見出し画像

文書を刑事裁判の証拠とするための要素(2)ー形式面ー

刑事裁判で文書を証拠とするためには、民事裁判とは異なり、伝聞例外に該当する条件を満たしていなければ、そもそも証拠能力がありません。これは前回の記事で確認したとおりです。

今回は、この条件を満たしたうえで、その証拠の価値、信用性を高めるためにはどのような形式を備えておく必要があるのか考えてみます。

民事裁判とは異なり、刑事裁判においては書証提出の際の細かな条件は法定されていませんが、刑事訴訟規則188条の2第2項に、「証拠書類その他の書面の取調を請求するときは、その標目を記載した書面を差し出さなければならない。」と定められています。この標目を記載した書面は、実務では証拠等関係カードと呼ばれ、審理が行われやすいよう、以下のように書式化されています。

証拠等関係カード(被告人1名用書式)

ここにあるように、証拠の標目は通常、その書面の標題、作成者、作成年月日で特定されますので、これらを明記しておくとよいです。
また、立証趣旨を明記しやすいように、この文書ではどのようなことを書いているか、要約をはじめに記載しておくと提出する検察官・弁護人に親切だといえます。

証拠として提出するための文書の形式は以上のとおりですが、刑事裁判の証拠とするためには、その形式と同じくらい、作成の時期が重要です。刑事訴訟法299条1項では、「証拠書類又は証拠物の取調を請求するについては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。」と記載されています。
実務上は、公判期日の1週間前には、相手方検察官又は弁護人に提出予定の証拠を開示することになっています。相手方が同意するか否かは伝聞例外として証拠能力を有するか否か重要なポイントですので、この作成時期は厳守しなければなりません。

刑事裁判に証拠とするための文書を作成するために、今回確認したような点にご注意ください。

以上3回にわたって、民事裁判・刑事裁判で文書を証拠として提出する際の一般的な注意点をみてきました。これを前提にして、今後車載データを証拠として使用するためにどのような注意が必要なのか、データの性質に応じて考えていこうと思いますので、そちらもぜひご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?