にざえもん

教育(国語を中心)に関心あり。3人の男の子たちの父親。 年齢的な人生の折り返し地点をむ…

にざえもん

教育(国語を中心)に関心あり。3人の男の子たちの父親。 年齢的な人生の折り返し地点をむかえ、いろいろ悩み中。

最近の記事

2023/3/2 仕事選びと情熱

『科学的な適職』(鈴木祐 2019.12)という本を読む。今の職場にそれほどの不満はなく、今のところ転職するという可能性も薄い。だが読んでみて、職場づくりや学生の仕事選び、キャリア教育にとても役に立つ実践的な知識を得ることができた。  本書の中では、「職業選択にありがちな7つの大罪」を挙げている。その一つ目が「好きを仕事にする」というものだ。これは職場を見回しても納得できる。教師という仕事は、生徒との関わりがメインだが、そこが好きだからという動機でこの仕事に就くと、無駄に時間

    • 2023/2/17 『剣客商売』を読み返す

       池波正太郎の『剣客商売』シリーズを読み直している。なにか特別に問題があるわけではないけど、やる気が低下しているときに手を出す本だ。三島由紀夫『葉隠入門』などもこの部類に入る。他人に優しくする余裕がなくなってしまったときは宮沢賢治を読み、少し息を抜きたいときは夏目漱石を読む。  『剣客商売』には大学生のときに出合った。大学図書館の1階、文庫本の棚にずらりと並んでいた。学術書がずらりと並んだ棚から逃避するように、帰り際に文庫本を物色する。当時、藤田まこと主演の時代劇ドラマをや

      • 2023/2/16 子どもの貧困を考える

        貧困について生徒(中1)に考えてもらっている。太宰治の「魚服記」と、柳田国男の「山の人生」冒頭を読んで、なんだか戦前の話とは思えず、現在の貧困問題にそのままつながる気がしたからだ。もちろん作品に出てくる「炭焼き」という仕事は今ではもうほとんどないのだろうと思うが、働いても働いても生活が向上しない仕事ならいくらでも見つかる。 日本が抱える貧困問題は、相対的貧困といわれるものが多く、貧困といってすぐにイメージする絶対的貧困とは違う。阿部彩の説明が分かりやすい。    第二次

        • 2023/1/16 受験シーズンに考える

          藤沢数希『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書)と、齋藤孝・西村則康『なぜ受験勉強は人生に役立つのか』(祥伝社新書)を読んだ。語られる教育内容に関しては共通点が多いように思ったが、得られるものが違った印象がある。 『なぜ受験勉強は人生に役立つのか』は、受験(ここでは中学受験)が人生に役立つことが前提で話が進められ、受験勉強によってさまざまな力が涵養されるという書名そのままの主張であった。書名にある「なぜ」の部分には明確な答えは与えられず、「受験勉強によって鍛えられるから」と

        2023/3/2 仕事選びと情熱

          2022/12/7 『竹取物語』あなたは「不死の薬」を飲むか?

          中学1年で『竹取物語』を扱う。よく知られたかぐや姫の物語だが、最後の場面でかぐや姫は「不死の薬」を残して月に還っていく。不死の薬があったら、自分ならどうするか?という質問をこの作品を扱うたびにしているが、以前に比べて、「限られた人生だからこそ、おもしろい。自分なら飲まない」という意見が増えたように思う。反対に「飲む」と答える生徒は一人か二人になってしまった。  答えとしては美しいし、現実に不死の薬は存在しない以上、そういった有限の人生のなかで精一杯生きていこうという気持ちは

          2022/12/7 『竹取物語』あなたは「不死の薬」を飲むか?

          2022/11/25 ノラネコを見かけて

          ノラネコを見かけた。子どもたちは「こっちおいで〜」なんて言っているが、こっちに来たらどうするつもりなのだろう。私はエサをあげるわけでもないし、保健所に連絡をするわけでもない、ズルい大人だ。子どもたちはノラネコを見たら、なんとかしようとする。飼おうとするか、それができなければエサをやろうとする。保健所に連絡をするという選択肢はない。  「ノラネコってどのくらいいるの?」と子どもに聞かれ、分からなかったので調べる。 2020年の環境省のデータだが、保健所に引き取られた犬猫は、

          2022/11/25 ノラネコを見かけて

          2022/11/9 弔意

          お世話になった先生が亡くなった。今年の夏、長寿のお祝いでささやかな集まりをしたばかりである。長い闘病生活とコロナの影響で、お祝い自体やっと開催したもので、大々的に告知したものではなかったそうだが、そのときは予想よりたくさんの人が集まった。そこにいる人みんな、この先生にお世話になったんだなあと思って、その一員でいることがうれしかった。お世話になったといっても、私は特別何かしてもらったわけではない。ちょっと声をかけてもらったり、長男を抱っこしてもらったり、思い出そうとしても、に

          2022/11/9 弔意

          2022/11/8 「変」を生み出すもの

          先日、六歳の息子が電車の中で、変なおじさんと仲良くなったという話を、妻から聞いた。 妻と息子が出かけた帰りに、電車の中でだれにともなく話している男性に会ったそうだ。その男性は、世間話のようなものや、食品の安全性についてや、政治批判のようなものまで、近くにいる不特定多数の人に語りかけている。周りの乗客はかかわることを避け、男性の周りに空間が広がっていく。妻も、息子を少し遠ざけようとしたそうだが、熱心に聞いているため、しだいに男性は息子に対して語りかけるようになったそうだ。ま

