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三国志の話

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あまりに「三国志の話」が多いため、歴史全般のマガジン「歴史の話」から独立したマガジンを作りました。どっぷり古代中国の三国時代に浸りたい方はぜひどうぞ!
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記事一覧

【三国志の話】三国志沼にハマった二日間(後半)

 今月はじめにつぶやいた三国志イベント(3/16・3/17)に、幸運なことに二日連続で参加できました!  本記事はその後半、3/17(日)のレポートです。 早稲田大学総合人文科学研究センター・三国志学会共催シンポジウム「翻訳文学の多様性――三国志を中心に――」長谷川隆一(早稲田大学文学学術院講師) 「正史『三国志』翻訳の立場から」  長谷川先生は、渡邉義浩先生が編集されている「全譯三國志」(汲古書院)の執筆者の一人であり、その事例を紹介して下さいました。  まとめると

【三国志の話】三国志沼にハマった二日間(前半)

 今月はじめにつぶやいた三国志イベント(3/16・3/17)に、幸運なことに二日連続で参加できました! 二松学舎大学文学部シンポジウム「三国志ワールドの展開:その時間と空間の広がり」 前半として、まず3/16(土)のほうです。筆者はオンラインで視聴しました。 はじめに  まず今回のテーマ「三国志ワールド」の代表として「パリピ孔明」が紹介されました。  「古代中国と現代日本」「覇権争いと音楽業界」という時間も空間も超えた広がりを持つ作品であるとともに、2019年のマンガ

【三国志の話】個人的な「三国志の登場人物リスト」を作る(その5 長命編)

 個人的にまとめつつある三国志の登場人物リスト。  その1では総人数の見積もりを出し、その2では同姓同名の人たち、その3では名前負けした人たちを、それぞれリストアップしました。  前回(その4)は、短命に終わった人たちの紹介でした。今回は逆に、長生きをした人たちです。 はじめに 長生きした三国志の登場人物といえば、一般的には孫権や司馬懿、黄忠のイメージかと思います。  しかし実際には、孫権は71歳、司馬懿は73歳で亡くなっています。(以降も含めて、年齢は全て数え年)  

【三国志の話】とても易しくて実は難しい?「都はどこか」問題

はじめに いきなりですが、「魏・呉・蜀それぞれの都はどこか?」という出題があったら、あなたならどう答えますか?  これは、三国志に関するクイズとしては、とても易しいものだと思います。  思うだけでなくて実際にも易しいのですが、しかし知識があればあるほど即答できないように思うので、考察してみました。 蜀 蜀については十中八九、いや、100人中97、8人は「成都」と答えるのではないでしょうか。  もちろん、正解です。  蜀の先主劉備は、221年に成都を都として皇帝となっ

【三国志の話】三国志学会 第十八回大会

 今年はリアル会場で聴講しました。簡単にですが、内容をご紹介します。  自分が理解した範囲で内容を整理しましたが、記憶違いや誤認識があれば指摘いただけるとうれしいです。 毛宗崗本『三国志演義』における「忠」の方向性鵜浦恵(慶應義塾大学専任講師)  毛宗崗本は現在最も読まれている版本で、同じ江南系に属する李卓吾本がベースとなっているとのこと。  毛宗崗本は一貫して劉備を仁の人とするが、周辺人物の忠義の表現には蜀漢一辺倒ではない工夫が見られるそうです。 発表者のこれまで

【三国志の話】三国志大文化祭2023

 当日(9/3)にnoteでつぶやいたように、今年はライブ配信がなく、リアル開催のみでした。  オンラインで視聴する手段があると、(特に地方在住の人は)助かると思いますね。 魏書、華佗伝より、五禽戯について成澤正治(中国武術研究院 横浜武術院 代表)  成澤氏は1980年代より中国武術を始めて、2017年に日本で同団体を設立。  中国武術とも関わる健康法五禽戯の創始者が華佗であるとのことで登壇頂いたようだが、中国文化全般についてもかなり研究した人らしい。 毫州市につい

【三国志の話】孫呉のエースにふさわしいのは誰か?

