「しょぼい起業で生きていく」が示すもう一つの起業

大きな目標を達成したいがための起業というものがある、一般的にはこちらが有名だ。この本はそれとは異なる生きていくための起業という可能性を提示してくれている。

組織の一員としてうまく動けない人がいる。けれども生きていくためにはお金は避けて通れない。どうするか。組織に属さないけれどお金を得るための方法としてしょぼい起業がある。

しょぼい起業と、一般にイメージされている起業(以降区別のため「一般の起業」と称す)は前述の通り目的が異なる。目的が異なるのだからアプローチも異なるところがある。

どちらの起業にとっても同じところは、経済活動を続けていくためには利益を得なければならない。利益とは収益(売上)から費用を引いたものだ。利益をあげるためにどこに着目するかというところが二つの起業では異なる。

一般の起業では大きな目標を達成するために沢山の人を巻き込んでいくことになる。それは大きな収益(売上)を得るということで達成できることが多いので、収益の増大というのを目標にする。

しょぼい起業は生きるためのお金を賄うための起業である。起業する前から生きるための費用がかかっている。例えば家賃、食費、光熱費、通学/通勤のための交通費などだ。その費用を起業によって圧縮できないかを目標にするところから初める。例えば店を借りそこに住むと家賃が実質無料になるとか、通学/通勤のときに売れるものを運ぶとただの移動が運送になるなどという例が挙げられていた。作者はこれを生活の資本化と呼んでいた。

他にもリスクのとりかた、人手の借りかた、投資をどうやって受けるとよいか、広告はどう行うのがいいか、それぞれしょぼい起業という立ち位置からだとどうするとうまくいくかというのが理由とあわせて書かれていた。

Eric Sinkという人が書かれた革新的ソフトウェア企業の作り方という本にはマイクロISVという、1人〜数人でニッチな市場を取り利益率を高く運営するソフトウェア会社のことが書かれていた。外から見たときは早く大きくなりたいベンチャー企業と似たような大きさであるにもかかわらず、そこでのやり方進め方はかなり異なるというのがとても面白かった。

しょぼい起業も革新的ソフトウェア企業の作り方と似た面白さを感じた。この私が感じている面白さを言語化してみると、どちらの作者も自分なりに状況を咀嚼しなぜそのように振る舞っているのか説明してくれ、私もそれを読んで妥当であると感じられること、そしてその振る舞いが世間一般で考えられているセオリーとはやや異なるということが面白いのかもしれない。そういうのに興味がある人におすすめ。

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