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さびしくない、きっと

ぜんぶうまくいってるはずなのに、なぜか不安が拭えない。新学期が始まったとき、何か大事なものを忘れているような気持ちを抱えて登校するときと似ている。 恋人もいて、友人にも恵まれている。就職活動も無事終えた。大丈夫、きっと大丈夫。そうやって一つ一つ確認していく。忘れ物はないか確認する児童と同じように。それでも、なにか違和感がある。そういうときは大抵大切なものを忘れている。 若干の心当たりとして、生きててよかったと思う瞬間が少なくなったことに気がついた。理由はわからない。 初

    • どこまで行っても他人

      他人はどこまでも行っても他人。恋人も友人も、家族ですらも他人。本当は自分以外を信じるべきではない。人に期待もしない方がいい。そう簡単に人は変われない。 生きていくうちに、そういう真理に気づいていく。でも、いくら他人と言えど好きになってしまうし、信じてしまうし、期待もするし、変わってほしくて説得したりする。無意識の中にそれはあって、言い聞かせても動かない。人間らしさとはこういうことを言うのかもしれない。 期待とぬか喜びと妄想はしない方が傷つかずに済む、と気づいたのは小学生の

      • 春の備忘録

        春になると、安堵が心の余白を埋めてくれるようになる。どれだけ焦燥感に苛まれていても「もう大丈夫」と思えるような、ある種の諦めとも言えるような感情が生まれる。 遂に大学4回生になってしまった。就職活動においては、とくに熱心に注力しないまま、自分が満足できる程度の戦績を重ねてこれた。自分が思っているよりも、自分は平凡だと言い聞かせた。事実ではあるけど、その事実が結構悲しい。でも、もう傷つきたくなかった。 高校2年生の終わりまで、夢があった。小学校のときからずっとデザイナーにな

        • もしもあなたと同じ夢を見てたら

          一昨年の夏、恋をした。人生で初めて本気で人を好きになった、と言っても過言ではなかった。とにかく顔が好みで、ユーモアがあって、私のタイプだった。奇跡的に付き合うことができ、汚点だらけの人生でこんなことが起こっていいのか、と疑ってしまうほどに幸せだった。その疑いはあながち間違っていなかった。 彼はとある新興宗教の信者だった。しかも、かなり熱心な。それを打ち明けられたのは付き合って1ヶ月経った頃だった。私は「宗教について深く考えたことのない人生だったから、今はまだ何も知らない。無

        さびしくない、きっと

          恋愛人間

          「すべての元彼に捧げます!聞いてください、SSW!」という口上から始まるコレサワのSSWという曲が大好きで、恋人と別れる度に聴いていた。 私のAppleMusicには「Midnight Maiden War」というプレイリストがある。誰にも見せたことがないけれど、ここには女である私が強く生きるための歌が詰め込まれている。恋が終わったときによく再生する。 変な恋愛をたくさんしてきた人生だと思う。高校から付き合って6年目です、みたいな安定型の恋愛なんて無縁の人生だった。 高

          恋愛人間

          日記 1/4

          2024年なんてほとんど他人事。信じてない。心は未だに2018年。2018年が6年前だということも、そのとき私は15歳だったことも、ぜんぶ信じない。 毎年、年越しは高校の頃の友達と3人で過ごす。それももう4回目だった。 一人は社会人になっていて、横文字の難しそうな仕事に就いていた。もう一人の「今日彼氏と別れました!」から始まった大晦日。直後にその別れた彼と一緒に行ったディズニーのお土産を渡され、爆笑してしまった。慰労会のような雰囲気になったけれど、人生いろいろあるね、頑張

          日記 1/4

          愛がなんだ

          久しぶりに愛がなんだを再鑑賞した。というかもう再再再々鑑賞くらいだけど。 17歳になる直前に、この作品に出会った。映画館で観て、大人の恋愛ってこんなもんなのかと思いながら軽い気持ちで観ていた。マモちゃん最低だなー、ラストシーンやばいなーとか思いながら。見終わったときには、なぜかこの作品の虜になっていた。 その後、原作も読んだ。原作と映画で異なるところは、ほとんどないのだけれど、私はなんとなく映画が好きだなーと感じた。 その頃の私は純粋無垢だった。高校3年間ずっと好きだっ

          愛がなんだ

          21歳になってわかったこと

          天下一品のこってりがしんどくなった。あればあるほど良かったチーズも、ステーキやカルビの脂身部分も、もう食べたいと思えなくなった。あれだけ毎日食べていたアイスもあまり食べなくなった。その代わり、毎晩酒を飲んでいる。 そして、飲んだくれた次の朝の、なんともないただの味噌汁がこの世で一番美味しいのだと気づく。二日酔いの朝の味噌汁とカネコアヤノの音楽だけは、わたしたちを裏切らない。 好きな人とキッチンで焼きたての餃子を食べて、レモンサワーで流し込む。そのときに生きててよかったと思

