見出し画像

香港満腹興奮渾沌徘徊記(前編)

3泊4日で香港に行ってきた。友人二人が仕事と留学で香港にいるのでエイヤッと航空券とホテルをとり、二人にアテンドしてもらった。

今回はマカオには行かず、九龍島と香港島をひたすら散歩してごはんを食べて過ごしたのだけど、香港の市井の人々や街中のエネルギーそして「人間の営みだなー!生きてるなァー!」という静かな興奮に包まれる旅だった。

1日目

23時過ぎにホテルにチェックイン。まだまだ周囲の店が空いていたのでホテルの周りを少しだけうろついて、セブンイレブンでグァバ味(!)のヨーグルトジュースだけ調達して飲む。就寝。

2日目

「ワゴン式飲茶が食べたい!」とリクエストしていた。友人が指定してくれた店に向かう。

店内は活気に満ちている。友人の「朝から飲茶って、香港でもだいぶオーセンティックやで。現地のおっさんのスタイルや」という言葉通り、新聞を読みながら飲茶をつまむおじさんで溢れていた。香港は基本的に相席スタイル。地元のおじさんと、アジア圏の観光客と同じ卓につく。

ワゴンがまわってくるので、好きなものをとって伝票に記入してもらう。えびしゅうまい、スペアリブの豆豉蒸、かにしゅうまいをもらう。どれもおいしい!

円卓の上の中国茶は飲料用と皿洗い用の水を兼ねる。私たち3人分の全てのお皿がそこそこ汚く、洗ってもウーンという感じなので新しいのをくれないかと店員さんに頼むと、一つだけ持ってきて「全員分あるだろ!」と怒られる。他の店員さんにも「タレを追加でほしい」というとジャスチャーと広東語で「俺はいまワゴンを運んでいるから忙しい!それどころじゃないんだ!」と力説されタレはついぞもらえなかった笑 香港式接客、有無を言わさずある意味誰にでも平等な感じがして私は割と好きだ。

揚げ物のワゴンがやってきた。春巻き、エビのクレープ、豚肉の煮付け入りのモチモチの何かをもらう。全部カラッと軽めに揚がっていてとても美味しい…!

今回、香港の下調べはほぼせずにやってきたのだけど、平野紗希子さんの「味な副音声」の香港回だけは聞いた。「香港でたくさん食べるには野菜をちゃんと食べるべし」という至言に準じて青菜のものを頼んでもらう。

出てきたのは「カイラン菜」の蒸し物。ブロッコリーと小松菜の合いの子のような野菜で、甘くて食べやすい。友人いわく「香港の野菜はブロッコリーかこれのほぼ二択やな」とのことだが、滞在中それはほぼ真理と後に知る。

友人たち激推しの海老の腸粉も無事ゲット。確かにこれは特に美味しかった!日本のものよりも生地のもっちり感と米粉の風味が強い。

大満足で店を出て、しばらく街をぶらぶら散歩する。店のあった上環駅のあたりはかつて漁村で、その名残で魚の干したのや干しエビを量り売りするお店がたくさん並んでいた。散歩しながら香港の名物(?)竹の足場を見かけたり、坂道をひたすら登ることで香港が山を切り開いた地なのだと実感したりする。

地下鉄で九龍島に渡り、重慶大厦(チョンキンマンション)へ。勝手な先入観から安宿がひしめき怪しい取引がなされる場所だと思っていたのだが、香港のひとからすれば「インドカレーを食べに行く場所」なんだとか。

中に入ると陽の光が一切入らないビルの中に、手数料ゼロの換金所(どういうこと?)、インドカレー屋、アフリカ料理屋、1日使い切りの洗剤などの日用品を売る店、携帯ショップなどが並ぶ。

香港の高校生たちが社会科見学にきていた。チョンキンマンションは「多文化共生の象徴」的な場所らしいが、香港そのものがその象徴的な地なのではとも思う。重慶大厦は象徴オブ象徴だ。

そのあとは海沿いを散歩し、K11という大型ショッピングモールを通り抜けてペニンシュラへ。チョンキンマンションから徒歩6分でこの変わりよう。

ペニンシュラのロビーでは生演奏のクラシック音楽が流れている。音楽隊はロビーの客から見えない2階の死角的場所で演奏しているあたり、品格を感じる〜「生演奏やで!生演奏やっとるで!!!」と大々的にアピールするのはきっと違うのだろう。

また散歩を続ける。香港では冷たくて甘いドリンクが定番だそうで、よりどりみどり数多のお店がある。今回は友人おすすめの「HEY TEA」でマスカットとレモンのジュースを買う。

イラストがカワイイ!

街には日本のものがあふれている。香港に進出しているドンキホーテをのぞけば質の良さそうな寿司パックや鮮度のいい野菜が並び、街を歩けばはま寿司とくら寿司が向かい合わせにあり、交通広告では吉野家のCMが流れ、市場にはくまモンが印刷された熊本県産いちごが並ぶ。

実際に日本のものは大人気で、友人たちの同僚には趣味で日本語を学ぶ人が多く、中には年4回日本を訪れる人もいるのだとか。

香港よりも物価が安く、それでいてモノの質が高くホスピタリティのクオリティがいい国が近くにあるなら行くよねえ。嬉しくもあるが、かつては日本メーカーのロゴがずらりと並んでいたらしいビクトリア・ハーバーにいまはPanasonicの看板だけがポツンと残っている景色を見たときと同じ、複雑な気持ちだ。

歩きながら九龍島を北上する。道教の寺で線香をあげて、将棋をするおじさんたちを横目にみる。香港のおじさんたちはあんまり孤独じゃなさそうでイイなと思う。朝は新聞を読みながら行きつけの店で飲茶をして、午後は仲間内と公園で囲碁や将棋を楽しむって、かなり理想の老後じゃないか?

