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令和の廃藩置県

 文芸春秋の巻頭に、数人の作家とそれらしき人が小文を投稿しているコーナーがある。合計10数ページに7,8人が書いているから1人当たり1,2ページ、最初は作家・数学者の藤原正彦氏、最後はイタリア在住の作家塩野七海さんが定例になっている。短文だが、書く方も気が楽なのか自由に思うところを書いており、毎月興味深く読んでいる。
 
 3月号で、塩野七生さんが、「令和の廃藩置県」を提唱しているのが興味深い。以下、要約すると・・・・・(一部転記)
 
 昔のサムライは藩から給料をもらう正規社員だったが、廃藩置県により失業者に変わってしまった。明治初期の佐賀の乱から西南の役までの反乱は既得権益を奪われた正規社員の反攻だった。日本は今こそ本質的な改革、令和の廃藩置県を断行すべきだ。
 正規と非正規の差を撤廃し、全て契約社員とする。契約期間は1年では不安定過ぎるから5年間にはすべきだろう。ただし経理とか経営陣の専用運転手のような任務に携わる人は、終身雇用に回すこともありえる。
 もしも令和の廃藩置県、つまり正規と非正規の差の完全撤廃が実現したら、今の日本をおおっている閉塞感を一掃できるかもしれない。だが、それがならなかった場合、日本はいずれ、正規と非正規に二分裂するだろう。不公平感が原因の社会の二分裂くらい、その国の衰退につながることもないのである。
 
 塩野七生さんは一月後の4月号に、自分の小文に反応があったのだが、クエスチョン・マーク的な反応で、それが今の日本では多数意見かもしれないと述べて意見を紹介している。その意見は・・・・基本的には賛成であり正しいけれど、実際には正社員は契約社員に「格下げ」されると抵抗するだろう。日本の現実を見ると悲観的にならざるを得ない・・・・とのこと。
 
 いわゆる正社員も、何らかの契約をして働いているのだが、非正規と決定的に違うのは労働法で過剰に保護されている事だろう。65歳まで雇用を保証され、昨今は70歳までの延長が言われている。更に、相当のことが無いと解雇出来ない。仕事に全くやる気が無くても、多少の悪いこと(社費の私物化等)をしても簡単に解雇できない。中には転職を繰り返し、その都度労働問題を起こして、会社から相応の手切れ金を得て儲けている人もいる。真面目に働く人の意欲を削ぐばかりだ。
 
 何事によらず、抜本的な改革は、「理屈ではその通りだが実際には難しい」と評価される。が、今の日本はそんなことは言っていられない。選挙の票だけが全ての判断基準ではないのである。

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