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格。【NME Japan編集長がちょっと思っていること 第251回】

今週はビヨンセが突如日本を訪れて、通算8作目となるアルバム『アクトII:カウボーイ・カーター』をリリースしました。スーパーボウルのハーフタイムで放送されたベライゾンのコマーシャルに出演して、新曲をリリースすると発言し、突如サプライズで2曲の新曲“Texas Hold ‘Em”と“16 Carriages”をリリースしたのが2月中旬でしたが、そこから“Texas Hold ‘Em”でホット・カントリー・ソングス・チャートで1位を獲得した初の黒人女性となり、アルバムのタイトルが『カウボーイ・カーター』であることが発表され、その上で象徴的なアルバム・ジャケットの公開と共にカントリー・ミュージックへの進出に対する反発について自身の見解を語っていました。

そのビヨンセの見解の中でも注目したのは以下の部分でした。「このアルバムは作るのに5年以上を要しました。このアルバムは何年も前に自分が受け入れられていないと感じた体験から生まれました……自分が受け入れられていないことは明らかでした。しかし、その体験のおかげで、私はカントリー・ミュージックの歴史に深く入り込み、豊穣な音楽のアーカイヴについて学ぶことになりました。音楽が世界の多くの人々を結びつけることができることを知り、音楽の歴史を教えることに人生を捧げてきた人々の声を広げることができて、素晴らしい気分です」

「自分が受け入れられていないと感じた体験」というのは、2016年のカントリー・ミュージック・アウォーズの授賞式で当時のディクシー・チックスと共演したことを指しているという説が一般的です。同年の大統領選でも大きな論点となったブラック・ライヴズ・マターが盛り上がりを見せる中で、この共演は批判と分断を巻き起こすことになりました。だからこそ、「音楽のアーカイヴについて」学び、「音楽が世界の多くの人々を結びつけることができる」という次の文章に繋がってくることになります。

BBCはアルバム・ジャケットの白馬と白い髪が「ホワイトウォッシュ」のメタファーになっているのではないかと指摘していますが、これからアメリカのメディアを中心として本作のディテイルに込められた様々な意図が解き明かされていくことになるのだと思います。まだ1周しか聴けていませんが、“Daughter”、“Just for Fun”、“II Most Wanted”、“Ya Ya”といった曲を擁する本作がそうした考察に値する風格を兼ね備えた作品であることは伝わってきます。

『RADIO NME JAPAN~NEW MUSICAL EXPRESS JAPAN~』放送中
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