マガジンのカバー画像

君と側 空 に落ちる日

4
夢か現実か、過去か未来か。時間軸が自在に変化する記憶の中で――
運営しているクリエイター

記事一覧

1996枚の海

1996枚の海

その夏の僕らは1996枚の海に飛び込んだ
何枚も何枚も
やがて擦り切れた海は太陽の肉体との摩擦により
風となってその夏、僕らを追いかける
忘れられない夏だった。

―――君と側 空 に落ちる日

音楽 https://1imusic.bandcamp.com/
その他 https://noastralshop.thebase.in/

扉の海

扉の海



十二翼の海でもそうだったように

ここでも向こう側の残像が視覚化される。

呆れたように波打ち際に座り込んだ君は言う。

「時間だけは相も変わらず並列されていて

この無数の扉が波打つ海に潜り込んでしまう以外に

彼女を濾過する方法が無いように思えてくる」

…空の蕾が寒々しく結び目の風に吹かれているのだ。

じっと、君達は空を見つめている。

「潜水の準備はしたかい?」

空を見上げたまま、

もっとみる
傘ビルの群れ

傘ビルの群れ

彼らはまだ生きていたのか、

そしてその時の私達はホッと溜息をついた。

思うがままの次元に傘を伸ばし続ける。

その傘の下にいつの間にやら入り込み、ぷかぷかと口から虹色の煙を吐きながらその男はぼやく。

いつも、同じ日に。

いつものように表に近い側の海に立って、

「そして、太陽の肉体が空に生える時。」

言葉が空に触れた途端、煙で傘ビルが溶けて、

地面がお好み焼きの様にひっくり返った。

もっとみる
オーロ゛ラ

オーロ゛ラ

「ここから向こうは下り坂になっていて、

何枚も降り積もった窓が踏み詰められているんです。

そこから覗く無数の顏に驚いて、転がり落ちないように

気を付けて下さいね」

まだ小学生位の歳の子だが、喋り方はしっかりした鯨のようだ。

無数のプランクトンの亡骸を縫合しながら進んでいくと

大きな広間に出くわす。

そこは全次元に向けて鏡張りで、無数の時間が流れるのを

その時点での僕らは感じていた。

もっとみる