見出し画像

Vol.84 アンケート結果に影響を与える回答バイアス

                             2023年10月

金融ソリューションチームコラムの第84弾をお届けいたします。


回答バイアスはアンケートで情報を収集するうえで把握する必要がある要素です。

今回は回答バイアスにどんな種類があるのか、『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』(著:情報文化研究所、監修:高橋昌一郎)
文献を参照し、いくつかピックアップして説明します。

▼自己選択バイアス

調査に協力するか否かを対象者が選択できるときに生じるバイアスのことです。
アンケートモニターを対象とした調査は特に顕著であり、特定の属性や意見を持つ人々が集まる傾向があります。

自己選択バイアスを減らすには、回答者を自身で選ばずに無作為に選ぶこと(ランダムサンプリング)や、調査の目的や範囲を明確にするなど
アンケートに協力してもらえるような仕組み作りが重要だと考えられます。

▼中立的な回答バイアス


回答者がすべての質問に対して中立的な回答をしてしまうバイアスです。

例えば、満足度調査において5点満点で評価するように求められた時に、真ん中の3を選ぶ傾向が高くなります。

こちらは、偏った意見を持つことによって生じることもありますが、アンケートに興味がない、真剣に取り組んでいないなどの要因でも発生します。

中立的な回答バイアスを減らすためには、対象者の性質をあらかじめ理解することや、回答ストレスや不適切回答があることを前提としてサンプルバッファを設けるなどの対策が必要だと考えます。

▼極端な回答バイアス


中立的な回答バイアスとは反対に極端な意見を持っていないにもかかわらず、極端な回答をしてしまうバイアスです。

こちらは、満足度を測る設問で自身の気持ちとは反して1もしくは5と回答する方が多くなります。
ただ、この極端な回答バイアスは日本ではあまり発生せず欧米で発生することが多いです。

日本などの東アジアの国では中立的な回答バイアスが生じることが多くなります。例としてNPSのスコアは欧米では高く出ますが、日本では低く出ます。

バイアスは調査に必ずといっても良いほど生じます。
ただ、バイアスを減らすことはできても完全に排除することは難しいです。
調査にどんなバイアスが生じるのか、それをどうやって抑えていくのかは
常に検討していく必要があります。

また、今回参考文献をもとにコラムを書いていますが、海外の論文を引用している場合も多く、日本の調査に当てはまらないことも多々あるので(今回でいうところの極端な回答バイアス)、専門書を参考にする時にもバイアスに注意しながら読む必要があると考えます。


【もっとコラムを読んでみたい方はバックナンバーをどうぞ】


■今週の執筆者■
塩沢 周平(ソリューション本部 アカウント第1部)

【お気軽にご意見、ご要望などいただければ幸いです】
日経リサーチ 金融ソリューションチーム finsol@nikkei-r.co.jp
当コラムの無断転載、引用は固くお断りいたします。
また、執筆者個人の主観、意見が含まれております、ご了承ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?