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忘れ物

鼻の奥のほうが少ししっとりするのがわかった。
肌の毛が少し立ち上がる。
普段から癖のある私の髪はカールが少しだけつよくなる。ついでに少し頭がいたい。
「これは早めに帰らなければ」
無造作に机の中の教科書やノートをカバンに詰めて昇降口に向かう。
階段は一段とばし。職員室のかどで上履きがスリップしそうになる。
下履に履き替えて外に出たときにむわっとした空気が体にまとわりついた。

土の匂い、草の匂い。
西の空が薄墨色から鼠色にかわる。
名前は知らないがあの山のてっぺんにかかる雲が真っ黒になったら3分後には降る。
ふだんなら家まで徒歩5分。
走ればギリギリか。

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