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Asapp |オフィスワーカーのCO2排出量・削減量を可視化し、環境行動を促すアプリケーション

谷川あゆみ 
日建設計 デジタルソリューションラボ
コンサルタント

万歩計で歩数を確認するように、アプリでCO2排出量が確認できたら、私たちの行動はどのように変化するか?

環境行動アプリ「Asapp(アサップ)特許出願中」は、オフィスワーカー一人ひとりの働くことにまつわるCO2排出量・削減量を可視化することによって、環境意識を醸成し、環境行動を促すスマートフォンアプリケーションです。日建設計が企画・開発を行い、2023年3月1日から日建設計東京オフィスにおいて、試験運用を行っています。
アプリの名前は、「As app says(アプリの言うとおり)」と「ASAP(As soon as possible)」に由来しており、待ったなしの気候変動に対して自分たちができることからすぐに取り組んでいこうという思いが込められています。

日建設計の脱炭素に向けた取り組み

日建設計は、2050年カーボンニュートラル社会の実現のために、都市と建築に携わる一員として2021年3月に気候非常事態を宣言しました。企業活動に起因する温室効果ガス排出を 2050 年にゼロとするための段階的な取り組みとして、東京オフィスではエネルギー使用量を2030年までに2013年比で40%削減することを目指して設備機器の高効率化改修を行っています。しかし、これだけでは限界があることが分かっています。目標達成には職員一人ひとりの意識と日々の行動を通じて、建物の使い方自体を変えていかなければならない―これまで数々の省エネビルを手掛けてきた日建設計が自分ごととして脱炭素を考え抜いた結果、「Asapp」のアイディアは生まれました。

仕事中のCO2排出量・削減量を計算し、環境行動を提示

「Asapp」は、オフィスワーカーに仕事中の一人ひとりのCO2排出量を表示し、環境行動を促す仕組みです。オフィス、住宅、サードプレイスなどの「働く場所」や、電車、車、飛行機などの「移動手段」の情報入力およびオフィス内のセンサーにより検知された位置情報にもとづき、オフィスワーカーの日々のCO2排出量を可視化します。

図1 アプリ画面

またオフィスの在席状況に応じて、在席人数の少ないフロアから在席人数の多いフロアへの移動を通知により促し、無人になったフロアは空調・照明を自動で停止します。ワーカーがアプリケーションからの提案に従うことで、1人当たりのエネルギー使用量の低減がCO2削減量として換算されます。さらには、社内のカフェなどで利用できるポイントとして加算され、カフェにおける新たなコミュニケーションの機会も誘発します。

図2 環境行動を促す仕組み

現在は日建設計東京ビルを対象とした構成で開発していますが、フリーアドレス制のオフィスを採用しており、位置情報システムを導入しているオフィスでは、「Asapp」を利用することが可能です。

図3 位置情報にもとづく環境行動通知、空調・照明停止の仕組み

脱炭素社会を実現する人と建物の新たな関わり方

これまでの省エネルギーの多くは、温湿度や照度、在不在などに応じて空調や照明を最適に制御するものでした。既存建物においてこのような改修を行う場合には、外装や設備システムの更新など大掛かりな工事が必要となります。改修や維持保全費用が必要となり、容易には取り組めないのが実態です。一方、近年は一人一台スマートフォンを持ち、一人ひとりに情報を通知することができるようになりました。建物側の工夫だけでなく、望ましい建物の使い方を人に提示し、行動変容を促すことで、大規模な改修を伴わずに大幅な省エネルギーを実現できる可能性があります。「Asapp」はこうした人と建物の双方向の関係を構築する新たな接点となります。

建物とともに世界をよりよく

アプリで行動変容が起こせるのか、また行動変容が省エネルギーにどのくらい有効なのかは目下検証中です。変化が起こるためには建物・ツール・人それぞれがアップデートされていく必要があります。環境意識を醸成し、人と建物とのインタラクションによるCO2削減を実現するためのツールとして生まれた環境行動アプリ「Asapp」は、建物の省エネにとどまらず、建物とともに世界をより良くするための新たなプラットフォームとなり得る可能性を秘めています。

プレスリリース
オフィスワーカー 一人ひとりのCO2排出量・削減量を可視化し、環境行動を促すアプリケーション「Asapp」を開発 ~建物改修ではなく、ユーザーの行動変容を促すアプローチで脱炭素を推進~

谷川あゆみ
日建設計 デジタルソリューションラボ
コンサルタント
2017年、日建設計に入社。入社から設備設計部に在籍し、オフィスビル、学校、文化施設などの設計に従事。2022年よりデジタルソリューションラボにて、環境行動促進アプリ「Asapp」の開発に携わる。

クレジット情報
図2・3:Yuko Nakamura

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