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内向的な性質でも経営者を10年続けられた3つのコツ

この記事はroot Advent Calendar 2022の25日目最後の記事です。

今日は、僕が経営している会社が10周年を迎え経営者として10年を歩んできたので自分の経営者の資質についてお話しようと思います。
実は僕、とても内向的な性格でいわゆる世の中一般的な社長像とはかなり違う経営スタイルで社長をやっています。正直今でも営業とか人の多い懇親会などとても苦手で1人で黙々と何か作ったりしっぽりしてる方が好きと言う性格です。こんな僕でも経営者を10年続けられた3つのコツを今日はご話していきます。

1.対極を意識した環境づくり 

これまで10年経営をしてきた中で上手くいくことばかりではありませんでした。むしろ辛いことの方が多いのが会社経営だと思います。

対極を意識し振り子の原理を使う

弱みを補う人を側に置く

そういった辛い状況の中でもそれを乗り越えてこれたのは、僕個人の考えや意思決定に依存せず周りに異なる考えや意見を持った弱みを補う人を側に置くことを常に続けてきたからと言うのがあります。

よく共同創業したり初期メンバーを集める時に同じ価値観や性質を持った人で集まり起業するケースがあると思いますが、僕はあえて自分とは真逆の性質を持った人に関わってもらい自分では考えつかない意見や考えを常にフィードバックしてもらう環境を作ることを意識していました。

これは10年経った今でもそうなんですが、同質的な人材を採用する場合は必ず異なる性質の人材にも入ってもらえるよう意識しており特定の価値観や考えに会社の方針が偏らないようバランスを取っています。

結果的にこの考えは危機的な状況においては非常に有効な手段であり自分だけでは打破できない局面を突破する力になってくれます。
一方でデメリットもあり意見が簡単に折り合わない場面や自分の意思決定だけで物事が進まないといった状況も生まれます。

真逆の性質を経験し混ぜる

この対極的な仲間集めを意識していく中で、真逆の性質を経験し混ぜるということを意識することが多くなったのですが、この真逆の性質の応用は、実務においても発揮されています。

特に大きかったのはデザイナーとしての自分と、経営者としての自分を織り交ぜバランスを取る必要があったということです。
デザイナーから経営者の転換にあたり自分自身が手を動かして作りたいという葛藤が必ず存在します。

マネジメントするとデザイン実務が疎かになり組織規模の拡大と共にこの葛藤が高まっていきました。 自分の中で現場を離れることに対して、強い葛藤があり一度は手放せず組織としての成長を目指さない方針に留まっていました。

これも対極的な視点で、経営とデザインの両面を捉え織り交ぜる考えを持ち初めてからは、視野が広がり組織や事業をどのように構築していくかという観点に、デザイン的思考を織り交ぜながら自分流に経営をしてみることで自分自身のデザイナーとしての欲求をうまくバランスすることができるようになりました。
このように真逆にある性質を食わず嫌いせず、自分の中に取り込んでみる経験は経営をしていく中で非常に役立ちました。

振り子の原理

そして、これは人材育成においても有効な手段であると最近気づきはじめました。僕はこの現象を「振り子の原理」と名付けていますが、1つの性質に固執せず比較軸を持ちながら経験を積むことで個人の元々持っている性質から見える視点の中にある良し悪しで向き不向きを選ぶのではなく、外化された比較軸の中で自分自身がどのように力を発揮するかという観点を身につけることができます。

この振り子の原理を活かすため、rootではアサインされるプロジェクトが基本2つに別れており、事業フェーズや業種、アサインされるチームの違いなどをメンバーそれぞれが比較軸を持ちながら実践することで自己に閉じない視点を持ち比較を繰り返しながら成長することを促しています。

2.客観性を担保する

振り子の原理を活かしながら重要になってくるのが、自分自身を客観的に捉えられるかという点があります。

客観性を担保し鳥の目で捉える

強みである内省思考を活かす

経営者をしていると、常に自分本位に物事が動いていないか、注意を向けることがあります。

内向的な性質であるがゆえ、自分の中で内省する力が高く黙々と考えを整理したり棚卸しするのが好きなので、こういった時間をこまめに取りながら、自分自身の考えや思考パターンが偏っていないかを常に定点観測する習慣を取り入れるようにしています。

毎年11月が期初と言うこともあり、年末に入るまでの期間は自分の中で1年の振り返りと次の1年をどう過ごすかを会社・個人・家族の3つの視点で内省し棚卸しする時間を取るようにしています。

そしてこの内省思考は、自分の考えを棚卸しするのには非常に有効な手段なのですが、一方で弱点があり、それは自分に閉じて物事が整理されすぎてしまう性質を持っていることです。

考えていることを素直に話し意見をもらう

僕はこの整理した考えについて、常に客観的なフィードバックをくれる人を側に置いています。これは前述した対極的な性質の人を置くという考えに近いのですが、考えていることを素直に話し率直な意見をくれる人が側にいる状態を作ることで自分自身の考えが人にどう捉えられるか? また自分自身の考えに自信を持つきっかけを作る意味でフィードバックをもらう習慣を取り入れています。

一番のよき対話相手は妻であり、経営者としては珍しいですが会社の中で起こることや悩んでいることは、常に妻に話して客観的な意見をもらうようにしています。そうすることで自分の内向的な性質にブレーキをかけ自分1人で悩み抜かない状況を作れているのも大きなポイントです。

時間軸を意識し鳥の目と虫の目を行き来する

こういった客観性を担保する環境を整えていく中で、具体的な行動へ移す前に大事にしているのが時間軸を意識した整理を行うということを強く意識しています。

僕は内向的性質以外に、着想という性質を持っており発散的にアイデアを出しやすい性格です。思いついたらすぐ行動してしまう特性を持っているため、ここであえて、それを今やるべきかという問いを立てることがあります。