はじめに 三国志ファンのあるあるとして、三国志トランプ(Playing Cards)を作ることを考えた人は多いでしょう。  それは、三国志の構成から考えると、とても自然なことです。  『魏書』30巻、『蜀書』15巻、『呉書』20巻があって、まずは単純に三国それぞれにマーク(スート)を決めて13名づつを選ぶ。  そして『魏書』30巻の中には、曹操と戦った後漢末の群雄、例えば董卓・袁紹・袁術・劉表などが含まれている。  それらは『魏書』から分けて別のスートにする。  そう

【三国志の話】【旅行記】三国志の聖地巡礼 神戸

 筆者はいま(2023年7月29日の朝)、神戸三宮のとあるチェーン店のカフェでこの記事を書いています。 新しいスタイル 少し前の記事で触れたように、筆者のnote執筆スタイルは毎週一つ(基本的に土曜日に)記事を公開して、翌日からまた次週の記事を準備していく形です。  なので、週末の土日に起きたことを話題にする場合は、ほぼ一週遅れになる。  たまにはそのスタイルを崩して、土日に行く予定の場所を土曜日の記事で予告して、実際に起きたことを随時更新していく形を試したいと思いまし

【三国志の話】個人的な「三国志の登場人物リスト」を作る(その4 短命編)

 個人的にまとめつつある三国志の登場人物リスト。  その1では人数の見積りを書き、その2では同姓同名の人たち、その3では名前負けした人たちを、それぞれリストアップしました。  今回は短命に終わった人たちです。(年齢は全て数え年)  早すぎる死が惜しまれる人物と言えば、郭嘉(38歳で病死)、周瑜(36歳で病死)、龐統(36歳で戦死)などが有名です。  もっと若くして、才能を期待されつつも発揮できずに亡くなってしまった人物を5名紹介します。 (順位は筆者の主観) 5位:王

【三国志の話】【将棋の話】三国志が語源のことばと、将棋との関係

 三国志について少し興味のある人であれば、「三顧の礼」や「泣いて馬謖を斬る」が、蜀の丞相諸葛亮に関係することばであることを、ご存じかと思います。  もう少し三国志からことばを探していくと、将棋に関係のある言葉がいくつか出てきたので、関連づけてご紹介したいと思います。 はじめに 一般によく使われる「苦肉の策」は、本来の「苦肉の計」とは違う意味で使われている上に、「苦肉の計」そのものも『三国志演義』での創作です。  将棋では不利を挽回するための捨て身の勝負手のことを、このこ

【三国志の話】三国志で見るリスキリング

はじめに 岸田首相が発言してから注目されているリスキリングとは、『新しいことを学んで、新しいスキルを身につけ実践して、そして新しい業務や職業に就くこと』なのだそうです。  三国志を題材にして、目指すべきリスキリングのモデルとなる人物が数名見つかりましたので、ご紹介したいと思います。 徐庶 『三国志演義』でもおなじみの人物。  若いころは武闘派でしたが、そこから諸葛亮の友人になるくらいに学問が上達したのは驚きです。  関羽にも、若いころに人を殺して放浪したという伝説があり

【三国志の話】個人的な「三国志の登場人物リスト」を作る(その3 名前負け編)

 個人的にまとめつつある三国志の登場人物リスト。その1では総人数の見積もりを書き、その2では同姓同名の人たちを挙げました。  今回は筆者が作成中のリストの中から見つけた、「名前負け」してしまった残念な人たちです。 はじめに シンプルに「三国志の残念な人物事典」を作ろうとすると、かなりのボリュームになるでしょう。  残念さにもいろいろありますので、今回は名前負け、つまり、「名前に対して実績が一致しない人」に絞って、数名挙げてみます。 4位:王族 彼は王の一族でもなければ名

【三国志の話】三国志最大の謎とは?

 一般的に三国志の謎というと、『正史』があまりに簡素であるために、『正史』が採用しなかった面白エピソードに注目されがちです。  例えば、于禁は実は女性だったのかとか、曹叡の父は本当は袁煕だったのかとか。  しかし、筆者が考える限りは、陳寿が正しいと判断できなくてスルーしたエピソードは、謎でも何でもありません。  新しい資料や考古学的な新発見がない限り証明する手段がありませんので、単純に「陳寿が書いていないことは信じない」だけです。  とはいえ、「陳寿が正史に堂々と書いてい

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【三国志の話】三国志検定とは何だったのか

はじめに  読者の皆さんは、かつて「三国志検定」というものがあったことをご存じでしょうか?  三国志検定運営委員会が主催して、川本喜八郎人形美術館やコーエーなどが後援。当時は大東文化大学の教授だった渡邉義浩先生が問題を監修されていました。  2008年12月の第一回および2009年7月の第二回は、映画「レッドクリフ」の公開に便乗とタイアップしていたようです。  残念ながら、レッドクリフ特需が去ったあとのスポンサー探しが難しかったらしく、第三回はそれから間があいた2012