苔玉

日本人とホスピタリティ

テーマに合わせて日本人の美意識を表現する苔玉の画像です。懇意にしている職人さんから頂いたのですが、かわいいですね。丼っぽくもあり…。

さて、ホスピタリティというと舶来の文化のような気がしてしまいますが、
古来から日本人が持ち合わせている精神でもあるのです。

例えば我が国の古典文学に頻繁に登場する「情けは人の為ならず」という言葉は、ホスピタリティに内包される「平等性」や「主客同一」と通ずるものがありますし、ネガティブ発想ではありますが「自分がされて嫌な事は人にしてはいけない」という教えもホスピタリティと親和性の高い文化の一つです。

特にホスピタリティの重要なキーワードである「平等性」は、改元でスポットを浴びた万葉集からも読み取れる様に、日本文化の大きな特徴の一つでもあります。長くなるので詳細は控えますが、これほどまでに身分・性差ばかりか有機無機にいたるまでフラットな文化を持つ国は他に類をみません

更に「襖」「障子」という、まさかの紙素材で相互のプライバシーに配慮した空間を創り上げるという究極文化

そうなのです、実は日本人にとって大の得意分野な筈なのです、ホスピタリティ。何しろ生来の感覚なのですから。

にも関わらず、その精神性が充分に発揮されているとは言い難い現状は非常に悲しい事ですよね。戦後レジームの悪影響もあるのでしょうけれども、SNSで匿名の誹謗中傷ばかりしているような姿は、相互に快適な関係性の構築からほど遠く、本来の日本人が持つメンタリティからは考えられない行動に思えます。

ホスピタリティにおいても相手への配慮が「阿る」行為と誤解されるケースがある様ですが、日本人の特性である「慎ましさ」も同様に、控えめである事は弱さである事と誤認されている節があります。もちろん、引いてばかりで一方的な妥協が続くような関係は「相互満足」を形成できませんが、主張ばかりを続けるような利己的かつ下品なアプローチは論外です。

相手の立場や主張を慮りつつも、譲れないポイントは丁寧な対話によって理解を促し、確固たる意志を表現する。そうして構築した信頼関係の上にのみ成り立つのが価値創造や相互発展ではないでしょうか。
難しく思える交渉のシーンなどにも、備え持つ性質を活かしたホスピタリティ精神が適応できる事と思います。

上品でしなやかな芯のある強さは、相手を尊重した上で自分を成り立たせる「共創」関係を築く事のできる、世界に誇るべき日本人の「ホスピタリティ・コミュニケーション力」なのです。

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