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詩集『フタを開ける』 全作品

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2010年に刊行した詩集『フタを開ける』(書肆山田)の全作品を収めています。
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記事一覧

作品「踊る言葉」

踊る言葉          詩を書くには 静かな時間がほしい 静けさに誘われるように …

西尾勝彦
4か月前
6

作品「生まれて初めて」

生まれて初めて       四月 堤防へ上ると 黄色のおだやかな氾濫 河川敷に降りると …

西尾勝彦
4か月前
5

作品「光の作りかた(老詩人の話 其の一)」

光の作りかた(老詩人の話 其の一)      先月  出会った老詩人は 次のようなことを…

西尾勝彦
4か月前
3

作品「言の葉」

言の葉           大切な人が 言葉を拾っている姿を見かけたら 声をかけないで…

西尾勝彦
4か月前
5

作品「フタを開ける」

フタを開ける           二一世紀は、二〇世紀の残像に一つずつフタをしながら…

西尾勝彦
4か月前
5

作品「独り占め」

独り占め              家に帰ると 九歳の息子が とうちゃん四ツ葉のクローバ…

西尾勝彦
4か月前
3

作品「文字」

文字               土という文字を 眺めていると 怖くなる 上の部分「十」が 下の部分「一」に 突き立てられた 墓標に見えるからだ 土 土 土 土   土 土 土 土 土 土 土 土   土 土 土 土 こうやって たくさん並べてみると 墓地に見える 地面の下には いくつもの 死体が埋まっている そもそも 土は あらゆる生命の還る場所なので 無数の墓場でもあるのだ 実際に 墓標は見えないが 文字にすると それが現れる ひとつの文字が

作品「つかの間のこと」

つかの間のこと        森の風雨に耐えかねて 一枚の看板が すっかり茶色く錆び付…

西尾勝彦
4か月前
5

作品「木辻町再訪」

木辻町再訪        古い町並みが残る ならまち 西のはずれ 木辻町 六年前の夏 暑さ…

西尾勝彦
4か月前
6

作品「ひぐらしのうた」

ひぐらしのうた       ひぐらし 鳴いて 山響き ひぐらし 鳴いて 空開く ひぐらし …

西尾勝彦
4か月前
5

作品「青い夢」

青い夢           古いビルの 青く埃っぽい螺旋階段 そこを駆け上がっている夢…

西尾勝彦
4か月前
4

作品「待つ」

待つ             自分を 待つことが できるようになった 以前なら 未熟な自…

西尾勝彦
4か月前
10

作品「ロケット」

ロケット         発想を ぽーんと 飛ばしてみるといい と教えてくれた人がいた …

西尾勝彦
4か月前
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作品「人」

人                 大学には何も期待せずに入った。文学部だったので本を読んでいれば、それでいいと思っていた。人付き合いは、最小限にしていた。淋しかったが、それでも独りの方がよかった。他人のことは、よく分からなかったし、興味も持てなかった。何より、自分のことが、分からなかった。  ゆいいつ、アルバイト先で他大学の学生と友人になった。お互いのアパートを行き来し、一晩中、出口のない話をしていた。ある日、僕は、安ワインをしこたま飲んで、次の朝、友人のアパー