食べれるカレーと食べれないカレー 眠れるサモサと眠れないサモサ

 『カレー野獣館 黄』解題集です。

 ≪黄≫≪赤≫≪緑≫≪黒≫と四巻同時刊行された『カレー野獣館』のうち、≪黄≫巻について。

 『カレー野獣館』≪黄≫巻の目次、収録話は以下のようになっています。


眠り硝子の蜜カレー
蜂伽哩撫養
打楽器カレーのフェザンダージュ
うどんと醍醐
南部戦蹟地傷病ピッツァ
飛貝カレー
カレー殻
カレー琥珀
眠らない漂砂サモサ
バナナ地球最期の日
もぐらカレー
火事カレー
焼釣
盗賊御用達カリビュッフェ
とりかえしつかないカレー

 そして『カレー野獣館』四巻のもとになったのが、
旧『カレー野獣館』の≪壱≫≪弐≫です。

 これはカレーの食べ過ぎで実際に病院に入院したときに、あまりに激痛過ぎたときに記し続けたメモがきっかけになって、発作的にはじまったものでした。


旧カレー野獣館 目次

◇◆

『カレー野獣館 壱』


第1館 冷戦の消滅
第2館 甲殻カレーの方程式
第3館 赤カレー
第4館 フローラルマグネチックカレー
第5館 飛貝カレー
第6館 カレー殻
第7館 動物臓器列車の風ビリヤニ
第8館 緑カレー
第9館 カレー琥珀
第10館 竹陀羅檻グリーンスネークカレー
第11館 焼き唐辛子カレー
第12館 盗賊御用達カレービュッフェ


◇◆
『カレー野獣館 弐』


第13館 デビルレッド・マンモンチキンカレー
第14話 カレー・フェロカクタス
第15館 虹彩恐膜ゴーグルカレー
第16館 マンダレータートルカレー塔
第17館 眠り摺り硝子の蜜カレー
第18館 蜂伽哩撫養
第19館 ワーカプウェーマドッグの四川カレー
第20館 ハーブ鎧
第21館 四季のワナワナライスサラダ
第22館 白黒カレーのラメラフラン
第23館 刺青アロゼカレー
第24館 眠らない漂砂サモサ

◆◇◇◇◇

 本冊子ではそのうち、『カレー野獣館』≪黄≫についての解題。

 とはいってもカレー野獣館はいわゆる小説家によるお話集や料理人によるレシピ集ではもちろんないし、またインド料理原理主義者やある特定のインドの地域の崇拝者でもないのでそういう食の解題とか文の解剖とかでなく、≪黄≫巻にはいっているそれぞれの話を書いたとき、どんなものを食べていたとか、どんな病気になっていたかとか、どんなスパイスの組み合わせが気になってたとか、どんなもののまずさがどうしても気になっていたとか、どんな記憶がぶり返してきてとか……そういうのを。

 ≪黄≫巻は、≪黄≫≪赤≫≪緑≫≪黒≫のなかでは、いちばんベーシックなもの?になるべく準備していました。四色で四巻出すというのが決まった当初はそのように準備していて、≪黒≫がジョーカー、カレーというより鯨とか狸ものとかもいれて、≪緑≫が仮面ライダーとか監獄ものとかサラダ系とかアジアの一部のだとして、≪赤≫が旧壱号弐号の幻覚メインとバトルカレーで、≪黄≫がいちばん読みやすいかな……と思ってたのですが、知人にきいてみると、≪黄≫はわかりにくい!と。そっか……


 2015年5月9日に、円盤主催で(自分は企画にはいっさい関わっていない)「カレー野獣館を読む」というイベントが行われ、朗読者は大谷能生、音楽は小春さんということで行われたのですが、そこでは≪黄≫巻から「
うどんと醍醐」と「バナナ地球最期の日」が選ばれて朗読されたのですが、大谷能生氏の声が不必要にいいせいか、改めてはふたつともひどい話だなと。


 「 うどんと醍醐」のように当初の目的がえんえんと達せられないままさまよって、もう最後にどうでもよくなって……という話は、現実世界でもよくありますよね。しかしこれ大谷氏のいい声※で朗読されるとなんともいえない気持ち悪さとかゆいようなおもしろさがうかんで、また「バナナ地球最期の日」の日の「すぶり」のシーンも実際に口に出して読まれると、ブンブンすぶりするイメージがしっかりわいてきて、余計あほらしくなったのでした。

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