丹取惣吉

古典語とか神話とかが好きです。noteはガチ初心者なので何か失礼がありましたらすみませ…

丹取惣吉

古典語とか神話とかが好きです。noteはガチ初心者なので何か失礼がありましたらすみません。 ほめぱげ:http://nitrosooxy.html.xdomain.jp/(※工事中) なろう:http://ncode.syosetu.com/n0134hx/

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  • ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳

    星座の神話について説明したガーイウス・ユーリウス・ヒュギーヌス著『天文学について(De Astronomia)』のラテン語原文からの翻訳です。 拙訳『カタステリズモイ』と併せてどうぞ。 (※第2巻のみなのは星座の神話について書かれているのがこの巻のみだからです。詳細は「はじめに」をご覧ください。)

  • エラトステネース『カタステリズモイ』翻訳

    エラトステネース『カタステリズモイ』の翻訳です。星座のギリシャ神話です。訳者による注釈がうるさいです。

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ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳(おわりに)

 くぅ~疲れましたw(※2回目)というわけで、前回翻訳した『カタステリズモイ』と併せまして、「星座とギリシャ神話」というテーマにおいて重要な文献2つの和訳を出揃えさせることができました。拙訳が星座の神話について調べる人にとって何かしらの参考になりましたら幸いです。  とはいえ、『カタステリズモイ』『天文学について』を参考に書かれた星座の解説は、今までも数多に上ると思いますので、別に翻訳がなくても間接的にその情報に触れられてはいたとも言えるのですが…。  だとしてもやは

    • ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊸乳の輪(天の川)

      乳の輪・乳の輪:天の川のこと。なお、今回もタイトルが付けられていないのですが、やはり勝手に本文や『カタステリズモイ』を参考に、便宜上「乳の輪」とのタイトルを付けさせていただきました。なお、「乳の輪」というように「輪」と表現されているのは、星空を天球として考えたとき、天球を取り巻く帯状の輪のように見えることから。ちなみにギリシャ語では「乳の」に相当する単語はガラクシアースgalaxiāsという語で表現されていて、これは英語galaxyの語源となって云々…という話は拙訳『カタステ

      • ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊷5つの星々(惑星)

        5つの星々・5つの星々:今回は番外編のような扱いで、タイトルは付けられていません。ですが、便宜的に「5つの星々」というタイトルを勝手に付けさせていただきました。これは本文の記述および『カタステリズモイ』での項目名を参考にしたもので、5つの星々とは言うまでもなく木星・土星・火星・金星・水星の5惑星のことです。 ・プラネーテース:言うまでもなく英語planetの語源。「さまよう」というのは、地球から見た惑星の軌道がぐちゃぐちゃなことから。日本語の訳語の「惑星」の「惑」もそれを

        • ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊶魚(みなみのうお座)

          魚・魚:この星座の項目名は単数形の「魚」なわけですが、うお座の方は2匹いて複数形になっているので、「魚たち」と訳し分けました。「魚たち」の回も参照。 ・「南の魚」と呼ばれている:この星座は現在ではみなみのうお座と呼ばれていますが、この当時からそう呼ばれていたとは!てっきり近代になって便宜的に名付けられたのかと…。だって、同じみなみのなんとかシリーズは、みなみじゅうじ座(学名としてはCruxなのでただのじゅうじ座でいいのに…。)、みなみのかんむり座(ただのかんむり座は学名C

        ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳(おわりに)

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        • ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳
          43本
        • エラトステネース『カタステリズモイ』翻訳
          46本

        記事

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊵水蛇(うみへび座・からす座・コップ座)

          水蛇・「鴉」が止まり「杯」が置かれている…:この「水蛇」とは現在で言ううみへび座のこと(海にいないのでうみへび座という訳は問題ありだとは思いますが…)。そして「鴉」はからす座、「杯」はコップ座のこと。この3つの星座は位置が近いので、『カタステリズモイ』でもそうでしたが、まとめて説明されているようです。にしても、項目名は「水蛇」となっているのに水蛇の話はほとんどされてない…! ・鴉は水を飲むことができないように…:『カタステリズモイ』でも罰として鴉は水を飲めなくなったという

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊵水蛇(うみへび座・からす座・コップ座)

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊴祭壇(さいだん座)

          祭壇・ティーターンに戦いを…:ここでいう神々とはゼウスらのことであると思われます。ゼウスらは親世代の神々であるティーターンたちと戦い覇権を奪いました。キュクロープスは『オデュッセイア』では野蛮な人食い一つ目巨人とされていますが、ゼウスらの協力者であったキュクロープスは鍛冶の神で、ここで言われている祭壇だけではなく、ゼウスの雷、ハーイデースの兜(「ペルセウス」の回参照)、ポセイドーンの三叉の槍なども彼らの作品とされます。  『カタステリズモイ』では神々が誓いを行った祭壇という

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊴祭壇(さいだん座)

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊳ケンタウロス(ケンタウルス座)

          ケンタウロス・ピリュラー:大洋の神オーケアノスの娘。クロノスの浮気相手で、クロノスは浮気を隠すために彼女を馬に変身させて(あるいは、馬になって逃げようとした彼女に対してクロノスも馬になって)交わった結果、半人半馬のケイローンが生まれたということです。なお、ケンタウロス族はイクシーオーンと雲でできたヘーラーのコピーの間に生まれたことになっていますが(「膝をつく者」参照)、ケイローンはそれとは別に生まれたということですね。ケンタウロスは野蛮な種族とされていますが、同じケンタウロス

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊳ケンタウロス(ケンタウルス座)

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊲アルゴー(ほ座・りゅうこつ座・とも座・らしんばん座)

