金融経済教育推進機構(J-FLEC)、金融教育とどう向き合うか?
政府が力を入れる資産運用立国――。株高、新NISA(小額投資優遇制度)と盛り上がりを感じさせる中、もう一つの肝である金融教育を担う金融教育推進機構(J-FLEC)が4月発足。4月25日、初会合と安藤聡理事長の就任会見が開かれた。ポイントと今後の注目点、そして個人はどう向き合ったらよいかなどをまとめた。
J―FLECは何をするのか?
会見で金融経済教育推進機構(Japan Financial Literacy and Education Corporation J-FLEC)の活動に関する全貌が明らかになった。本格稼働は8月。活動内容として大きく3つ、掲げている。
① 講師派遣(出張授業)、イベント・セミナー
ライフプラン、家計管理、資産形成などの重要性について理解してもらう機会を提供
② 「J-FLECはじめてのマネープラン」無料体験
1時間の無料相談体験。自分自身が取るべき具体的な行動を知ってもらう
③ 「J-FLECはじめてのマネープラン」割引クーポン
相談料の割引クーポンを配布。相談料80%オフ(1時間あたり最大8000円まで割引)となる電子クーポン(3時間分)を配布※今秋より配布開始
肝となる認定アドバイザーの概要もある程度明らかになってきた。認定アドバイザーは金融機関に所属している人(商品の販売・組成に関わる人)や金融機関からキックバックを受けている人は対象としない――と明記した。個別の商品の推奨・販売はあくまで金融機関でするものであり、認定アドバイザーは「そうした判断をするためのリテラシーを高めていく」(安藤聡理事長)とし、アドバイザーと販売の役割の分担を強調している。
こうした人は具体的にどんな人たちで、日本にどれくらいいるのだろうか?会見で聞いてみた。
8月にアドバイザーの出張派遣事業が始まるときには、上記のような機関で、既にアドバイザーとしての仕事を実践している人たちが認定アドバイザーとなりそうだ。その後、広く世の中から先の条件(金融商品の販売・組成に従事していない。キックバックも受けていない)を満たす人のなかから増やしていくことになるとみられる。
会見では「個別の推奨、販売が一切できない人が有益なアドバイスをできるだろうか?」といった質問が投げかけられる場面もあった。議論があるところだとは思うが、まずはこうした軸(販売・勧誘をしない)を鮮明にしたこと自体は、個人にとっての安心感につながるように思う。J-FLECとして先ずは、講師派遣を年間1万回、参加人数を年間75万人との目標を掲げている。これまでの金融庁や各業界団体で行ってきた講師派遣等の回数は年間約5000回、参加人数は30万人――。これまでの実績からすれば確かにアグレッシブな目標と言えるかもしれない。
安藤聡理事長とはどのような人物か?
僕の個人的な印象では、最近の東証の「市場区分見直しに関するフォローアップ会議」メンバーを務め(2022から2024年)、現在の株価と資本コストを意識した経営促す議論をリードした論客だと思っている。実際に会議に関わった人の感想を聞いてみても「議論を積極的にリードしたひとり」といった声が多い。人望も厚いという。
ただ、コーポレートガバナンス改革の担い手というイメージがあっただけに若干以外な気もした。
安藤さんの略歴。東京銀行(現、三菱UFJ銀行)に1977年入行。運用関連業務では国債のトレーディングや外国債券のポートフォリオ運用などに関わっている。銀行合併の事務局などの仕事やジャカルタ支店長などを経て2007年銀行を退職。オムロンに入社。IR広報のほか、従業員向けの金融教育、企業年金改革などに関わり、人的資本経営にも日本では早くから取り組んだ経験を持つ。
どんな気持ちでこの仕事を引き受けたのか?即答したのか?――。こちらも会見で直接聞いてみた。
J-FLECは日銀の金融広報中央委員会を中核とするものの、各業界団体の金融教育関係者などからの出向者が集まる“寄合所帯”だ。志は高い一方、運営は一筋縄ではないと想像する。しかし、これからの日本経済の行く末を占うことになるであろう大事な組織だ。安藤理事長を軸として、建設的な方向に進むように強く期待したい。
個人はどう向き合ったらよいのか?
日経平均株価は89年末以来となる史上最高値更新、初めての4万円突破と株高に沸いている。今年は新しいNISA制度で非課税枠が大幅に広がり、使い勝手も格段に良くなった。書店では投資や資産運用関連本が平積み、雑誌や地上波のテレビ放送でも株高や運用に関する話題を頻繁に見かける。日本は株に関する話題で盛り上がっているのだ。一方で、例えばSNSで有名人を語る投資詐欺が数千万、億円単位で広がっている。正直言って報道の内容だけみていると、「どうしてこんなに簡単に詐欺に引っかかってしまうのだろう?」と思う。改めて僕ら、投資や資産運用に関わるメディアの役割も大事だと思う。最低限の基本的な常識を多くの人が身に着ける金融リテラシーの充実はまさしく急務だ。学校、職域、地域、個人――。J-FLECの発足がポジティブな化学反応を起こし、日本に健全な金融が広がるまたとない好機が訪れている。
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