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適応障害とわたし@2020/3/11

今日は東日本大震災から9年目。当時のわたしは中3で、卒業式間近の春休み中だった。吹奏楽部の練習があったけど、その日は持病の側弯症の定期検診だったから病院にいた。いつもは午後診療なのに、その日だけ午前診療だったので母と不思議だね、と話してた矢先の午後3時ごろに地震が起きた。
最寄駅は大混乱で、とりあえず車で妹と父を迎えに行ったことを毎年思い出す。ちなみにその日の晩ご飯はから揚げだった。

そんなことを思い出しながら6時に起きた。ラジオを聴きながら布団の中で服に着替えてたけど、案の定また二度寝して結局7時20分に起きた。
ふと机を見ると、寝る前にいつも2錠飲んでるはずの睡眠薬のうち、1錠がコロンと転がってた。もったいないので朝ごはんを食べる前に飲んじゃえと思ったけど、今日は出社日だし電車で寝過ごすのが怖かった。仕方ないので机にある金の招き猫が座ってる赤い座布団の上にちまっと置いておいた。今日の夜、忘れず飲もう。

今日は2、3分はやく家を出た。でも電車は待てど暮らせど来ない。出た、車両点検の遅延。朝から最悪だ。
やっときた急行電車に乗ると、車内アナウンスが一駅過ぎるたびに遅延の謝罪アナウンスを流した。オイソギノカタニハタイヘンモウシワケゴザイマセン。何度も言わなくたって、電車が待ってる間に分かる。耳にタコができる。
しかもいきなり停車して止まってる時間が長い。そうなると急に緊張感が増してきて手足が震えるから困る。こう言う時は何も考えず目を閉じて、じっと耐える。ノイズキャンセリングのイヤホンをしてても聞こえる謝罪アナウンスが鬱陶しくて仕方ない。

しばらくして電車が動き出した。ゆっくり目を開けると、目の前に黒いマスクをした女の子がいた。最近、黒いマスクをした人が男女問わずたくさんいる。何がいいのだろうか?かっこいいから?わたしには、これから犯罪を犯そうとしてるひとにしか見えない。しかも肌の色と黒い色が合ってなくて顔色が悪く見える。というより、人相が悪く見える。

電車は遅れてたけど、途中の乗り換えの電車ががんばったおかげで遅刻せずに済んだ。しかもいつもの到着時間よりはやく着いた。
会社には10時30分に出社することになってる。今の時間は10時10分くらい。でもすぐには会社に行かない。はやく行くとすぐ作業しちゃうから。休職前は8時30分前に来て、すぐに作業をしていた。そのせいで真面目だとかしっかりものとかのイメージがついてしまった。本当は誰よりも飽き性でだらしないのに。

昔から友達や親に長所を聞くと、真っ先に真面目な性格と言われてきた。それが今でも嫌で嫌で仕方ない。
それが嫌すぎて、大学を卒業する前にピアスを3つ開けた。社会人になってからは髪を染めた。髪もセミロングからばっさりショートヘアにした。
でも、見た目をいくら変えても真面目だねと言われ続けた。友達に真面目と言われるのが嫌だということを相談したら「いいじゃん真面目で。いいところだと思うよ」で片付けられてしまった。
もうやっぱり思い切ってピアスの数でも増やそうか。あとは、もっと派手派手なワンピースを着るようにしようか。そうしたら嫌でも真面目なイメージは払拭されるだろう。
真面目な自分は嫌い。嫌い。大っ嫌い。

仕事中に上司に話しかけるのすら怖くてたまらない。心の準備ができないと席すら立てない。否定されるのが嫌。前の現場にいた時は、現場のリーダーに作った資料を提出したら個別で呼び出されて「なんでこうしたの?」の拷問にあった。その後、一応社会人にだしきちんと冷静になって理由を説明したら、これだから素人は困るんだよ知識が浅いから、とでも言いたそうな顔を一瞬で申し訳なさそうな顔に変えて「悪いんだけど修正してくれる?」と言われた。知識が浅い自分が悪いのは認める。あの時は納期がどんどん遅れていたし、現場もはじめてのことばかりでピリピリしてたから、ちょっと威圧的になってしまったことも分かる。でも、あまりにも技術がないとできないことを「自分が新人の時はもうやってたから」を理由に作業をふられたのはおかしいんじゃないか?女性のリーダーだったし年齢もそこまでいってるような人じゃないからステレオタイプな人でもなさそうだった。

今はもうその現場から退場になったから、今後そのリーダーと関わることも(運が良ければ)ないだろう。でも、威圧感のある表情を必死で隠そうとしてる顔と、ハリネズミのごとくトゲのある指示、目の前の席で「…また間違ってる」とわざと私に聞こえる小さな声でマウスをカチカチしてる姿だけは今でも忘れない。忘れられない。忘れるもんか。
あのリーダーは今どうしてるんだろうか?あの時と変わらず舌打ちしながら取引先の要望に文句をつけているのだろうか?いまさら現場を離れた私が気にすることでもないけれど。

相変わらず逃げるように会社を後にする。今日は誰にも話しかけず話しかけられず、ただ黙々と作業をして終わった。さっさっと日報を送信し、席の近くに誰もいなかったから「お先に失礼します」も言わずに逃げるように帰った。ほんと礼儀もへったくれもない。嫌になる。エレベーター前で大きなため息をついた。

帰りの電車はラジオを聴きながら帰る。帰りくらいは遅延なく帰りたい。
そういえば、最近ネットのアンティークショップでロケットペンダントを買った。古くさいとか言われても全然気にしない。
昔からロケットペンダントが好きだった。好きな人の写真や髪の毛をいれればお守りになる。中身を知られない限り、いつでもどこでも一緒。
ペンダントを買った後、手元に届いたら何を入れようかずっと考えてた。やっぱり好きな人の写真?でももし誰かに見られてバレたら嫌だ。見た人がその人のファンだったらもっとヤダ。ならいっそ、いつ死んでも大丈夫なように遺書でも入れておこうか。たぶん5センチくらいの折り紙サイズくらいしか書き残せないけど。何にせよ、このペンダントをつけていれば大丈夫だと思えるものを入れたい。

今日は東日本大震災から9年目だから、震災の話題が多い。戦争と一緒で絶対に忘れちゃいけないし、決して風化させちゃいけない出来事だから、作業中にトイレに抜け出して一人で黙祷した。大事な家族や恋人を失った人はごまんといるだろう。まだまだ仮設住宅で暮らしてる人もいるだろう。飼ってたペットが帰ってこなくて心の傷が癒えない人もいるだろう。9年たって、コロナの方が心配で忘れちゃった人とかそんな場合じゃない人もいるかもしれない。
震災の被害を受けて、それでも生き延びることができた人からしたら、こんなに毎日死にたい死にたいと思ってる自分は怒られるかもしれない。
とりあえず、今日まで無事に生きられてることに、今日だけはちゃんと感謝しないといけない日かもしれない。

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