見出し画像

小次郎講師『真・トレーダーズバイブル』パンローリング、2016年


第1章 トレードエッジのあるトレードをしているか

・未来のことなどわからないのだからトレードは予想して行ってはならない。トレードは確率のビジネスであり、勝つ確率の高いトレードエッジ(優位性)のあるところを見つけてそこで勝負をする。

私見ですが、この考え方については全面的にそう思う。

・大数の法則を理解せよ


簡単に言うと、

特定の事象が起こるのは、個々の場合には偶然であっても、大量観察によると一定の安定的な傾向が認められるという法則。保険は、この大数の法則に裏づけられた危険率に基づいて算出された保険料を原資とする経済的仕組み
のこと。

日本大百科全書

・トレードで勝つためのステップ


①破産しないように、資金管理リスク管理を確立すること
②大数の法則を利用して、エッジのある局面を探すこと
③エッジのある局面に絞ってトレードすること

同書27ページ

・トレードエッジの計算式

エッジのある局面の計算

TE(トレードエッジ)=勝率✕平均利益-(1-勝率)✕平均損失
          =勝率✕平均利益-負け率✕平均損失

同書28ページ

注意点はトレードエッジがプラスなら勝てるルールで、マイナスなら勝てないルールなのだが、大数の法則にのっとるので、ある程度のトレード数をこなさないと答えは出ない。
極端なことを言えば、トレードエッジがプラスであっても運悪く最初に負け続けると破産という最悪な事態も十分にある。ゆえに当初は自己資金をある程度用意しなければいけない。

・期待値を理解せよ

期待値〔数〕
〔expectation〕
確率変数 x が値 x1,x2… xn を確率 p1,p2… pn でとる時,x1p1+x2p2+…+xnpn をいう。例えば,くじが全部で100本あって,当たりくじは1万円が5本,5万円が2本だけならば,くじを1本ひく時の期待値は1500円である。

スーパー大辞林

上の例では
期待値=10000円✕(5本/100本)+50000円✕(2本/100本)
   =500円+1000円
   =1500円

くじ1回1400円ならトライすべきだが、1500円なら期待値と同値でありやらないという判断。ただ、これも大数の法則にのっとっているので1回だけのチャレンジでは負けることも多々ある。あくまで何度も回数を重ねればという条件を忘れてはならない。

つまり、上記計算式を見てもわかるとおり、トレードエッジとは期待値のことなのです。

・リスクリワード比率を理解せよ

リスクリワード比率の計算式
リスクリワード比率(RR比率)=平均利益÷平均損失


同書37ページより

このリスクリワード比率については、超短期スキャルピングをやっているわずかな利益でも利確しがちな勝率至上主義に毒されている私のような人には耳の痛い話なんですよね。
一方、勝率至上主義を捨て、”損小利大”を目指すことをトレードで勝つための鉄則にする多くの中長期投資の人にはこの部分は特に重要です。

勝つためのリスクリワード比率と勝率の関係式
リスクリワード比率>(1-勝率)÷勝率
         >負け率÷勝率

例えば、短期スキャルピング筋のように1回の利益は少ないが、高い勝率が要求される場合、例えば勝率80%のときに確保しなければならないリスクリワード比率を求めると、
勝率80%のときに必要なリスクリワード比率>(1-80%)÷80%
                    >20%÷80%
                    >0.25
上の表と合致します。
このケースではリスクリワード比率0.25なので、0.25×4回=1となることから、4回の勝利分で得た利益(おそらく超短期スキャルピングなので薄利)を超えるような損失を出した場合は損切りせよということです。

・プラスのトレードエッジを有効にする2つの要素

トレードエッジがプラスでも1回のトレードで大負けすると市場撤退を余儀なくされます。そこでプラスのトレードエッジを無駄にしないための大切な要素が以下の2つです。
資金管理
破産しないことを前提にした1回のトレードで掛けてもよい金額(これを「1ユニット」と定義)の調整
リスク管理
ここまでなら耐えられるという限界の理解と適切なロスカットラインの設定


第2章 資金管理について

・破産確率を理解せよ

ジョーカーなしのトランプを裏返しにして引いたカードがスペードなら負け。その他のカードを引いた場合、掛け金(例えば1万円)が2倍(2万円)になって返ってくるゲームを考える。負ければ掛け金は没収される。このゲームの勝率、つまりスペード以外を引く確率は75%。これは一見有利になゲームに見えるが次の条件を考えてみる。

①所持金1000万円の人が1回の勝負に1000万円を賭ける。4枚に1枚の割合でスペードを引く可能性があるのだから、この場合の破産確率は25%である。

②所持金1000万円の人が1回の勝負に1万円を賭ける。この場合の破産確率はほぼ0%

計算方法は少し面倒なので、以下のサイトに数値を入力して計算します。
破産確率計算のサイト

◆「破産の確率」からわかること
①エッジのある取引でも1回当たりのリスク値が適正を欠くと破産の確率が拡大する
②1回当たりのリスク値が高くなるほど、破産の確率は上昇する
③リスク値の増大と破産の確率の関係では、リスク値が一定の水準を超えると、その段階から破産の確率が急激に上昇する