朝の飲茶のせいか、おなかが全く空かない!軽くおやつで済ますことにして、行きたかった「KaiKai dessert」へ。

3人で核桃露(胡桃のスープ)と紅豆沙拼糯米麥粥(ぜんざいのようなもの)をシェアする。胡桃のスープが濃厚で、追加トッピングした湯園(黒胡麻入りの団子)がモチモチしていて絶品だった…!

この日は旧正月明けで「湯園を食べる日」らしかった。日本でいう七草粥のような風習だそうなので、食べられてよかった。

そのあとは女人街や金魚街を見たり、めちゃくちゃ苦くてまずいが健康にはいいお茶を飲んだりする(本当にまずかった)。「1人1杯は絶対に要らんで!みんなで分けよ!」という地元在住友人は正しかった。ありがとう。

地下鉄でふたたび香港島へ。地上に出ると、夕暮れ時の香港の街が広がっていた。友人が「香港の夕方はマジでいいよ」と語っていたのがわかる。たった2日過ごしているだけなのに、なぜか懐かしくノスタルジックな気持ちになる明るさに街が包まれている。昭和を知らないのに、クレヨンしんちゃんの「モーレツ!オトナ帝国」に感動するのに近い。伝わりますかね…

歩き疲れて、香港名物ポーローパオとレモンティーで遅めのおやつ。ポーローパオは、メロンパンにバターを挟むというキング・オブ・カロリー・フード。罪が食べ物の形をしている。2万歩以上歩いてへとへとの体と脳髄に甘さが染みる。

なぜか地元の駄菓子屋さんを思い出す懐かしい空間

トラムに乗って、四方をマンションに囲まれた「モンスター・マンション」へ。日照権?何それ美味しいの?と言わんばかりにそびえ立つ部屋、部屋、部屋…異形の生き物のようでもあったが、それ以上に「人間の営みがここにあるな〜」と静かに興奮した。この部屋の数だけそこに人々の生活があるのだ。

香港の住宅事情は凄まじいものがある。月に家賃を15万円払ってもシャワー室がなく便器の上にシャワーがついている部屋しか借りられないとのこと。モンスターマンション付近の不動産屋を見れば「2部屋+ベッドルームつきで1億5千万円!」という間取り図に「お買い得!」のような謳い文句が書かれた蛍光カラーのポップがついている。億以下の物件を探すほうが難しかった。世田谷区ほどの面積に800万もの人々が暮らすとはこういうことか。

晩ごはんの店は友人が予約してくれた「湖楽園」へ。ミシュランの星を何度もとっている名店だ。香港にはミシュランの店がたくさんある。

友人の友人3人も加わって、6人で美味しい香港料理をモリモリ食べる。牡蠣のお粥、あさり料理、カイラン菜(朝食べた野菜!)の干しエビと生姜の蒸したの、牡蠣のお好み焼き、エビの揚げ物、鶏肉ときゅうりとセロリの和物、ガチョウ肉の盛り合わせ。全部美味しくてどんどん食べてしまう!

牡蠣のお粥は牡蠣の出汁がよく出ているし、ガチョウ肉は脂っぽさをタレである酸の強いお酢がうまい具合に打ち消してくれている。ガチョウ肉の肉汁しみしみの厚揚げのおいしさよ…。

友人の友人はお三方とも駐在or留学で香港におり、同世代かつ大学が同じだったりで共通の話題も多く、とてもよくしてもらった。

昨年のアジア1美しい顔に香港の男性アイドルが選出されたそうなのだがそれには色々な意見があるようで、「玉木宏なら許す」「俺は山田涼介かな」などを話したり、香港のおすすめスポットなどをみなさんから教えてもらったり。

香港のひとはあまりお酒を飲まないそう。晩ご飯の店もお酒のメニューは最低限だ。飲むひともお酒と食事は分けるのがポピュラーらしく、2軒目にバーなどに行くのだとか。この日はバーよりも甘味の気分だったので、近くのお店で牛乳プリンや湯園をテイクアウトして海辺で食べる。

21時過ぎでこの行列である
湯園in生姜汁!ここのもモチモチで美味しい!

海沿いの道は夜景が綺麗に見える。友人の片方はよくここをランニングするそう。ロマンチックな夜景を前に大陸系のおばちゃんたちが爆音でダンスミュージックを流しながら踊っている。このゆるさがたまらなくいいなあ。

(大陸系ダンシングおばちゃんたちが去ると、友人が関ジャニ∞の「好きやねん大阪」を流して踊り始める。ここでこんなことをした日本人はきっと後にも先にも君だけだよ…)


みんなで記念写真を撮影して九龍島へ戻る組と香港島在住組に別れて解散。私のホテルは九龍島なので、セントラルまでトラムに乗る。香港のトラムは2階建てて、夜風を体に受けながらギラギラにネオン輝く香港の夜の中を走るのが最高だ。

24時間の滞在で、香港がすっかり好きになっていた。後編へ続く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?