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大径管工場の建設 4.建設チームの立ち上げ

 予算300億円、工期2.5年で正式に稟議が通り、専任の建設チームが結成された。工事の進展に伴い後に増員されたが、当初のメンバーは以下の通り。
 
・リーダー、山上課長、40歳シームレスの操業技術陣の(自称)エース
・副リーダー、稲山係長、33歳パイプ設備建設部門の中心的な経験者、
・機械チーム、
  植山、私と大学同窓の2年先輩、ある程度の建設経験がある。
  秋山、私のこと、28歳パイプ部門の設備建設は初めて、些か軽率(?)
  西山、私と同年、鉄鋼短大出身、設備建設部門の信任が厚い実力者
・電気2名、土木1名、建築1名がそれぞれの部署で専任となった。
 
 山上課長は部下(特に私)に対して、何事によらず自分の方が上だとの意識が強く、相手がしにくかった。工事の進行に伴い何かのトラブルがあれば私の失敗で、上手く行けば彼の手腕だと、上司に報告していると、別ルートから何回か聞いたが、サラリーマンにはよくある事だし、それでは逆に彼の評価を下げるだけだろうと、気にしなかった。
 
 稲山係長は国立T大卒のエリート、中肉中背、容貌はお坊ちゃんだが、大学時代、学費を払えず、幼稚園の運転手をして学費を稼いでいたので、卒業まで5年要したとの苦労人らしい。酒が好きでかつ強く、たまに飲み過ぎて翌日は何も覚えていないことがあるが、普段の頭の回転は驚くほど速い。私に対する信頼は絶大で、私の仕事に、まったく口を出さず、確認もチェックもせずに任せて(放任して)くれた。腹が座っているとも言えるが、時に、上司に自分がどう見られるかを意識していつもと違う行動をすることもあり、意外と普通のサラリーマンらしくもあった。
 
 植山氏は大学の同窓、同期入社だが修士卒だから私より2年先輩、同じく中肉中背、学生時代からの顔なじみだった。お互いに気心は通じていて、私的な家庭内の諸々を話すこともあった。性格は穏健だが、技術者として、人としての芯があり、当然ながら稲山係長の信任は厚い。計画当初の新加熱炉の建設を1人で担当し、1年あまりで無難に仕上げた。その後の圧延ラインの建設にはタッチせず、チームから去った。
 
 西山氏は高卒で入社し、狭き門を選抜されて鉄鋼短大に留学した、ある意味で鉄鋼会社のエリート。私と同年だが、パイプ設備の建設部門が長く、周りからの信頼を得ている。溶接管設備の新設(20億円程度)を、2年上の修士卒の技術者と組んで担当したが、実際は彼が殆ど仕切って完成させたと言われており、今回は私と組んで主要設備の一部を担当した。当初は私の経験不足に不信感があり、何かと口を出したが、計画が進むにつれて、お互いの実力を尊重し、人となりを理解して、いい組み合わせだった、と思う。

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