きみと、波にのれたら

映画を観るかどうか決める大きな要素に「監督名」がある。

たとえば「新海誠」なら公開初日に映画館で観るし、「細田守」ならもう観ない(時かけとサマーウォーズは除外)、といったように。

その基準で考えると「湯浅政明」という名前は「観る」一択になる。

他にも映画を観るかどうか決める要素に「キャスト名」と「主題歌のアーティスト名」がある。

たとえばキャスト名の下に「アイドルのグループ名」が出てきたら「観ない」となるし、「主題歌のアーティスト名がアイドル」でも「観ない」となる。

その基準で考えると、「男キャストはGenereations」で「GENERATIONS」が主題歌だと「観ない」一択になる。

てわけで、大きなプラスとそこそこのマイナス要素があって総合的にはマイナスだったので、しばらーく観てなかったわけです。『きみと、波にのれたら』はね。


予告編はこちら。

キラキラしすぎやろうがい!!! 実写でやれ!!!!

はい、これが私の予告編を見た印象でした(気になっていたので予告編は何度か見た。映画館でも見た気がする)。

イケメンと主人公が付き合って? イケメン死んで? でも出てきて?

ええい! 実写でやれ!!! そういうのはアニメ観る層は求めてないだろ!! きっと!!

(と、思ったけど、女子向けの恋愛アニメーション映画もあるか。告白実行委員会とか、ORANGEとか)

そんなんなのに、なんで観たかというと、「たまたまPrimeVideoのTopに出てきた」、「機嫌が良かったので今なら大丈夫だろうという謎の自信」、「ストレートな男女の純愛映画も観れるようになったこと」の合わせ技1本でした。

ちなみに男女映画については、『きみの瞳が問いかけている』に克服させていただきました(映画自体はよかったけどnoteに書くつもりはないです)。



さて、タイトルを戻して。

いや~正直、イケメンが死ぬまでの展開、しんどかった、とても個人的に。

イケメン大学生ってこんなデートしてたんやな、ふ~ん。はぁ。

正直、イケメンが死ぬ展開を知らなかったら序盤で切ってましたね、つらくて。死ぬ展開が来たときはガッツポーズしましたね。だって死なないとこの作品始まらないし! ね! 舞台装置として、ね! しょうがないからね~

というわけで、イケメンはイケメンらしく人を助けようとして死にます。ありがとう、君の死はこの映画世界には不可欠でした、敬礼。

そのあとはことあるごとにイケメンは水×歌の力で召喚されます。ええい、主題歌を何度も作中で歌いやがって! 事務所の力か!

お気づきの通り、もうこのへんから穿った観方をしてました。典型的陰キャによる陽キャ向けストーリーに対する僻みが始まります。ストーリーはつつがなく進行し、イケメンはイケメンらしく死後も随所で主人公を助け、主人公はイケメンの後輩に告白されたりします。

きちんとラブストーリーでした。「マインド・ゲーム」の監督だから! と変な期待をしていましたが、きれいなストーリー進行でしたねぇ…


この映画はやっぱり、水の描写がキーでして。水が重たい。

質量と意思をもって人を運んだり火を消したりする。もはや脅威だな…と思いながら観ていた。

ぷるんとしたり、形をもったりするのはバケモノのできることだろ…と思った。とてもきれいなんだけどね。思ったよりSFファンタジー寄りなんですよねぇ、この映画。

あと、水×既視感ある組み合わせだと思ったけど、これセイレーンだ…

歌声によって人を魅了し、座礁させて遭難させたりする、人を喰う海の怪物…ちょっと考えすぎですかね。出てくるせいで(出すせいかもしれないけど)、主人公はいつまでたっても死者に囚われてしまうから、十分怪物並みの悪いことしてると思うんだよな。


そんな感じで、幸せや世界の観方や死生観について考えさせられた作品でした。

ちなみに予告編でも流れる主人公が泣くシーン、本編ではとてもいいタイミングで来ます。監督と脚本の方の優しさ、といってもいいんじゃないかなぁ(脚本は『若おかみは小学生!』と同じ、吉田玲子)。


あと、こんな陽キャ向けのきれいなストーリーに対してnoteでセイレーンの話をぶつようとする自分の根性とも向き合わされました、結果的に。

でもしょうがないので、こうしてたまに自分と向き合うのです。水辺で歌っても美女は来ず、動く自分の顔が映るだけの世界なので。

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