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『テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ』@中之島美術館

新年早々に行った展覧会で感想を書こう書こうと思っている内に会期まで終わってしまったのですが、記録のためにも当時のメモを見ながら感想を書いてみようと思います。

こちらの展覧会は現代アート以外はほぼ撮影OKな展覧会でした。
ですのでその時撮影した写真とともに振り返ってみようと思います。

全体的な感想

これはまったくの私側の落ち度なのですが、「テート美術館」「光」と見て、勝手にターナーの作品がたくさん来るのかなとワクワクしてしまっていたので、正直なところちょっと肩透かしでした。
よく見たら「現代へ」とタイトルに入っているのに、現代アートの心の準備ができていない身としては、もっと絵画を見たかったなという感想を抱いてしまったのでした(現代アートより絵画が好きというのが大きいのですが)。

なんとなく「テート・ブリテン」から来ると思ってしまっていた、会場に入ってしばらくして「テート・モダン」も含まれた展覧会なのか…と気付くしまつ。

心の準備ができていないせいもありますが、現代アートまでを「光」というテーマで見ていくとしても、ちょっと弱いテーマだったかな…と思ってしまいました。
正直アートにおいて「光」というのは、ありきたりなテーマであるので新鮮味が少ないですし、なんでも光に結び付けられてしまうので、もう少し光の何かに絞ったテーマにした方が良かったのではないかなと思ってしまいました。

と文句ばかりから始めてしまいましたが、好きな作品も見つけられたので、その中から印象的だったものを挙げます。

印象的だった作品

BEST

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《湖に沈む夕日》c1840 油彩/カンヴァス

ターナーを楽しみに行ったので、やはりターナーの作品が一番印象的でした。
昔はターナーのもあもあっとした作品の何がいいのかさっぱり分からなかったのですが、年を経るにつれてだんだんと好きになった画家です。
印象派よりも印象を描いた感の強い絵でありながら、計算されて色を構成しているようにも見えてきます。何よりも単純に色がすごく好きです。

あと、ターナーの作品こそ本物を見るべき作品だよなと、毎回本物を見る度に感じています。
この繊細な色の具合は印刷では出しきれないし、テクスチャが本当になんとも言えない!

こちらはちょっと斜めから一部を近くから撮った写真なのですが、絵具で凹凸をつけつつ、その上から油でよく溶かした絵具をかけているっぽいのがうかがえます。
ピンクや薄いブルーグレーの下にあるクリーム色の凹凸のうち、凸部分下から浮かび上がっているのが見えますでしょうか?
これが、遠くから見ると雲がきらきらしているように見える効果を出していました。
こういうテクスチャの面白さや、色んな角度から見ると違う表情に見えてくる面白さなど、やはり本物を見るから分かることだよなーと思ったのでした。
本物を見れる贅沢を味わわせてくれる一枚でした。

その他印象的だった作品

ジョン・マーティン《ポンペイとヘルクラネウムの崩壊》1822, 2011修復 油彩/カンヴァス

ターナーの次の部屋に展示されていたこちらの作品。
色が突然ビビッドだし、なんだかSF小説の表紙っぽいくて最近の作品のように見えたのですが、なんなら先ほどのターナーの作品より前。

なかなかサイズも大きく、衝撃という意味で印象的であったのもそうなのですが、この作品、左下によって見ると絵の中の人みたいにポンペイの噴火が臨めて、そういう意味でも面白い作品でした。
光と陰で奥行きをダイナミックにつけていて、噴火がまばゆいばかりの明るさなので、絵の中の人たちと一緒に衝撃を受けられるという、没入感を体験できる作品でした。

ウィリアム・ホルマン・ハント《無垢なる幼児たちの勝利》1883-84 油彩/カンヴァス

こちらはあまりいい意味ではなく印象的だった作品。
ラファエル前派の作品は好きな部類に入るのですが、ハントの作品はどうしても好きになれない…
この作品も見た途端に「うわ…ハントだよ…」とうめき声をあげてしまいそうになってしまいました。

なんでしょう…ちょっと見るだけでお腹いっぱいな気分になる作品。
子ども達がいっぱいで可愛い作品になりそうなポテンシャルがあるのに、逆に「怖いよ…」となってしまう作品。
色彩も描きこみも、キャンバスのすみからすみまで全力投球な感じが「ううぅ…」となってしまうのでしょうか。

左上の赤ちゃんのマッチョ具合を見た時には、「もうハントったら!」って心の中でツッコミを入れてしまいました。
ここまでくると、逆に気になってしょうがなくなってしまうので、最終的にはハントの勝ちのような気がしてきます。

ジョン・ブレット《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》1871 油彩/カンヴァス

あまりに人気すぎて、真正面から撮れなかったのでちょっと斜めから…
人気なのは当然でしょと思うくらい、目の前がぱーーーーっと開けた感覚になる晴れやかな作品でした。
展覧会のチラシにもなっている作品です。

とても分かりやすく見ごたえのある絵で、美しい色彩に、本当に細かく丁寧に描かれている描写が持つ力に圧倒されます。
「すごい!」という感想以外思いつかない作品なのですが、海を見た時に感じる解放感と美しさに圧倒される感覚を、カンヴァスに再現できてる画力にただただ脱帽です。

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー《ペールオレンジと緑の黄昏―バルバライソ》 1866 油彩/カンヴァス

圧倒的な美のジョン・ブレットの作品と同じ並びになると埋もれてしまいそうになる、小さくて彩度低めのホイッスラーの作品。
でもホイッスラー大好きなんですよ。この作品も小さな作品とはいえツボだった…

厚ぼったい絵具で粗いタッチで、穏やかな雰囲気が伝わってくるこの作品。
このタッチのおかげで夜がどんどん覆いかぶさってくるような、黄昏の雰囲気も出ている気がします。
すんだ色合いの中で、遠くの夕陽の紫っぽいピンク色、手前の空の水色や海の青緑色がきれいに輝いていて、この微妙な色の重なり具合がツボで仕方ないんです。
やっぱり好きだわ、ホイッスラー


オラファ―・エリアソン《星くずの素粒子》 2014 ステンレス・スチール、半透明のミラー、ワイヤー、モーター、スポットライト

最後は現代アートから。

くるくる回っているので、ミラーボールっぽいといえばミラーボールっぽいのですが、どことなく神秘的な美しさを感じたのは、反射する光の形がくっきりした多角形で、星のかけら感を感じたからでしょうか。
「星くず」とありますが、なんとなく地球など、宇宙に浮かぶ星の印象を受けました。

ずっと眺めていると、なんだか落ち着いた気分になってきて、瞑想しているみたいでした。
現代アートはよく分からないな…で終わってしまうことが多く、あまり得意としていないのですが、こちらはシンプルに美しさや穏やかさを堪能できて好きな作品の1つとなりました。

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