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障害は不便である、だが不幸ではない

突然だが僕には趣味がある。
言うなれば言葉集めというかなんというか、
日常や物語で目と耳についた
金言やら名言やらセリフやらを
ただメモ帳に残しておくだけのものだ。

ただ侮ることなかれ、これが意外と役に立つ。

たった数文字が、
疲れた時に元気をくれる。
怠惰になった時にケツを叩いてくれる。
臆病になった時に前に進む力をくれる。

多種多様な効果効能で意外と役にたつ。

そんなわけで僕が集めた言葉を、
せっかくなんで独り占めせずに
ネットの海へ放流しようと思う。

というわけで第一回目。

「障害は不便である、だが不幸ではない」
ヘレンケラー
(A handicap is inconvenient, is not a misfortune, though.)


刺さる人が少なそうな一文で恐縮である。
ただ一回目として
僕はこれを書かずにはいられない。
なぜなら僕自身が生まれつきの障害者だからだ。
障害と銘打ったが
これをハンデとかコンプレックスと書き換えたら
自分ごとに感じられる人もいるのではないか

「左三指機能全廃及び左手関節機能障害」
それが僕の授かった障害。

タコクソ長い名前だが簡単に言ってしまえば
左手の指2本と肘がないだけのものだ。

ミュウツーの左手を短くしたものといえば
もしかしてよりわかりにくくなるだろうか?

参考までにミュウツーの画像を貼っておく

というか僕の左手を貼っておく

余談だが大学生の時に学童のバイトをしていた際
小学校低学年の男子が僕に向かって
「ミュウツーじゃん!」
と言ってきたことがある。

第一世代のポケモンまで把握済の
ポケモン博士な彼に
なにを言われても気にしない
プロ障害者の僕はこう返した。

「俺レベルだともうミュウスリーだからね?」

彼はいった。

「は?笑」

次あったら物理的に
サイコキネシスを喰らわせたいと思う。


話を本題に戻そう。
そんなレアポケモンと似た腕を持つ
レアサピエンスの僕なのだが
最初に上記の一文を見つけたのは幼少の頃だ。
親に「お前以上の人がいるんだぞ」という
摩訶不思議な発言とともに手渡された
「五体不満足」(乙武洋匡著)という
本の引用で書いてあった。

「障害は不便である、だが不幸ではない」

せいぜい一肢不満足くらいの僕だとしても
この一文は突き刺さるものがあった。

確かに障害は不便だ。
正直僕に関していえば
障害の程度と生まれつきなのも合わさって
肉体的な不便はあまりない。

ギターを弾く時に弦を押さえられない
右肩を洗う時に届かない
紙エプロンをつける時に結べない

いくつかあるが

体育でバスケもバレーも野球もできた。
音楽でリコーダーは片手用のやつで吹いてたし、
なんかバイオリンも弾いた覚えがある。
キーボードも今両手でカタカタ言わしている。

やはり肉体的な不便はあまりない。

ではなにがあるかといえば
それは精神的な不便だった。

僕の異形な左手は人の視線を誘う。
今は逆に気持ちよくすら感じるその視線も
幼少期の僕には気掛かりだった。

自分が自分を可哀想と思っていなくても
その好奇心と恐怖心の混ざった視線が
僕を可哀想にしていると感じてしまうのだった。

ジロジロ見るならまだいい。

「気持ち悪い」

「化物」

「妖怪」

と気持ちよくないことを言ってくる人もいた。
別に僕は被害者ぶるつもりはない。
ジロジロ見てくるのも別に悪いとも思わない。
投げられた言葉も小学生の時で、相手も小学生。
まだ言葉を選べない子どもを悪いとも思わない。
僕は傷つけられたわけじゃない。

でも確かに傷ついてはいたのだ。

その傷が不便を作る。
その傷が身動きを取れなくさせる。
どうせ障害者だから何をやっても無駄と
自分を不幸だと決めつけるような
心の癖がついていく。

やっぱり障害は不便だ。

とはいえそんなことを感じていたのは昔の話。
今の僕は心の底から
この左手で生まれて良かったと思う。
なぜかといえば
そんな不便を包んで溶かしてくれるような
温かいメリットがあるからだ。

覚えてもらいやすい
人の親切に触れやすい
何よりネタにすればウケる。
誰かを笑顔にできる。
それが何より気持ちいい。

ポジティブに捉えられることが山ほどあるのだ。
せっかく生まれ持った特徴を
ネガティブにしか考えられないなんて
そんなのあんまりじゃないか。

この左手はたくさんの幸せを
僕に運んでくれているのだから。


もう一度言いたい。
障害は不便である、だが不幸ではない。

持って生まれたものが
人生に負荷をかけることがあっても
それは不幸を招くものなんかじゃない。

持って生まれたもので
人生が決まってしまうことなんてない。

持って生まれたもののせいにして
自分を不幸に見積もらなくたっていい。

この言葉はそんなことを教えてくれる。

今日も僕は舞台に出て
左手を見せびらかしにいく。
自分の幸せを証明するために。

では。


ps
この「〜は〜だ。だが〜ではない」構文はわりと使い勝手がいいので
この記事を読んでくださった方はぜひ使っていってもらいたい


ラーメンはハイカロリーだ。だがすぐ人体に影響はない。


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