見出し画像

【400字小説】漂白

カネコアヤノの白いポシェットが黄ばんできたので、
漂白しようか迷っている、マキコ。
いつもだったら躊躇わず漂白液に漬けるのに、
相当なお気に入りだから、嫌だなって、縮んだりするのが。

同棲しているヤスナリはカネコアヤノに興味がない。
「ビジュアルがかわいらしいから
純粋に音楽として聴けない」って
ショックなことを言われたな。
はっきり否定したのと、わたしを受け入れているのは
わたしはかわいくないってことだからだって
暗に言われたってことで。
いつもスタバでグランデをひとつ頼んでふたりでシェアしてるのは、
それだけくっついていたいってことじゃなく、ただのケチなのか。

漂白を迷ったまま2、3日が過ぎて、
ただいまって帰ったら、珍しくヤスナリが洗濯物を干していた。
イヤな予感がして洗濯かごを見ると、ポシェットが……。
「きみには洗えないでしょ。
代わりに洗っといた」と言い終わる前に、
マキコはヤスナリの頬に平手打ちを。

◆◆◆

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?