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博士のアルバム 5話


 このところ雨が続いていた。先生は、窓から庭を眺め時々ため息をついていた。前よりため息の数が多くなったきがする。愚直一つこぼさず現実を受け入れようとしている。私は、そんな先生を強い人だと思った。

 庭のあじさいが雨粒を弾く。それがきれいだった。
 先生は、歩く練習をしなくなった。あれだけ歩きたいと言っていたのに、まるでやる気がなくなっていた。

「研究チームから外れたよ」
先生がぼそりと言った。
「そうなんですか」
「もう頭も回らない。僕は壊れたハードディスクだ。入れ替えが効くんだったらいいけどな」
かける言葉が思い浮かばなかった。
先生は、ずっと我慢していたんだ。
人間は、コンピューターのように替えがきかない。そして儚くてもろい。涙が溢れそうになるのをぐっと堪えた。



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