ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊲アルゴー(ほ座・りゅうこつ座・とも座・らしんばん座)
アルゴー
・ピンダロス:オリュンピアー競技会などの祝勝歌などで有名な詩人。ここで言われている作品はどうやら現存していないようです。
・マグネーシアーのデーメートリアス:マグネーシアーはテッサリアー地方にあった土地。この土地に名前を与えたマグネースについては「ペルセウス」の回参照。後述のパガサイという場所は円形の湾に面した港なのですが、その近くにあった都市。
・アポッローン・アクティオス:アクティオンはアポッローン崇拝が盛んであった場所の名前。アクティオンは、パガサイから見るとギリシャ本土を挟んでほぼ真逆に位置していますので、この場所がアクティオンであったわけではないです。
・パガサイ:実際にズバリこの語形で「組み上げる」という意味になるわけではないようです。ギリシャ語pēgnȳmi(組み上げる)のアオリスト分詞の女性複数形という形がパゲイサイpageisaiとなるようですが、たしかにまあ似てますのでそう考えられたのでしょう。本当は関係ない民間語源なのか、実際にこのpēgnȳmiから来ているのか(だとしてもこのアルゴーの話以外が由来かも…)は調べても分からなかったのですが、地名の由来ってだいたいこんな感じでボヤッとしてることが多いのでご容赦ください。
・物を言う材木:この木はアテーナーが手ずから切ってきた例のドードーネーの樫の木だったとされ、予言を話すという便利機能付きだったそうですが、この機能が活用されたという話は全然聞かないですね…。
・この星座は船尾から帆までの…:『カタステリズモイ』においてはこのことは「航海をする者たちがこれを見てその仕事に勇気を持つように、また、神々のところにあるこの船の不朽の栄誉が残り続けるためである。」(拙訳からの引用)と書いてあり、なんだか分かったような分かんないような記述ですが、ヒュギーヌスの書き方は分かりやすいですね。とはいえ、半分くらいしか残ってないってもう半壊どころか船としては用をなさないレベルじゃねえの!?と思いますが。ここからどう希望を持てと…?いや、たしかにアルゴーは旅の途中でシュンプレーガデスという動く岩に挟まれて船尾の一部が欠けてしまったことはあるのですが、こんなに派手には壊れてない!
アルゴーとは、英雄イアーソーンが黄金の羊の毛皮(「牡羊」参照)を求めて冒険を行ったときに乗っていた船で、ギリシャ中の英雄たちがそこに集まり乗っていたというスーパーギリシャ神話大戦的なお話なのですが、ここではそのことには全く触れられていないというまさかの展開!いや、まあ、有名だしみんな知ってるよね?的な感じなのかもしれないですけど、もうちょっと…こう…さあ!
ちなみにこのアルゴー、星座としてはあまりにデカすぎて取り回しがよくないので、現在はほ座・とも座・りゅうこつ座・らしんばん座に分割されているのですが、「エーリダノス」の回でちょっと触れたカノーポスはりゅうこつ座α星なので、本来ならこの項目で説明すべきだと思うんですよね。『カタステリズモイ』にしてもなぜか「エーリダノス」の回に回していますが。
神話の登場人物としてのカノーポスは、先述したギリシャ中から集まってこの船に乗った英雄たちの一人でもあり、この船の操舵手を務めたことから星になったという話もあることですし…。
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