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大径管工場の建設 9.据え付け工事

 基礎工事がほぼ終了し、設備の据え付け工事が始まった。最初に設備据え付けの位置の基準となるベンチマークを作成するが、この辺りは理解しにくいから、詳細は省略します。
 
 据え付けスケジュールに従って設備が搬入され、順次据え付けが進む。Ⅰ社は工事部門と設計部門が駐在する仮設事務所を建てて、こちらも臨戦態勢だ。実際に据え付けてみると、設備同士が干渉するなど諸々の不具合があるので設計担当も常駐する。実際の据え付けはⅠ社の下請けの下請け、重量設備据え付け専門の親方会社の数社が担当した。各社の親方ともそれなりに親しくなり、他鉄鋼会社での圧延機据え付けの様子など様々な話をしてくれるので、面白かった。
 
 据え付け工事をするのはⅠ社だけではなく、諸々の設備工事や、電気、建築などの工事も同時進行で進む。作業スペースが限られているし、据え付けに使う工場の天井クレーンは2台だけだから、使用時間の調整も必要になる。連日16時にⅠ社の事務所に集まってもらい、私が司会して翌日の工事調整を行う。各社から作業内容、作業スペース、クレーンの使用希望を聞いて、作業が錯綜するようなら、足して2で割るような感じで調整する。各人とも忙しいから、手際よく10~20分程度で打ち合わせを終える。
 
 私は他部門に提示する各種資料の仕上げにも追われ、事務所と現場を往復して些か疲れていたが、外向けにはまだまだ余裕があるが如く振舞っていた。見かけは大事なのである。夕食はⅠ社に頼んでお弁当を用意してもらい、Ⅰ社の現場事務所で食べた。通勤時間がもったいないので、連日仮設事務所の布団部屋に泊まることになり、誰かの罠に嵌ったらしい。
 
 話は大きく脱線するが、その頃・・・・
 ある日、妻から会社に電話があり、3日後に家に帰ってください、と言う。長男に続いてもう一人、男の子が欲しい、とのこと。指定日の夜、家に帰って、久しぶりに風呂に入り、ゆったりと食事をして、後は頑張るだけだ。
 ところが、連日満足に寝ていない上に、我が家の布団は寝心地がよく、大事な時に、つい、うとうとするのは、自然の成り行きだ。2回ほど、うとうとしたら、妻が、「私だって好きでやっているわけではない」と怒る。確かに目的は明確、好き嫌いの問題ではない。2日連続で家に戻り、兎も角、頑張った。
 そのときは、結局失敗だったようだが、1ヶ月後に、又会社に電話があり、日を指定され、再度、苦難の2晩を過ごして、今度は、うまくいった(らしい)。妻は体を酸性だか、アルカリ性だかにして、男を狙っていたらしく、10ヶ月後には、無事に男の子、つまり次男が誕生した。苦労が報われたらしい。
 後日、会社の同僚に男の子が生まれたと言ったら、家に帰ってないのに、子供が出来るはずがない、俺の子のでないと言う。当家に限って、怪しい事などあろうはずはなく、顔も性格も似ているから、間違いなく我息子・・・と思う。

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