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原動力は、夢見る「想像力」と形にする「創造力」──『プランニングの基本』から【4】

『データや統計、論理から導いた効率、便利、合理性で、人との違いは生まれません。「この手は新しい!」「思いもよらない!」「そそられる!」「あってよかった!」と言わせられるのは、独創性のみです』
『この1冊ですべてわかる プランニングの基本』(高橋宣行著)一部公開、第4回です。

「第2章 プランニングとは──そもそも何ができてプランニングか」より

独創性でしか「壁」は乗り越えられない

ビジネスする上で、相手を喜ばせるには、

①相手の悩みを解決すること(悩みに対してジャストミートする)
②相手の予期せぬ答えを提案すること(そんな手があったのかと感動)

この2つがあり、それにはどうしても独創性が不可欠です。2つとも、それぞれに壁があり、その壁をどう乗り越えるかが大事です。壁を超えるためには、2つの「そうぞう力」で壁を破壊し、新しい価値を生み出さなければいけません。

データや統計、論理から導いた効率、便利、合理性で、人との違いは生まれません(人の後追いはできたとしても)。

「この手は新しい!」「思いもよらない!」「そそられる!」「あってよかった!」と言わせられるのは、独創性のみです。

仕事の3段階「1.インプット、2.コンセプト、3.アウトプット」の質を高める力も、2つの「そうぞう力」なのです。では、あらためてこれらの「そうぞう力」についてお話ししましょう。

オリジナルの夢を見るから、オリジナルなカタチが創れる

辞書からの抜粋によると、

[想像]とは、現実には知覚に現れていない物事に関して、心的概念を浮かべること。
[創造]とは、それまでになかったものを初めて創り出すこと。

と書かれています。

それをビジネスの現場が求める「力」に置き換え、私は次のように考えています。

「想像力」は、夢を見る力。

未知の、異質の情報を組み合わせ、新しい世界や夢やロマンあるストーリーを描く力です。目先の習慣やルールにとらわれることなく、まったく新しいイメージを形成すること。それは頭の中に絵を描くことでもあります。

「創造力」は、夢をカタチにする力。

今までにない新しい価値あるものを創り出す力。問題解決に対して、習慣化した考え方やイメージに挑戦し、頭の中のイメージを具体的な言葉や絵や形に定着させること。つねに人と違うものを創る姿勢と行動力が伴います(図15)。

プランニング図15

このように私たちの仕事は、まず「夢を見る」ことから始まります。そこで見る夢の大きさ、深さ、熱さが、そのまま創造の大きさにつながるのです。まず「こうしたい。こうなりたい」という熱い想いやこだわりなしに、オリジナル(自分らしさ)なんて生まれるわけはないのですから。

イメージをリアルに…感動の伴うアウトプット(リアル)は、オリジナルな想像力(イメージ)があって初めて生まれます。また、自分の見る夢だから、思いも熱く、こだわりも強く、高い説得力を持つのです。

求められる力は「想像力」と「創造力」のワンセット

ビジネス社会では、つねに人と違うことを考え、人と違うものを創ることで評価されます。究極のマーケティングは「違いを創ること」とドラッカー氏は言います。

差異化・個性化の時代は、情報や知識ではなく「考え・創る」知恵が求められているからです。

とくに「想像力」。複雑に情報が錯綜する企業の悩みに対して、その問題の核心をつかむのも、新しい想いを描くのもイマジネーションの力です。何が問題か、どこが根っこか、それを解決することにより、相手はどう反応し、どう行動し、どんな暮らしぶりになるのか。

想像力は、そんな先を読む力でもあるのです。ITを動かす原動力であり、付加価値づくりの源泉でもあり、人を思いやる資質でもあります。

私たちが日頃ビジネスで口にしている、
・新しい世界を描くイメージ
・ユニークな価値観づくりのコンセプト
・企業のあるべき姿を描くビジョン
・個々人のロマン
・独創を生むアイディア
・変化を予測するのも、仮説を立てるのも
・戦略をストーリー化するのも
・世の中の人々の気持ちを洞察するのも
・課題解決のために全体を読むのも
そして、
・相手に対する思いやり
すべてイマジネーションの世界です。データや論理のその先を読む、想像力を発揮することで成り立っています。

キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長は、日本経済新聞でこう語っていました。

「ビジネスにとって2つのそうぞう力が必要だ。それは想像と創造です。とくに大切なのは想像力。将来の変化を想像して予測し、そこで自社の得意分野を創造する。そこに向かって力を結集し、次に創造力によって独自の新しいものを見出していくのです」

創造力は「独創」を生む力

優れた「想像」から、優れた「創造」が生まれます。なぜなら、そこに新しい発見があるからです。素晴らしい創造の種があるからです。それを実現させ、リアルな形にしていくのが創造力です。

「創造力」とは本質的に新しいもの、まだ知られていないようなアイディア、他にないもの、を生み出す力であり、新しいイメージを具体的な形に定着する力です。

どんなに素晴らしい思想やコンセプトがあっても、人が感動し、評価するのは、言葉であったり、絵であったり、アウトプットにかかっているのです。

その個性が世の中に通じるのか、競争力を持つのか、差別化できるのか、厳しい判断が待っています。これから自分がビジネスを楽しみ、面白がれるのも、創って成果を上げ、自らの存在感を示すのも、カタチを見せる創造力なしでは無理かもしれません。

次の「CASE2」は、想像と創造の関わりを描いたものです。

「金沢に、こんな美術館を… (想像)」「その実現にこんな形の、こんな中身の… (創造)」と、2つの「そうぞう力」で独創的な街のランドマークが生まれたのでしょう。

「今、何がしたいのか」
「何を創りたいのか」
「どうなりたいのか」

最近のビジネスパーソンの夢は小さい、薄いと言われています。その声にぜひ反発してください。古い習慣や前例や、ルール、既成概念など負の要素が、「そうぞう力」の足を引っ張っているのかもしれません。

「さあ、プランニングだ」と向き合ったら、ポジティブに。考える枠組みを狭めるネガティブ要素を意図的に破壊するのです。

もともと創造にはリスクがつきものなのですから、徹底してブレイクスルーする熱い想いを忘れずにいてください。

プランニングcase2


プロフィール

高橋宣行(たかはし のぶゆき)

1968年博報堂入社。制作コピーライター、制作ディレクター、制作部長を経て、統合計画室、MD計画室へ。制作グループならびにMDU(マーケットデザインユニット)の統括の任にあたる。
2000年より関連会社を経て、現在フリープランナー。企業のブランディング、アドバイザー、執筆活動などで活躍。著書に『高橋宣行の発想ノート』『高橋宣行の発想フロー』『高橋宣行の発想筋トレ』(以上、日本実業出版社)、『博報堂スタイル』『今どきの、発想読本 「コラボ」 で革新』(以上、PHP研究所)、『オリジナルシンキング』『コンセプトメイキング』『「人真似は、自分の否定だ」』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『発想職人のポケット』(小学館)他がある。


※著者が本書のねらいを語った「はじめに」も、小社公式サイトで公開しています。

※『この1冊ですべてわかる ○○の基本』シリーズラインアップはこちら!


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