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町田康『くっすん大黒』

町蔵から康へ。

文壇に殴り込みなどという大層なものではないけれど、町田町蔵の来歴を知る者にとって文壇デビュー当時の様子はまさにカチコミ、痛快事だった。

ただ、ミステリ原理主義者の自分に噂に聞く文体は遠い世界で、実際の文章には触れることなく幾星霜。

遅蒔きながら町田康初読みである。

評判も相俟って身構えつつ読めば、思ったほど尖鋭でもなく、登場人物が多少奇矯な弥次喜多珍道中。

また会話文の「」は通常改行するものだが、心地好いくらいガン無視である。

確かにしゃべくり漫才をいちいち改行していたら間抜けだわな。



かつてTVブロス誌に故・忌野清志郎氏との対談が載っていて、どうして文章を書き始めたのかと問われ、文学に対する飽くなきパンクスピリット、破壊衝動のエナジーの噴出みたいなものを一方的に期待する我々を嘲笑うかの如く「恐らくあなたと同じですよ。出版社に頼まれたからです」みたいな返答をしていたのが印象的だった。

そんな理由で……まあ現実はそんなものか。

ともあれ、その出版社の担当者の慧眼は、どんなに讃えても讃え足りない。



主人公と相方の構図が処女作に近い併録の「河原のアパラ」だが、その珍道中っぷりは格段にグレードアップしている。

"ルー・リードのような顔をしたおばはん"って、あーいるわ。

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