          アルゴー・ピンダロス:オリュンピアー競技会などの祝勝歌などで有名な詩人。ここで言われている作品はどうやら現存していないようです。 ・マグネーシアーのデーメートリアス:マグネーシアーはテッサリアー地方にあった土地。この土地に名前を与えたマグネースについては「ペルセウス」の回参照。後述のパガサイという場所は円形の湾に面した港なのですが、その近くにあった都市。 ・アポッローン・アクティオス:アクティオンはアポッローン崇拝が盛んであった場所の名前。アクティオンは、パガサイから

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊲アルゴー(ほ座・りゅうこつ座・とも座・らしんばん座)

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊱犬の前にいる者(こいぬ座)

          犬の前にいる者・犬の前にいる者:原文ではギリシャ語プロキュオーンProcyōnとなっており、これはこいぬ座α星プロキオンの語源になっています。詳しくは拙訳『カタステリズモイ』参照。  こいぬ座に関しては急に雑すぎる解説!おおいぬ座と同じですよ、というだけで済ませるというなんとも横着すぎる記述…。  いやいや、「熊の番人」の回でイーカリオスの飼い犬マイラはこいぬ座って言ってたでしょ!?その話すればいいじゃん!  でも、「犬」の回ではうっかりしていたのかなんなのか、ヒュ

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㊱犬の前にいる者(こいぬ座)

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉟犬(おおいぬ座)

          犬・犬:単に「犬(Canis)」と呼ばれていますが、この星座は現在ではおおいぬ座(Canis Mājor)と呼ばれるものです。後述する「犬の前にいる者」がこいぬ座(Canis Minor)となったため現在ではこのような呼ばれ方になったというわけです(Mājorは「大きい方の」、Minorは「小さい方の」の意)。 ・エウローペーの守護者に…:この辺りの話は『カタステリズモイ』と共通ですのでそちらをご覧ください。ミーノースの病とは、妻以外と寝ると精液が毒蛇や蠍に変じるというも

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉟犬(おおいぬ座)

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉞オーリーオーン(オリオン座)

          オーリーオーン・ポセイドーンの息子であり…:オーリーオーンの出自については『カタステリズモイ』と同じですのでやはり拙訳をどうぞ。彼の母エウリュアレーはゴルゴーンの一人と同名ですが別人です。念のため。 ・イーピクロス:俊足で有名な人物で、アルゴー(「アルゴー」参照)の乗組員ともなりました。本文にもあるように麦畑の上を走っても穂を傷めることはなかったとされますが、もうそれは足が速いとかいうレベルの話じゃなくてなんかマジカルな力とかが働いていたのでは…?と思わないでもないです。

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉞オーリーオーン(オリオン座)

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉝兎(うさぎ座)

          兎・兎は子供を産んでも…:『カタステリズモイ』では哲学者アリストテレースがこの話をしているという記述があり、実際アリストテレースの著作にそうした記述が見られます。ただし、本文にあるように実際に兎は何回かに分けて出産を行うことができるというわけではないようです(兎は出産後すぐに妊娠可能になるので、連続して出産を行っているように見えたため?)。 ・オーリーオーンは「牡牛」と戦っている…:オリオン座はたしかにおうし座と隣り合っているのでこうした見方は自然といえば自然なんですが、

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          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉜エーリダノス(エリダヌス座)

          エーリダノス・エーリダノス:項目名はエーリダノスとなっているのに本文にはエーリダノスの話は全く出てこないという理不尽…。なお、エーリダノス川とは、太陽神ヘーリオスの息子パエトーンが落ちた川。「惑星」の回も参照。 ・オーケアノス:原初から存在する大河およびそれを擬人化した神(「大熊」参照)。英語oceanの語源だけあって、川というよりも世界を取り巻く大洋のようなイメージで、大地を円盤だと捉えていた世界観では円周上を取り巻いていると考えられていたようです。なので、ここにあるよ

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          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉛ケートス(くじら座)

          ケートス・ケートス:この星座は現在は日本語では「くじら座」と訳されているものです。英語など他の言語でもクジラの星座だと言われることがそれなりにあり、またくじら座の学名であるラテン語Cētusおよびその元になったギリシャ語kētos自体も、クジラを指すために使われることもある単語なので、完全に誤訳というわけではないのですが、元になった神話ではクジラとは明らかに異なる海の怪物のことを指しているため、そのままギリシャ語の「ケートス」としました。この辺の事情はやはり『カタステリズモイ

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉛ケートス(くじら座)

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉚魚たち(うお座)

          魚たち・魚たち:魚「たち」と複数形になっているのは本文にあるように、この星座がアプロディーテーとエロースが変身した2匹の魚だからです。ちなみに現在のうお座の学名piscēsも実は複数形なんです。それと、わざわざ複数形にしたのは後で「魚」(みなみのうお座)の項目があり、そちらは単数形だから区別するためです。この辺りの事情は『カタステリズモイ』と同じですので例によって拙訳参照。 ・エリュトライアーのディオグネートス:この人に関しては調べが足りず詳細なことは分からなかったのです

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉚魚たち(うお座)

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉙水を注ぐ者(みずがめ座)

          水を注ぐ者・水を注ぐ者:原語はaquāriusで、原義としては「水に関するもの、こと」という広い意味を表しますが、人のことを指す場合、水汲み奴隷を指す用例もあるようです。一方、ギリシャ語ではこの星座はヒュドロコオスhydrokhoosと呼ばれ、これは「水を注ぐ者」という意味なので、こちらに訳語を合わせました。aquāriusには「注ぐ」という意味までは含んでいないのですが、まあ、この星座は水甕から水を注いでいる姿に見立てられているわけですし、「水汲み奴隷」という訳語がOKなら

          ヒュギーヌス『天文学について』(第2巻)翻訳㉙水を注ぐ者(みずがめ座)