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将棋の話

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将棋に関する話題についてまとめています。
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記事一覧

【将棋の話】藤井竜王(当時)揮毫の扇子

 この記事のタイトル「藤井竜王(当時)」の表記には、二通りの可能性があることをまず説明します。 選択肢1 藤井聡太名人・竜王(2023年9月現在)が竜王を獲得したのが第34期(2021年11月)で、名人を獲得したのが第81期(2023年6月)。  タイトルを複数持っている棋士を「何冠」と呼ばずに、格式が最も高い名人および竜王の称号だけで呼ぶことを好む人もいて、筆者もその一人です。  そうすると、藤井聡太名人・竜王が「藤井竜王」と呼ばれたのは、ざっくり言って「2021年1

【将棋の話】髙野秀行六段の博識に驚かされました。

 この二行は、昨日つぶやいたイベントに実際に参加して、そのときアンケートに書いたコメントそのままです。 はじめに なんと当日になって、アクシデントが発生しました。  ということで、会場は変わらずに、急遽Zoomでの視聴に変更になったのです。  髙野先生の体調は心配でしたが、内容は大変素晴らしくて、オンラインでも開催して頂いて良かったです! 講座の感想 この記事のタイトルそのままで、「髙野秀行六段の博識に驚かされました。」ですね。 チェスライクゲーム伝来の歴史  チ

【テクノロジーの話】【将棋の話】将棋AIの進化についてのまとめ

黎明期(1970-90年代) 序盤中盤は不安定で、終盤だけが強い 水平線効果  このころのソフトウェアは、ある局面からN手後の局面までを全探索し、各局面の価値を評価関数を用いて評価することで、評価値の高くなる候補手を選んでいました。  そうすると、水平線効果により、とんでもない悪手を指してしまうことがあります。  水平線効果とは、有限深度Nで探索を打ち切ってしまうために、長期的に見て問題のある選択をしてしまうという、人工知能特有の問題です。  水平線効果は、「コンピュ

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【将棋の話】板谷一門のこと

プロローグ 2018年に豊島将之棋聖が誕生して以来、愛知県出身の棋士がタイトルを獲得することは珍しくなくなりました。  今ではむしろ複数のタイトルを同時に持つことが当たり前で、さらにその数を増やすことにさえも驚きません。  しかし、それが当たり前ではなかった時期が続いたのも事実です。その歴史を知っている人が、それも棋界の人ではなく一ファンが書き残すことにも意味があると思って書いてみます。 198x年 愛知県名古屋市 1980年代のはじめ。小学生だった筆者は、名古屋市内の将

【三国志の話】【将棋の話】三国志が語源のことばと、将棋との関係

 三国志について少し興味のある人であれば、「三顧の礼」や「泣いて馬謖を斬る」が、蜀の丞相諸葛亮に関係することばであることを、ご存じかと思います。  もう少し三国志からことばを探していくと、将棋に関係のある言葉がいくつか出てきたので、関連づけてご紹介したいと思います。 はじめに 一般によく使われる「苦肉の策」は、本来の「苦肉の計」とは違う意味で使われている上に、「苦肉の計」そのものも『三国志演義』での創作です。  将棋では不利を挽回するための捨て身の勝負手のことを、このこ