          21歳になってわかったこと

          感情は死にきって春

          来月21歳になるらしい。どう考えても15歳を超えたあたりから、時間の進み具合が早まっている。そういえばこの前やっていた『ブラッシュアップライフ』で「時の流れが早く感じるのは、時間の相対的な長さが短くなるからだ」と言っていた。『ブラッシュアップライフ』おもしろかったな。 去年、好きになった人に彼女がいて、その彼女が25歳だったこと。「25歳のおばさんより19歳の私を選んだ方がいいだろ」と日記に書き殴ったこと。若気の至りがすべて詰まっている。年上の男に惚れ、振り回され、挙句の果

          感情は死にきって春

          春の寝息

          なんとなくを繰り返していたら、もう春になっていた。いつも3月になると、焦燥より安堵のほうが先に来る。だから、3月が好きだ。 外れたままだったベランダの網戸を元に戻した。本棚を綺麗にした。あの人にもらったものを机の奥にしまった。4年前の日記はもう読めなかった。 忘れてしまった人が増えた。忘れてしまった過去も増えた。私もきっと誰かの中で名前も顔も出てこないくらいに忘れられているのだろう。 本当は私は誰にも忘れられたくなんてなかった。

          春の寝息

          2022

          点と点が線になっていくのを実感した一年だった。私がこれまで選んできた出来事には、全て意味があって、全て繋がっていたのだと気づいた。 本当に数え切れないくらいの出会いと別れがあった。5月に二十歳になってからお酒を飲む機会が増えて、その度にまた関わる人も増えていった。 私は昔から友達に恵まれていた。柄にもないことを言うけれど、本当に友達が好きだ。どれだけ不幸な出来事があっても、それを聞いて友達が笑ってくれればそれだけでどうでもよくなった。同情されるよりも笑ってくれる方が嬉しか

          好きな人

          お風呂に携帯を持っていかない人 気づくと車道側を歩いてくれている人 詩を馬鹿にしない人 何も言わずに二礼二拍手一礼ができる人 私のストーリーを見る前にLINEの返信をくれる人 見た目と書いた字にギャップがある人 空港とか駅にあるような動く歩道があれば、そっちに乗っちゃう人 本棚の本を作家順で並べている人 たこ焼きのたこを先に食べる人 インスタよりもツイッターが好きな人 一緒に映画を観て、最後まで観れる人 心の中でめざましじゃんけんに参加している人 お腹が鳴って椅子の音で紛

          好きな人

          日記 10/2

          また同じことを繰り返す。その中に非日常があるから私は生きていける。 好きだったあの人は、私のことをまるで最初から好きじゃなかったみたいな素振りでどこかへ消えた。自分を捨てた人を追いかけるほど、私は馬鹿では無かった。それだけが自分自身を救った。 また元の生活に戻って行った。自分を粗末に扱い、自虐してはみんなに笑ってもらおうとしている。 昨日も気がつけばまた同じ場所にいて、朝方に友達から連絡があった。馬鹿みたいだと思いながら、朝5時に友達のいる街へ帰った。夏と秋の間の、どち

          日記 10/2

          夏と忘却

          夏が終わる。なんて言ってるけど、全然暑いのでまだ夏。思い返せばいつもより楽しい夏だった、気がする。 手持ち花火は4回した。毎日のようにアイスを食べて、夏のプレイリストを作っては夜歩きながら聴いていた。海を見た。夜の海も見た。馬鹿みたいに飲んだくれた居酒屋、汚い灰皿、ぷかぷかと流れる副流煙。地べたに座って笑った深夜2時。珍しく友達も増えた。好きな人もできた。空の写真をたくさん撮った。夏の大三角だけが私たちの住む街の夜空に浮かんでいた。明け方のピンクと青が混ざった空に霞む白い月

          夏と忘却

          36℃

          気がつけば、すでに夏だった。かつて過ごしてきた夏には、敵わなかった人がたくさんいる。叶わなかった願いもたくさんある。 夏に出会った人と、冬を過ごせたことがなかった。暑いねと爛れながら言い合っても、寒いねと二人で肩を寄せ合うことはなかった。みんな、秋に差しかかる頃には、私の手を振りほどいてどこかへ消えていった。 夏の歌をスキップしなくなり、コンビニの花火を見て誰かを思い出す。アイスを食べる頻度が多くなって、雲がいつもより大きく見える。陽が長く、月は短い。枯れた紫陽花とその横

          36℃

          私と過去

          兵庫県生まれ、兵庫県育ち。女。右利き。私以外の家族は全員左利き。 りんごジュースばかり飲む子どもだった。今もりんごジュースばかり飲んでいる。たまにカルピス。コーヒーも紅茶も熱いお茶も昔から飲めない。 人見知りだったけど、最近は自分から話しかけたりすることもしばしば。逆ナンくらいならできるかもしれない。したことはない。 幼稚園のとき、遠足か何かでサワガニを取りに行った。怖くて一匹も取れなかったのに、家に帰った後、親には「30匹取った」と伝えた。それが覚えている中で一番古い

          私と過去