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浴槽

昨年の夏に神奈川から佐賀に移住した。
なんとなく言葉を書くことからは距離を置いていたけど、どうしてかここ最近のことを書きたくなった。
雨の音はどこにいても変わらないままだけど、連なる山々には深い霧が流れている。風がつれて来るのは冷たい空気でしかなくて、乾いた喉を潤してくれるだけだ。
2020年に東京で、オリンピックがあると言うことで。ガヤガヤするのが面倒くさそうだし、色々あって、落ち着くまで田舎に行くことにした。
ちょうどたまたま”やきもの”にも興味があったし、昔に見た佐賀城の石垣の並びがきれい組まれていたから、きっとここには丁寧に仕事をする考え方あるだと思っていたから。けど、ここは知らない場所。
今日は仕事が終わったし、まだ明るいうちに暖かい湯船にゆっくりと浸かることにする。
コンパクトなスピーカーからは、Yogee New WavesのCLIMAX NIGHTが流れていて、窓から差し込む光は淡い湯けむり反射して、あの日の記憶を映し出してくれる。
東急のホームから見る青空は、雲ひとつなくて原色の凛とした青が世界を包み込むように広がっていた。この体が収まりきれない浴槽はタイムマシンだ。
こんなことを思い出すと思わなかったし、こんなことに感動するとも思わなかった。きっとこの記憶は無機質なバスルームが作り出した偽りでしかないのだろう。
だけど、こんなひどく疲れた日は偽りの記憶の中に浸かっていたいと、どうしても思ってしまう。


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