この着想の性質にはアイデアをすぐ形にしたり実行する強みがある一方で、思いつきで行動してしまう傾向があるため周囲の人を巻き込んでしまい迷惑をかけるという場面も多々あります。

こういった性質を客観的に捉え、時間軸を意識し今考えていること、思いついたことは、いつどのような時間軸の中で実行されることが最もインパクトがあるのか?を考える癖を付けました。
年末に整理を行う機会を取るのもこの時間軸を意識したプランニングを入れることで自分が今この瞬間に何に時間を使うべきかを見定める役割を果たしているとも言えます。

経営者は、常に先の未来を考え構想しているのでこの整理をしないと3年先でやりたいことを今動かすというような誤った判断をしてしまいがちなのも注意です。 よく言われる鳥の目と虫の目を行き来する習慣とも言えるのではないでしょうか。

3.持続するだけで競合がいなくなる

最後は持続です。これは元々それを意識していたわけではなく続けてきたことで気づいたものです。

持続性とはマラソンのような道のり

やると決めたことはすぐに諦めない

一般的に統計で出ているベンチャー企業の生存率は、5年で15%、10年で6.3%、20年後はたったの0.3%です。

これまで様々なスタートアップや新規事業の立ち上げを支援してきましたが、持続するスタートアップに必要な条件は、市場性成長性も当然必要ですが、それ以上に社長自身がその領域を本気でやり続けたいと思っているかにかかっていると思います。

僕はデザインの領域をビジネステーマとして選びましたが、創業当時は自社プロダクトの開発をしておりどちらかというとスタートアップとして事業を立てていく方針を掲げていました。
このビジネスに失敗し、残りキャッシュが1ヶ月を切るタイミングで事業方針を転換しデザイン会社としての道を歩みはじめたのがデザインファームとしての始まりです。

この時なぜデザイン会社の道を選んだかと言うと、自分自身が手掛けたプロダクトを通じて人が喜ぶ姿を見ることが楽しかったからです。それが自分自身の仕事に対するモチベーションでありこのモチベーションを持続することがビジネスを続ける上でも必要な要素だと気づきました。 

どんなに大きな市場で成長性があっても社長としてモチベーションのないものを10年、20年続けることはできないんですよね。
短期的なM&Aを考えての起業なら別ですが、僕は生涯通してデザインを続けてもいいと思える仕事に着けているので、本当に幸せなことだと思います。

こういった原体験もあり、事業戦略上も一度やると決めたことは可能性がある限りはそう簡単には辞めないということを意識しています。なぜならば多くの競合は長くは続かないのです。上述したように10年続ければ6.3%しか残りません。継続は力なりです。

メンタルダウンを避けるための自分の楽しみを作る

持続という考えでもう一つ重要になってくるのが、メンタルダウンを避けるための自分時間の確保です。
今思い返すと創業時は金銭的、物理的、精神的に辛い日々でした。
常に明日のお金のことを考え生活しなければならない環境で、取引先も少なく営業をかけないといけない中、安定しない自社サービスを立ち上げる。

自分のコントロールできる範疇にすべてのボールがない状況の中、自分自身が苦手な外交的アクションを常に取らないといけない状況はストレスフルでメンタルを疲弊させ常に不安な気持ちを抱えながら過ごす毎日でした。
こういった状況を経験したことから、自分自身が何によってストレスを解消できるのか? 何をすればメンタルを落ち着かせ安定させられるのか?ということに常に考えるようになりました。

結果的に、自分のメンタルコントロールをする術は、自分1人の時間を持つことが最も効果的があることがわかりました。1人で黙々と創作活動をしたり考えを整理したり、映画やドラマを鑑賞するなど、内向的な性質がモロに出ていますが、1人で過ごす時間こそが僕にとってはストレスを軽減しメンタルを安定させる1つの手段であることに気づきました。
 
これがわかってからは、家族にもその傾向があることを伝え自分時間を定期的に確保できるような環境整備を協力してもらいながらメンタルコントロールをすることができるようになりました。

仕事を長く続けることを前提と考えると、自分自身の心身を健康に保つことが最もコスパがよく持続生のある投資だと思います。自分自身の性質を認識しそれに応じたストレスマネジメントを行っていくことで自分自身、会社としてもパフォーマンスを最大化できるとベストですね。

最後に

創業から10年を迎え何者でもなかった自分がこうして経営者としてデザイン業界に向き合い続けてこれたのは、rootを通じて共に歩んで来てくれた仲間がいたからというのが大きいです。今でもメンバーにはよく言いますが僕は清掃のおじさんくらいの立ち位置で社長をやっていけたら理想です。そのくらいメンバーの力に頼って経営をしているのです。

世の中の社長のイメージとは対照的ですが、それが僕らしい経営であり僕にない力を補ってくれる仲間と共にデザインに向き合っていくことがrootとしての事業の成長、そこに関わる仲間の成長につながると信じています。

内向的な性格で、自分の夢や目標を実現することに臆病になっている方は、その思いを諦めずぜひチャレンジをしてみてください。かならず自分なりのやり方は見い出せます。
内向的な性質でも立ち振る舞うための方法がまとまった書籍もあるのでぜひご覧ください。

来年も会社の成長にあたって紆余曲折あると思いますが、また変化を楽しみ新しいことにもどんどん挑戦していきたいと思います。

さてroot Design Advent Calendar 2022も今日で終わりです。
まだまだ小さい組織ではありますが、個性豊かなメンバーそれぞれの視点から見たコンテンツが揃っていますので、ぜひ年末年始にお時間ある方はご覧いただけると嬉しいです。
来年もroot をよろしくお願いします!

今年はrootのブランドムービーも作成してみたのでぜひご覧ください。


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