2018年J1第32節 セレッソ大阪対川崎フロンターレ プレビュー「目立たないけど重要な3人」

2018年J1第32節、川崎フロンターレの対戦相手はセレッソ大阪です。試合のポイントについては、様々なメディアやブログで語られているので、僕はこの試合を前に、2018年シーズンのチームを支えた3人の選手について書きたいと思います。

奈良の出来によって勝敗が変わる

1人目は奈良です。

2018年シーズン開幕当初の奈良はコンディションが上がらず、なかなか試合に出場できない期間がありました。第8節のベガルタ仙台戦からスターティングメンバーとして試合に出るようになりますが、第20節から第25節までベンチ外。試合に出たり出なかったりということもあり、もしかしたら不満の残るシーズンかもしれません。

しかし、奈良が復帰した第25節の北海道コンサドーレ札幌戦以降、チームは7戦負けなし。失点も5点のみ(そのうち第30節のヴィッセル神戸戦の3失点を含む)。奈良がいるかいないか、奈良が万全であるかどうかが、どれほどチームに大きな影響を与えるか、改めて思い知ったシーズンでもありました。

奈良の強みは、相手チームが数的同数もしくは数的優位な状態で攻撃を仕掛けてきたとき、確実に相手の攻撃を止めてくれること。そして、コンタクトプレーに強いので、ヘディングでの競り合いで相手に優位なポジションを譲らずに競り勝てることです。奈良の出来で、谷口のプレーも変わります。

この試合の奈良は、セレッソ大阪の柿谷や杉本とマッチアップし、柿谷の背後を狙う動きや、ボールを受けてキープするプレーを止める役割を担います。奈良が素早く止められたら、川崎フロンターレが優位に試合を運べると思います。杉本や柿谷が優勢だとしたら、セレッソ大阪が優位に試合を運べると思います。

現在セレッソ大阪に3連敗中ですが、2試合は奈良が欠場した試合で、1試合のゼロックススーパーカップは、奈良のコンディションが上がっておらず、普段どおりのプレーが出来ていない試合でした。

奈良がどんなプレーを披露するのか、注目してください。

走っても、走っても、パスが出てこなかったエウシーニョ

2人目はエウシーニョです。

エウシーニョは2018年シーズンの川崎フロンターレの選手の中で、試合に出続けているにもかかわらず、最もストレスを溜め込んでいた選手かもしれません。

なぜなら、シーズン序盤の川崎フロンターレでは、どんなに相手を外しても、どんなに走っても、パスが自分に出てくることがなかったからです。エウシーニョが両手を広げて味方にアピールするシーンを何度も見ました。

エウシーニョにパスが出なかった理由は、川崎フロンターレの攻撃が左サイドからに偏っていたからです。

奈良のパフォーマンスが上がらず、エドゥワルド・ネットのプレーの特徴から左サイドにパスが集中し、中村だけでなく右MFの家長までボール欲しさに左に移動したことで、左サイドは大渋滞します。右サイドに1人取り残されたエウシーニョは、なかなかボールを受けられず、ボールを受けても味方がいないので、ボールを奪われないのが精一杯という状況が続きました。

エウシーニョはたぶん家長に対して、「なぜ左サイドに移動するのか」と相当意見をぶつけたはずです。家長には家長なりの理由があるのですが、エウシーニョは上手くプレーできないストレスと、シーズンを通して戦っていたように見えます。

直近の試合を見ていると、エウシーニョは相手DFの背後を積極的に狙うプレーを控え、守備と相手陣内にボールを運ぶプレーで、チームに貢献しようとしていると感じます。エドゥワルド・ネットが移籍したことで、左サイドにボールが偏ることもなくなり、家長が右サイドでプレーする時間も増えました。

今節のセレッソ大阪戦では、エウシーニョのプレーが勝敗を分ける気がします。なぜなら、セレッソ大阪はこれまでの試合同様に、MFとDFの間の距離を短く保ち、敵陣にボールがあるときは4-4-2、自陣にボールがあるときは杉本をMFの位置まで下げる4-5-1を使い分けて守るはずです。

MFとDFの間のスペースを狙って攻撃するのは簡単ではありませんので、狙うべきはDFの背後のスペースです。中央からDFの背後を狙うのは、GKもいて簡単ではないので、サイドから相手の背後を取りたい。サイドから相手の背後をとる役割を担うのは、エウシーニョです。

エウシーニョが何回セレッソ大阪のDFの背後を取れるか、注目してください。

最高な阿部が戻ってきた

3人目は阿部です。

2017年シーズンはシュートの上手さだけでなく、お金が取れる守備、そして相手を見て最善の選択ができる「頭の良さ」など、川崎フロンターレにこれまでなかった要素を持ち込み、リーグ優勝に大きく貢献しました。

迎えた2018年。エウシーニョと同様に、阿部も左サイドに偏る攻撃の犠牲になりました。中村や家長が左サイドでプレーする時間が長くなり、阿部がプレーするエリアは狭くなってしまいます。

追い打ちをかけたのが、プレータイムの減少です。2017年シーズンは28試合出場で2849分のプレータイムだったのが、2018年シーズンは26試合出場でプレータイムは2052分。1試合平均に換算すると、2017年は83分53秒だった出場時間が、2018年は78分55秒に減少しています。

たかが5分というかもしれませんが、5分なればサッカー選手はいろんなことができます。交代の1番手が阿部という試合も少なくありませんでした。阿部は不満を言う選手ではありませんが、ストレスを溜め込んでいた時期もあったと思います。

しかし、最近の試合を見ていると、阿部らしいプレーが増えてきたように見えます。攻撃のときに素早くボールを運ぼうとする味方をたしなめるように、ゆっくりボールを持ってペースダウンさせるプレー、相手の攻撃をファウルで止めるプレー、そして憎らしいほど冷静に打つシュートなど、ようやく阿部の特徴を発揮したプレーが増えてきたと感じます。

問題が起こったときに、常に最善の選択を実行し、解決してみせる阿部が、この試合でどんなプレーを披露するのか。思い返すと、2017年シーズンの最終節で先制点を挙げたのが阿部でした。

奈良、エウシーニョ、そして阿部。

この試合はこの3人に注目したいと思います。

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