成人における胸腺の意外な重要性を明らかにした研究
成人における胸腺の意外な重要性が研究で明らか
成人における胸腺の意外な重要性を明らかにした研究
胸腺
成人の胸腺の位置と大きさを示す成人の胸部。Credit: LearnAnatomy/Wikipedia/CC BY 3.0
出生前から小児期にかけて免疫T細胞を産生する胸腺は、成人では機能しないとみなされることが多く、心臓や主要血管へのアクセスを容易にするために心臓手術の際に摘出されることもある。
マサチューセッツ総合病院（MGH）の研究者が主導し、『New England Journal of Medicine』誌に発表された新しい研究は、胸腺が一般的に成人の健康に重要であり、癌やおそらく自己免疫疾患の予防に重要であるという証拠を明らかにした。
研究チームは、胸腺が成人の健康に有益であるかどうかを調べるため、手術で胸腺を摘出した成人1,146人と、胸腺摘出を行わずに同様の心臓胸部手術を受けた人口統計学的に一致する患者1,146人を対象に、死亡、がん、自己免疫疾患のリスクを評価した。科学者たちはまた、患者のサブグループでT細胞の産生と免疫関連分子の血中濃度を測定した。
手術から5年後、胸腺摘出を受けた患者の8.1％が死亡したのに対し、胸腺摘出を受けなかった患者では2.8％であり、死亡リスクは2.9倍であった。また、その間に、胸腺摘出群では7.4％の患者が癌を発症したのに対し、対照群では3.7％で、2.0倍リスクが高かった。
「胸腺を摘出した人々を研究することによって、胸腺は健康に絶対必要であることがわかりました。もし胸腺がなければ、死亡リスクや癌リスクは少なくとも2倍になります」と、MGH再生医療センター長でハーバード幹細胞研究所共同所長の上級著者デイビッド・T・スキャデン医学博士は言う。"このことは、胸腺摘出を考える際には、胸腺摘出の結果を注意深く考慮すべきであることを示しています"。
胸腺摘出群の全患者を対象とし、5年以上の追跡調査を行った追加解析では、胸腺摘出群の全死亡率は、癌による死亡率（2.3％対1.5％）と同様に、米国の一般集団よりも高かった（9.0％対5.2％）。
Scadden博士らの研究では、自己免疫疾患のリスクは胸腺摘出群と対照群との間に大きな差はなかったが、手術前に感染症、癌、自己免疫疾患を有していた患者を解析から除外した場合には差が認められた。
これらの患者を除外した結果、胸腺摘出群では12.3％の患者が自己免疫疾患を発症したのに対し、対照群では7.9％であり、リスクは1.5倍高かった。
T細胞産生と免疫関連分子を測定した患者のサブグループ（胸腺摘出群22人、対照群19人、術後平均追跡期間14.2年）では、胸腺摘出を受けた患者は対照群に比べて新しいT細胞の産生が一貫して低く、血中の炎症性分子のレベルが高かった。
Scadden博士の研究チームは、成人の胸腺機能のレベルの違いが個人の健康にどのような影響を与えるかを評価する予定である。「胸腺の相対的な活力を調べ、単に胸腺が存在するかどうかではなく、胸腺の活動レベルがより良い健康と関連しているかどうかを明らかにすることができます」と彼は言う。
その他の共著者には、Kameron A. Kooshesh医学博士、Brody H. Foy医学博士、David David医学博士がいる。Foy医学博士、David B. Sykes医学博士、Karin Gustafsson医学博士である。
詳細はこちら Kameron A. Kooshesh et al, Health Consequences of Thymus Removal in Adults, New England Journal of Medicine (2023). DOI: 10.1056/NEJMoa2302892
ジャーナル情報 ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン
提供：マサチューセッツ総合病院
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