          2022/11/8 「変」を生み出すもの

          2022/11/7 経済学にちょっと興味がわく

          田中久稔『大学の人気講義でよく分かる「ミクロ経済学」超入門』を読んだ。超入門というだけあって、ど素人の私にもよく分かったし、楽しく読むことができた。そもそもミクロとマクロという言葉を聞いたことはあっても、その違いさえよくは分かっていなかった私が、それがおぼろげにでも分かったということは大きな収穫だ。 そして、高校のときに苦労して、挫折し、逃げ出した経験のある「微分」が、ここで活躍していたんだなぁと、古い友達に会ったような気持ちになる。高校のときに会ったときは、とっつきに

          2022/11/7 経済学にちょっと興味がわく

          2022/11/1 文化資本は図書館で

          よく地元の図書館に行く。目的の大部分は子どもたちの絵本を借りにいくためだが、時間があれば雑誌をながめることもある。文芸や経済雑誌の目次をさらって、芸術雑誌の写真を眺め、トレーニング系の雑誌をパラパラするだけだが、とても満ち足りた時間を得られる。 社会学者ピエール・ブルデューは「文化資本」という概念を提唱したが、この文化資本を形成するのに図書館というのはうってつけの場所ではないかと思う。(もちろん私に文化資本が備わっているという意味ではない。)ただ、図書館にたどりつくまでに文

          2022/11/1 文化資本は図書館で

          2022/10/31 マニュアルに人間味を加えることは可能か

          今村夏子の『とんこつQ&A』(講談社)を読む。この作品には、文章を読むことはできるが、自分で考えてその場に応じた受け答えができない人物が登場する。マニュアル人間の極致のような人間だが、作品内ではそのマニュアルを通して幸せな疑似家族が構築されていく。なんとも変わった作品だ。  私の職場にも、Q&A(FAQ)がある。来訪者に対して、間違ったことを説明しないように、また新入りの方が説明しやすいようにと私が提案して作ることになったものだ。作成する側に立って、何を省略してどこを強調

          2022/10/31 マニュアルに人間味を加えることは可能か

          2022/10/28 40歳からはおまけ

          池田清彦『40歳からは自由に生きる 生物学的に人生を考察する』(講談社現代新書)を読んだ。要旨は「まえがき」にほとんど書いてあるとおり。40歳以降は人生のおまけだから、自由に生きたほうがよい、というもの。おおむね納得しながら読んだが、こういった生き方ができるのは、やはりそれなりの能力と経済力がある人なのだろうと思う。  「ヘイフリック限界」だとか、「ヒトとチンパンジーのDNAは98.8%は同じ」だとか、「FOXP2という遺伝子が言葉を話すのに欠かせない遺伝子である」だと

          2022/10/28 40歳からはおまけ

          2022/9/26 マンガで学ぶ時代  

          内田樹の「本が読む」というエッセイ(『子どもは判ってくれない』所収)に高校時代の雑誌部の友人がニーチェやウィリアム・ジェームズやらを原稿に書いてきて、上級生や作者が絶句したという話がでてくる。結局、コリン・ウィルソン『アウトサイダー』(福田恒存・中村保男訳)に作者が出合い、引用の元ネタがわかるという話だが、この『アウトサイダー』的な本、つまり広い教養を与えてしまうような、早熟な人間を育ててしまうものとして、現代はマンガがあるのではないだろうか。  小学生の息子が『Dr. S

          2022/9/26 マンガで学ぶ時代  

          2022/9/20 老醜を避け、ただの老人になりたい

          昨日は敬老の日。自らの「老醜」について考えた。渡辺一夫「老醜談義」にこんな文章がある。    若い人でも「己が己が」というような態度をとることは、醜いことですが、年齢・権力・金力を笠に着て、どこへでもしゃしゃり出て、「俺を忘れるな」と言わんばかりの態度で「遺言的説教」をしている老人は、どうも「老醜」そのもののような気がいたします。ですから、齢をとって、いわゆる「功成り名遂げ」たために、いわば「怖いもの」なしになりやすい老人は、傍から見れば、「黙って、言わせて置くに限る。い

          2022/9/20 老醜を避け、ただの老人になりたい

          2022/9/13 ゴキブリを助けたら地獄で救われるだろうか

          職場で印刷していたらゴキブリを発見。これが自宅なら「親の仇」ばりに攻撃を開始し、物の隙間に隠れようと、追及の手をゆるめることはない。でも、この職場のゴキブリ、動きがとても緩慢なのである。のそのそと歩いていてクワガタムシの全力よりも遅いスピードである。攻撃にうつるか、躊躇する。  今年の夏、息子と夜の昆虫観察のイベントに参加した。まだ日が落ちきらない明るいうちから昆虫観察ははじまり、カブトムシ、カマキリ、セミの抜け殻などを見つけては、専門知識のある講師が説明をしてくれる。果ては

          2022/9/13 ゴキブリを助けたら地獄で救われるだろうか

          2022/9/9 水木しげるの妖怪百鬼夜行展

           今年は水木しげるの生誕100年にあたるそうで、様々なイベントが開催されている。8月中旬、六本木ヒルズに「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展 —お化けたちはこうして生まれた—」を見に行った。  『妖怪なんでも入門』(小学館)を小学生の頃よく読んでいたので、ずらりと並んだ妖怪画はどれも見覚えのあるものばかりだった。水木が鳥山石燕の『画図百鬼夜行』などを資料として、妖怪を描いていたことは知っていたが、「大かむろ」が狸の化けたもので、「大かむろ」という名前も水木の創作であることなど、はじ

          2022/9/9 水木しげるの妖怪百鬼夜行展