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【400字小説】水平

天秤座のタカヒロは青葉市子に夢中で
B’zが好きなマユを愛してはくれない。
マユはバカにされてるのも知ってる。
ただ、愛することだけに徹する。

昨夜、マユはバンドの練習中に豚汁を差し入れて、
からかわれていたタカヒロが、
とりあえず「ありがとう」と言ってくれたことに昇天。

「メンバーもおいしかったって言ってた」という
LINEが来ないか期待、
でもいつまで待っても来ない。

豚汁の入っていた鍋を返してもらうのが、
タカヒロに会う口実。
この恋心は《迷惑》と天秤にかけても
釣り合いが取れるかなって愚問だ。

それを承知しているから、もう待っているのが、
バカバカしくなって、鍋を返してもらいに、
彼のアパートへ押しかけた。

「急に、お前怖いよ」と言われたいと感じていた。
ところがタカヒロは在宅だったし、
鍋はすでにきれいさっぱり洗われていて、
誰になのかはわからないけれど、
マユはもう勝ち目がないことを確信。
止むなくB’zのファンを続けることにした。

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