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さびしくない、きっと

ぜんぶうまくいってるはずなのに、なぜか不安が拭えない。新学期が始まったとき、何か大事なものを忘れているような気持ちを抱えて登校するときと似ている。

恋人もいて、友人にも恵まれている。就職活動も無事終えた。大丈夫、きっと大丈夫。そうやって一つ一つ確認していく。忘れ物はないか確認する児童と同じように。それでも、なにか違和感がある。そういうときは大抵大切なものを忘れている。

若干の心当たりとして、生きててよかったと思う瞬間が少なくなったことに気がついた。理由はわからない。

初めて大好きなアーティストのライブに行った時、人生で初めて「生きててよかった」と心の底から思えた。死ぬことばかりを考えていた15歳のときだった。

それから、ライブに行くのが生きがいになった。いろんなアーティストのライブに行った。叫んで踊って泣いて笑った。でも、最近はライブに行っても心が動かなくなった。楽しいけれど、生きててよかったとは思わなくなった。

心のどこかがゆっくり壊死していっているような気がしている。何年もかけて心を蝕まれているような感覚がずっとある。もうあとには戻れないことも、なんとなく分かっている。自分のことが他人事に思える。こうやって言葉にすることでそれが少し緩和される。自分の人生だと実感できるようになる。それでもその感覚は揺らぎ、現実味のない日々が続く。

どうしていいのかわからない。孤独が手を引いて離してくれない。人生の中で一度でも生まれた孤独の類は消えない。それは薄々気づいていた。飼い慣らすことしかできない。でも、息が苦しい。誰といても独りのままな気がして止まない。悲しさが渦になる。そして、さびしくないと言い聞かせる。

さびしくない、きっと。

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