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『結局、仮説で決まる。』発売直前試し読み#2 ~仮説とは一体、何を考えれば良いのか?~

問題解決あるいは企画提案に際し、考える筋道としての「仮説」が必要です。とはいえ、仮説はただ立てればいいものではなく「必要な要素が含まれているか、検証できるか否か」など、必要な要素があります。本記事では、そのような使える仮説を立てるセオリーを学ぶ新刊『結局、仮説で決まる。』(柏木吉基 著)より、発売前の試し読みとして1章の一部を3回に分けて公開します。
(第1回はこちら)


■問題解決あるいは企画提案のプロセスと仮説

では、話を「仮説とは何を考えれば良いのか?」に戻しましょう。小学館『デジタル大辞泉』には、仮説の定義として、次のような記載があります。

「ある現象を合理的に説明するため、仮に立てる説」

確かに、このとおりなのですが、残念ながらこれだけでは「自分が何を
考えれば良いのか?」の答えにはなりません。

先ほどの“問題解決”をケースとして、その結論に至るまでの道のり(プロセス)を考えてみましょう。問題解決あるいは企画提案の一般的なプロセスは、図1-3のとおりです。


個々のプロセスの中身については、本書の第2章以降で詳しく説明しますので、ここでは全体の流れを大まかに理解していただければ十分です。問題解決あるいは企画提案のプロセス全体は、図1-3に示したとおり、大きく4つのステップから成り立ちます。

まず、STEP1(ゴールの設定)では“ゴール”を定めます。ここでのゴールとは、“問題解決”であれば解決したい「問題(困り事)」であり、“企画提案”では実現したい「目的」となります。

次のSTEP2(現状把握)では、足元の“現状把握”をできるだけ客観的に行います。何事も目の前で何が起こっているのかわかっていないと、先に進めないですよね。それを具体化、明確化するためのステップです。

続くSTEP3(要因特定)では、STEP2で確認された現状に対して、「なぜ」そうなっているのかを特定します。この「なぜ」は“問題解決”においては“要因”あるいは“原因”という言葉に、“企画提案”では“根拠”という言葉に置き換えることができます。ここでは、それらを合わせて“要因”と表現しておきます。

最後のSTEP4(結論あるいは提案)では、STEP3で特定された要因に対して、どのような施策、対策などが合理的か、その答えを結論として出します。あくまで、この結論の中身は、STEP2で確認された現状ではなく、STEP3で特定された要因に対するものであることがポイントです(この点も第3章で詳しく説明します)。

そこで考えるべきことは、このプロセスの中で「仮説」が登場するのはどこなのか、です。登場する場所によって「考えるべき内容」が異なるためです。

■「現状仮説」と「要因仮説」と「ストーリー仮説」

結論を先に言えば、STEP2(現状把握)およびSTEP3(要因特定)それぞれのSTEPに対して、その作業に入るための仮説が必要になります。その必要とされる仮説の中身を簡単に表現すると、以下のようになります。

【STEP2(現状把握)に必要な仮説】
現状を適切に把握するためには、どのような切り口でとらえるべきなのか?

【STEP3(要因特定)に必要な仮説】
把握された現状の背景にある要因は、どのようなものがあるか?

それぞれのSTEPで確認・検証すべき内容の“想定”をあらかじめしておく、ということがわかります。また、STEP2とSTEP3とで求められる仮説の内容が異なることにも注意が必要です。

これを明確に区別するために、私は【STEP2(現状把握)に必要な仮説】を「現状仮説」、【STEP3(要因特定)に必要な仮説】を「要因仮説」と呼ぶようにしています。あくまで、私が仮説の区別をするためにつけた呼び名です。

さて、考えるべき仮説として、この2つですべてかと言うと、実はそうではありません。もう1つ重要な仮説があります。それは、最終的な結論を導くための「全体のストーリーについての仮説」です。問題解決であれ、企画提案であれ、究極の目的は、結論(提案)に到達することにあります。

でも、最終ゴールである提案に向けて「どのような情報が必要なのか?」、そして、「それらの情報をどのような順番でどのように拾い集め、確認するか?」が自分でわかっていないと、常に「行き当たりばったり」の作業となってしまうでしょう。その結果、途中で行き先と自分がいる立ち位置を見失ってしまい、迷走してしまいます。

よくあるのが、たくさんのデータを集めて、次々にグラフで可視化したり、合計や平均など、いろいろな指標で集約したりしたものの、「えっと、これで結局、何が言える/何を言わないといけないんだっけ?」という状況に陥るケースです。

こうしたケースは、多くの人が身に覚えがあるのではないでしょうか。その状況で、いくら近視眼的に現状仮説や要因仮説を立てたとしても、全体としての筋道やストーリーを構成するときに役には立ちません。

つまり、ここでは、次の2点を仮説として、あらかじめ考えておく必要
があるのです。

  1. 結論を出すために必要な情報は何か?

  2. その情報は、どのようなプロセスで確認すべきか?

全体の筋道(ストーリー)を事前に想定しておく仮説であるため、私はこれを「ストーリー仮説」と呼ぶようにしました。

ここまで紹介した3つの仮説、すなわち「現状仮説」「要因仮説」「ストーリー仮説」が適切な筋道に沿った合理的な提案につながるために必要な要素だと考えています。これら3つの仮説の位置づけを概念的に書くと図1-4のようになります。 


同図中の3本の線は、ストーリー仮説を表しています。このケースだと、スタート地点からゴールに至るまで3つの筋道候補がスタートを切る前に仮説として立てられていることを示しています。

それぞれのストーリーの中で、現状把握、要因特定といったSTEPが進みますが、先に述べたとおり、現状仮説を立ててから現状把握、要因仮説を立ててから要因特定という検証・確認作業が行われます。

(第3回はこちら)


『結局、仮説で決まる。』目次

序章:どうして様々な方法論が活かせないのか?
第1章:良い仮説、悪い仮説
第2章:目的のない仮説は意味がない ──ゴールの定義
第3章:良い仮説をつくるためのテクニック
第4章:仮説をつくる実践ケース
第5章:データ分析による仮説検証


日本実業出版社のnoteです。まだ世に出ていない本の試し読みから日夜闘う編集者の「告白」まで、熱のこもったコンテンツをお届けします。