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佐藤 勇介/所沢ゼロファーム

法人名/農園名:所沢ファーム
農園所在地:埼玉県所沢市
就農年数:9年
生産品目:ネギ、枝豆、サツマイモ、ニンジンなどの野菜
SNS:https://twitter.com/tokozero0farm

no.233

愛車ランボルギーニのトラクターを駆使して、所沢の農業を元気にしたい!

■プロフィール

 埼玉県所沢市出身。サラリーマン家庭に育ち、社会科の教師を目指して武蔵大学人文学部 日本・東アジア文化学科の東アジアコースに進学。途中休学し、2年をかけて、北米とヨーロッパ以外の国・地域を訪問したのち、大学に戻って教職課程へ。

 在学中に同級生の実家である農家を手伝う経験を通じて、農業に興味を持つようになる。卒業後、本格的に農業の道に進むべく、県の農業大学校で1年間、さらに「いるま地域明日の農業担い手育成塾」で2年にわたって研修を受ける。その後、親戚や近隣の農業法人から70アールの圃場を借りて、友達の科野翔一(しなの しょういち)さんと共に就農。

 当初から直売で行こうと、少量多品目から始めて、スーパーなどに販路開拓の営業をかけたが、初年度は500万円と売り上げが伸びなかったため、2年目からはラディッシュなど数品目に絞ることで徐々に成長。

 同時に近隣の農家や行政からの委託で経営面積を広げ、8年目には20 ヘクタール、売り上げ1億2,000万円に到達。愛車ランボルギーニのトラクターを駆使し、所沢を代表する農業実業家として地元を代表する存在だ。

■農業を職業にした理由

〜バックパッカーから農業へ〜
 所沢のサラリーマン家庭に生まれる。高校卒業後は武蔵大学に進学し、中学・高校の社会科教師を目指して人文学部に進むが、卒業後にそのまま教員になることに疑問を抱くようになり、休学してバックパッカーとしてアジア各国をはじめ、さまざまな国や地域を旅して回った。

 もともと起業したいという気持ちを持っていたが、中学の同級生である友達の実家で仲間と一緒に農作業を手伝うなかで「青空の下で働くのが清々しくていいな」と農業の面白さに気づき、起業への思いと結びついて、就農を志すようになった。

 非農家が農家になるには農業大学校に行くのが良いと知り、大学卒業後に入学。その後は農家資格を得る目的もあって、「いるま地域明日の農業担い手育成塾」に入塾し、2年間の研修を受ける。

 研修後、親族や近隣の農業法人などから70アールの農地を借り受け、先に2年の研修を済ませていた科野さんと共に独立。

〜売り上げ重視から品質向上への転換〜
 2019年には売上4,000万円台に達していたが、それを境に成長の勢いがなくなった。

 そこで新たな展開を考えた結果、卸売手数料が高い取引先を見直して、その分、ドライバーを雇って、スーパーとの取引に注力。商材を見直したり、融資を受けて貯蔵庫を設置するなど、安定した商品供給に向けた体制作りに力を入れるようになる。

 一方、この時点で近隣の農家から頼まれるままに耕作受託を引き受けてきたことから、経営規模は10ヘクタールまで拡大していたが、生産担当者の数は増やしていなかったことから、土づくりにも目を向けるように…。

 茨城県の潮田農園の潮田(うしおだ)武彦さんに指導を受けた結果、ネギの秀品率が向上し、さらに作業効率も良くなったため、人件費の削減につながった。これを契機に何をやってもうまくいかなかった時期を脱し、創設8年目にして、年間売上1億2,000万円まで成長。大消費圏に近い所沢の地の利を生かし、さらなる販売拡大を目指している。

■農業の魅力とは

 70アールの土地から始めた最初の年は、15〜20品目の野菜を育てて、自分でテレアポして販路を開拓したのに、売上はたったの500万円。資材費や経費を差し引けば何も残らず、「とても暮らしていけない」と絶望しました。

 そこで、2年目からは売上を2倍にしよう!と目標を立てて、1日3万円を売り上げるためには、何をいくつ売らなければいけないか?という計算してラディッシュを詰めたパックを100円で売るようにしたら大当たり。そこで初めてパートを雇うことができ、目標も達成したんです。

 それからは考え方を切り替えて、生産と出荷調整、配送コストなどを重視して、作るものを"選択”し、“集中”するようになりました。今の自分だったら、新規就農者に多品目生産はお勧めしません(笑)。

 右肩上がりに伸びていきましたが、売上4,000万円台に達したときに、再び壁にぶちあたり、再び出荷先や土づくりを見直しました。

 埼玉県が主催する農業経営塾への参加が縁で、農業経営コンサルタントの「アグリコネクト」から学ぶようになったのも大きく、設備投資にも踏み切りました。生産品目をネギ、枝豆、ニンジン、サツマイモに絞り、サツマイモの貯蔵庫も導入しました。

 「無農薬にんじんジュース」で知られる茨城県の潮田農園さんに教えを受けて、土づくりをイチから見直したのも大きかった。品質や秀品率が改善し、売り上げも再び伸びました。コロナ禍の影響も受けず、8年目を迎えた2023年には1億2,000万円を突破しました。

 次に目指すのは「売上2億円!」と言っていますが、本当の目標は「所沢の農業全体の活性化」です!僕自身は地元が所沢だから、ここで農業を始めましたが、この土地は、農業にとってたくさんのチャンスがある場所だと思っています。

■今後の展望

 50代、60代になってもずっとプレイヤーでいることは難しいので、貯蔵庫を作るなど設備投資をして経営環境を整えています。

 夏や冬の調整作業やパック詰め作業を快適に行えるようにするためにも、作業場に冷暖房を設置したい。また労務面も整備を進めて、従業員にサラリーマンと同じくらい安定した給与を出したいし、週休二日制にしたり、ボーナスなども払えるようにしたい。

 ただ農業法人にすることは、まだ今は考えておらず、法人を作るとしたら販売部門を独立させて会社を作るのがいいと思っています。そうすればスーパーなどの小売店と会社として契約できます。

 つまり、他の農業者の商品もウチから卸すことができるので、現在販売ルートを持っていない新規就農者の窓口にもなれます。

 いずれは販売だけではなく洗浄やパッキング、出荷ができる施設や仕組みも作りたい。10年後を目処にこうしたことを現実化させていきたいと考えています。

 売り上げを上げることだけを考えれば戦略はそれほど難しくないけれど、それよりも所沢の農業を活性化することに貢献したいと思っています。(記:沼田実季)

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