い事もしてますが、梵書や膨大な資金や人員を投じた阿房宮や始皇帝陵など悪い事の方が目立ちます。そのため民の不満が募り始皇帝は暗殺されそうになります。始皇帝は誰かに倒された訳ではありませんが、始皇帝は悪例とされ混乱を収めた劉邦は好例として「皇帝(英雄)とはかくあるべき」という理想を、後世の多くの人々の心に形作ることになります。華夏族から漢民族へ。

このような感じになったのではないかと私は思います。そして近現代の中国の民族になると、こういう風になります。

近現代の中国国内の民族

中国には55の少数民族がいるとされています。その少数民族と分布は以下の通りです。

アチャン族(阿昌族)
イ族(彝族)
ウイグル族(維吾爾族)
ウズベク族(烏孜別克族)
エヴェンキ族(鄂温克族、オウンク族)
オロチョン族(鄂倫春族)
回族(ホウェイ族、フェイ族)
カザフ族(哈薩克族、ハザク族)
キルギス族(柯爾克孜族、クルグズ族)
高山族(カオシャン族)
コーラオ族(仡佬族)
サラール族(撒拉族)
ジーヌオ族(基諾族)
シェ族(畲族)
シベ族(錫伯族、シベ族)
ジン族(京族、越族、ベトナム族)
スイ族(水族)
タジク族(塔吉克族)
タタール族(塔塔爾族)
タイ族(傣族、ダイ族)
ダウール族(達斡爾族)
チベット族(蔵族)
チャン族(羌族)
朝鮮族
チワン族(壮族)
チンポー族(景頗族)
トゥ族(土族)
トゥチャ族(土家族)
トーアン族(徳昂族、旧称パラウン族)
トーロン族(独龍族)
ドンシャン族(東郷族)
トン族(侗族)
ナシ族(納西族)
ヌー族(怒族)
ハニ族(哈尼族)
バオアン族(保安族)
プーラン族(布朗族)
プイ族(布依族)
プミ族(普米族)
ペー族(白族)
ホジェン族(赫哲族、ホーチォ族)
マオナン族(毛南族)
満州族(満族)
ミャオ族(苗族)
ムーラオ族(仫佬族)
メンパ族(門巴族)
モンゴル族(蒙古族)
ヤオ族(瑶族)
ユグル族(裕固族)
ラフ族(拉祜族)
リー族(黎族)
リス族(傈僳族)
ローバ族(珞巴族)
オロス族(俄羅斯族、ロシア族)
ワ族(佤族)

分布図を見ると、うまい具合に隣国との国境付近にいるのが分かります。中国政府は、民族区域自治という少数民族政策を取っており、その民族ごとに集住地域を区域自治の領域として指定しているので、隣国の国境周辺を少数民族の集住地域にすれば攻めてきたら盾にできますね。

そして、終戦間際に発生した中国残留孤児に由来する日系がどうして少数民族として扱われないのか。

中国メディアの快資訊の2018年6月19日の記事では、「ロシアやタイに起源を持つ中国の少数民族について、圧政から逃れてきた人たちが中国に土着したものだと紹介。朝鮮族に関しては特殊で、日本が朝鮮半島及び満州を統治・支配する過程において多くの半島民が中国へ移住したため「自主的ではない」と指摘、朝鮮族の移住の始まりは明末から清初にまでさかのぼる。」と発信しました。

圧政?ウイグルやチベットはどうなんだ!と言う人もいるとは思いますが、ウイグルは蒋介石の国民党が、チベットは過去、ダライ・ラマの圧政により多くのチベット人が亡くなっているのは事実です。悲しい事に口実を与えると、圧政からの解放として侵略され弾圧されるのです。

それでは何故、中国残留孤児に由来する日系が少数民族として認められていないかというと、多くの日本人はかつて満州と呼ばれた中国東北地方で定住するはずでした。日本の敗戦によってほとんどの日本人が帰還し、残った日本人はわずかだったからだと当時の中国政府は分析しました。ですが、戦争ゆえに中国が少数民族として認めることはまずありえないのです。

それは、香港・マカオの返還にともない中国国民となった英国系やポルトガル系についても言えることで便宜上、漢民族と表記しているだけなのです。

このように見ると漢民族=生粋の中国人ではない事がわかります。極度の嫌中の人は漢民族=悪という感じの考え方をしているとは思いますが、身元を証明する事ができない残留をせざるを得なくなった残留日本人の多くは仕方無く中国国籍を取得しました。その為、中国戸籍上は漢民族となりますので、漢民族を絶対悪とすると駄目なのは想像できるでしょう。

それで中共のプロパガンダに加担されたら、全く意味がありませんので、するなら民族の根幹である華夏族とするべきでしょう。

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