同書62ページ

・資金管理とは

資金管理とは「破産しない範囲で最大限の資金効率を目指す」ことです。

同書64ページ

定義の中の「破産しない範囲で」については前項の破産確率の計算サイトで計算する。

定義中の「最大限の資金効率をめざす」とはレバレッジを実現することです。

・ユニット

タートルズは、1回当たりのトレード量は、1回のトレードで取ってもよいリスク(=投資用資金の1%のリスク/日)を取る取引量と決め、それを1ユニットと呼んでいました。

同書69ページ

・ユニットの計算方法

必要な変数は2つ
①自己資金量
②ATR( Average True Range )=一日当たりの平均値幅

【ユニットの計算法】
a) 投資用資金の1%を求める。
  投資用資金 ✕ 0.01 = A
b) その銘柄の最小単位をトレードしたときの1日のリスクを計算する。
  取引単位 ✕ ATR = B
c) ユニット = A ÷ B ※取引単位に応じて四捨五入

同書71ページ

例えば、1000万円の投資用資金を持っている人が日経225先物ミニを取引しようとしているとする。
A = 1000万円 ✕ 0.01 = 10万円
今、仮に日経225先物ミニのATR(一日平均で最大値動きする幅)を164円とする。ちなみにミニは1枚=100株。
B = 100 ✕ 164 = 16400
1ユニット = 10万円 ÷ 16400 ≓ 6.1枚(6枚)
となる。


・1ユニットの1日のリスク管理

1ユニットの1日のリスクの計算式 = ユニット数 ✕ 取引単位 ✕ ATR

上記の日経225先物ミニを例にすると、1日のリスクは次のようになる。
6枚 ✕ 100 ✕ 164円 = 98400円
約10万円となり、ユニットの定義で設定した1日当たり取れるリスク、つまり投資資金の1%(この場合は1000万円の1%だから10万円)にほぼ一致する。

・リスク分散(銘柄分散)について

1回の適正なトレード量が1ユニットであることは説明したが、1ユニットの取引で終わりではない。チャンスが来れば買い増ししてもよい。そのルールは以下の通り。

◆適正な最大取引量
①同一銘柄は1ユニットまで
②相関関係の高い銘柄は6ユニットまで
③相関関係のある銘柄は10ユニットまで
④買いなら買い、売りなら売りで12ユニットまで

同書85ページ

・ATRについて

ATR( Average True Range )=一日当たりの平均値幅をどう計算するか。

タートルズが用いた計算方法は以下の通り。
TR( True Range )とは1日の最大値動きを求める。
A=当日高値-前日終値
B=前日終値-当日安値
C=当日高値-当日安値
を求め、その最大の値を最大リスク(TR)と定義する。

ATRはTRの平均を求める。その方法には主に3通りある。
①単純平均(SMA)
単純平均はTRを過去20営業日さかのぼって合計し、単純に20で割ったもの。
②修正移動平均(MMA)
当日のATR=(前日のATR✕19+当日のTR)÷20
③指数平滑移動平均(EMA)
当日のATR=(前日のATR✕19+当日のTR✕2)÷21

下に行くに従って直近のデータに比重を置いている。


第3章 リスク管理について

・リスク管理について

◆資金管理とは
自分の投資用資金を明確にし、破産しないという前提のもとに自分の投資用資金を最大限効果的に運用する方法。
リスク管理とは
自分のリスク量を取引するたびに確認し、破産しないという前提のもとに自分の取れる最大限のリスクを取ること。

同書105ページ

・ロスカットラインの決め方

ロスカットラインとは、相場が自分の予想とは逆に動いた場合に、あらかじめ決めておいた限度額以上の損失を被らないように、損切りする水準のことをいいます。

同書108ページ

設定に際しては
・一時的に下がってもトレンド継続ならロスカットせず我慢
・トレンドが終了したなら早く決済

・トレンドとノイズの関係
逆方向への価格変動がノイズの範囲内であればロスカットせず、ノイズの範囲を超えたらトレンド終了と見なしてロスカットする。
いくらまでなら損を許容できるかではなく、市場の動きに合わせてロスカットを設定する。

【タートルズのロスカットライン】
相場が予想とは逆方向に2ATR動いたらロスカットする
◎買いの場合、「買値」-「2✕ATR」
◎売りの場合、「売値」-「2✕ATR」

同書112ページ

第4章 エッジを探す

・買い有利・売り有利の場面はある


「どんなに優れた手法でも、エッジのある場面で使わない限り、思うような結果が得られる確率が低くなる」

同書117ページ

エッジを見つけるときは「ほかの多くのトレーダーにも見ることができるものかどうか」という点には注意が必要。誰もが知っているシンプルなものでも十分機能する。

・主なトレードエッジについて

(1)移動平均線のエッジ

◎ゴールデンクロス
価格が移動平均線を下から上にクロスすること=買いシグナル
◎デッドクロス
価格が移動平均線を上から下にクロスすること=売りシグナル

同書118ページ

(2)新高値・新安値更新のエッジ

(3)抵抗線・支持線のエッジ
おもしろいのが、「同一の価格水準でありながら、抵抗線はいったん破られると、今度は支持線として働く」という特性。

(4)ロスカットラインのエッジ
ある程度まで下げるとそこを拾う買い手が現れるが、さらに各投資家のロスカットラインまで下げると今度は売りが売りを呼び、売りにエッジが出てくる。


サポートよろしくお願いします。サポートしていただいた分は書籍の購入などクリエイターとしての活動費に使い、有益な情報発信につなげていきたいと考えています。