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マルキ・ド・サド『美徳の不幸』読了

「美徳の不幸」「悲惨物語」の二編を澁澤龍彥の名訳にて収める。

前者はのちにジュスチイヌ関連二長編の土台となる中編小説。

長編は未読のため比べるべくもないが、妹ジュスチイヌを襲う災難の数々は、まさに不幸の見本市状態。

副題の「哲学小説」や前口上に出てくる「ザディーグ」で瞭然だが、これはヴォルテールのコントの系譜だ。

一方、後者の短編は悪徳を極めた父親と蹂躙される母親、更には父に悪の思想を吹き込まれる娘と、より観念的なテーマで読む者の心胆を寒からしめる。

取り敢えず殺しておくか的ラストの空虚さよ。


不幸の連続にただただ打ちのめされる前者の迫力も悪くないが、サド研究の先駆者たる故モーリス・エーヌに「サドの短編中第一等の傑作」と言わしめた後者のほうにより問題提起的な現代性を感じた。

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