★SIFオリジナル★イスラエルで、私も考えた #こんな社会だったらいいな④

こんにちは。日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム(SIF)運営チームの榎村です。

先日、イスラエルで「キブツ」という農業を中心とした共同体を視察したときの経験をお話したいと思います。

キブツのはじまりは、イスラエル建国(1948年)より前の1909年。帝政ロシアの迫害を逃れたユダヤ人がパレスチナに渡り、ガリラヤ湖南岸に設立した村が原点といわれています。彼らは、自分たちの国をつくることを夢見て、土地を開墾し、食べ物や衣服まで共有する独特の共同体を確立しました。

イスラエル全土には今もなお、270ほどのキブツが存在しています。
私が一番興味があったのは、「キブツ」という端から見ると超内向きなコミュニティがなぜ連綿と続いているのか、というところでした。
一体住民同士はどんな理念でつながりあっているのだろうか?

さてさて、今回訪ねたのはエルサレムから約20km に位置するTzora(ゾラ)というキブツです。

キブツの住宅 窓から女の子が視察する私たちに挨拶をしてくれた

<写真>キブツの住宅 窓から女の子が視察する私たちに挨拶をしてくれた

【意外と事務的!なキブツの運営】
案内してくれたのは、住人のMaozという優しそうなおじいさん。人口約900人程の集落をめぐり、ここでの暮らしを色々説明してくれました。

集落の中には共同食堂や学校、スーパー、住宅、共同体の収益源であるワイナリーなどがありまさにひとつの町のよう。キブツを運営するための仕事は住民が全て担当しており、 それぞれにきちんと役割があるようです。

また、大事なことはコミュニティの委員会にかけられ、みんなの承認を得る必要があります。たとえば、家を増築したい場合、もちろん行政にも許可はいるがコミュニティの許可もいるという具合に。

そのかわり、生活用品、食料などはキブツ全体で購入し、キブツ内にあるスーパーを通して各家庭に支給されるし、クリーニングも共同サービス。

つまり、生活は保障されている代わりに、徹底した財産の共有、運営で成り立っている共同体なのです。
思ったよりも、事務的なシステムです。
そう、どうやらキブツはイデオロギーからではなく、歴史的な必要性から生まれた合理的なコミュニティのようです。

【健全なコミュニティづくりのカギは、●●の成熟にあった】

キブツ内の納税の仕組みについて、稼ぎが多い人ほど多く負担し、稼ぎが少ない人の分までカバーすると聞いたとき、私は思わず彼に質問しました。

「それって不公平じゃない?」

すると、彼は笑って答えました。

「ここが自分のHomeだから維持できるようにするのは当たり前だ。みんながそれぞれに幸せと感じられればOKなんだよ」

これは、なにも彼が聖人君子だからではありません。この集落全体が自分の生命維持装置だからそれを守るのは当たり前なのです。
ここまで聞くと、キブツの存続は単にそういうシステムだったから、ですんでいたかもしれません。

でも、次のMaozの言葉が心に引っかかりました。

「誰かが大きい家を建てたいのならそれはそれでOK。私は大きい家より、中くらいのサイズの家があればHappyだからね」

なるほど、 彼らは共同生活をしていても、精神的に依存しあっているわけではなさそうです。
生活を成り立たせるのは皆で力を合わせるけれど、何をどうHappyと感じるかは、個人が決めること。
そうなれば、自分を幸せにできるのはまず自分、となり、無闇に他者へ攻撃したり羨んだりしなくなるのではないでしょうか。
これは言い換えれば、「精神の成熟」です。

日本社会は甘えが人間関係の基本である、と精神科医の土居氏が著書『甘えの構造』で指摘しています。
これからの日本社会で快適なコミュニティをつくっていくには、もしかしたらこの「精神の成熟」という視点が大事なのかもしれません。

#こんな社会だったらいいな
#イスラエル
#コミュニティ

【ソーシャルイノベーションフォーラムとは】
「社会をよりよくしたい」、「日本の明るいビジョンを語りたい」という想いをもつ方々が共に対話し行動するための「ソーシャルイノベーションのハブ」として、日本財団が2016年より毎年開催しているフォーラム。官民学等のセクターを超えた豪華ゲストが登壇する基調講演や特別企画、参加型の分科会、次世代の社会起業家を輩出するソーシャルイノベーションアワードなど、多様なプログラムを提供し、これまでに延べ1万人の方々が参加しています。2019年度は、11月29日(金)~12月1日(日)に東京国際フォーラムにて開催予定です。
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