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「奇妙な楽観」か?「予想通りの波乱」か?――金融不安の中での株式相場堅調

3月20日(月)-24日(金)の日経平均株価は週間で0.2%上昇とほぼ横ばい。一方ダウ工業株30種平均は1.2%上昇、ナスダック総合指数は1.7%の上昇で終えました。この週に起きたことや週末にかけてのニュース、新聞紙面を見ると、ちょっと不思議なほどの株式相場の堅調さ。奇妙な楽観にも見えます。

月曜日の朝、綱渡りの政策対応?

米SVBから中堅銀行破綻が続き、さらにそこから欧州王手クレディ・スイスの経営不安に飛び火。日本時間で13日(月)の朝にはSVBの預金全額保護、20日(月)の朝にはUBSによるクレディ・スイス買収が発表されました。いずれもアジア市場が本格的に開く前に、金融不安を止めたいという綱渡りにも見えます。

この金融不安とインフレに対応するための金融引き締めが、同時に起こっていることは何とも厄介です。21-22日の米FOMCは0.25%の利上げを発表。会見したパウエルFRB議長は金融システムに深刻な不安がないことを強調。一方で、すぐに利下げに転じるとの市場の見方をけん制しています。週末にかけては米中小銀行の預金流出が止まらないことや、24日にはドイツ銀行の株価が9%下落。2月末比でも28%の下落です。

こうしたニュースや金融セクターの波乱、株価下落を改めてみると、株式相場、特にハイテク・グロース株を中心とする米国株式相場が堅調さを保っていることに違和感を感じる――。これが「奇妙な楽観論」です。

もともと今年の前半は波乱が予想されていた

ただ一方で、実はこれらの動きは、もともとの「予想通りの波乱」であるようにも見えるのです。昨年末時点では、急激な金融引き締めの影響が本格化することから、今年の株式市場に関しては楽観的な予想はほぼなかったと思います。最大公約数をいうなら「今年前半は波乱の展開、次第にインフレのピークアウトを確認、年後半には金融政策の引き締めも終盤が視野に入り(展開如何によっては来年の利下げ期待も高まり)、年末が近づくころには市場は安定を取り戻す――」。こんなところではなかったでしょうか。

1月が予想外のロケットスタートだったために、しばらくこうしたオーソドックスなシナリオを忘れがちだったところがありますが、僕自身は敢えて今この時点では極端な悲観シナリオ、金融危機突入シナリオには同意できません。あまりロジカルとは言えませんが、なにせリーマンショックの時の記憶が新し過ぎて、同じような市場の失敗、政策の失敗を繰り返すとは考えられないこともあります。

それでももちろん要警戒の時間帯であることは間違いありません。何しろ金融不安は、それ自体が広がりだすと自己増殖的に危機に結び付く怖さがあります。欧州大手銀行の不安までなら、「蒸し返し」と考えられるかもしれませんが、次にまったく予期していないところから、例えばある種のシャドーバンク、中国ほか新興国の金融不安などが噴出すると、不安感と疑心暗鬼の連鎖が加速する恐れは十分にあります。みなさまシートベルトは固めに締めることを忘れずに……。


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